地域の実情に応じた在宅医療提供体制構築のための研究

文献情報

文献番号
202321027A
報告書区分
総括
研究課題名
地域の実情に応じた在宅医療提供体制構築のための研究
課題番号
23IA1005
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
田宮 菜奈子(国立大学法人筑波大学 医学医療系 / ヘルスサービス開発研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 柏木 聖代(国立大学法人東京医科歯科大学 大学院保健衛生学研究科)
  • 黒田 直明(国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 公共精神健康医療研究部)
  • 森岡 典子(東京医科歯科大学 保健衛生学研究科ヘルスサービスリサーチ看護学)
  • 城戸 崇裕(筑波大学 附属病院小児科)
  • 羽成 恭子(筑波大学 ヘルスサービス開発研究センター)
  • 孫 瑜(ソン ユ)(筑波大学 医学医療系)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
5,473,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国の在宅医療の需要は今後も増加することが見込まれており、地域の実情に応じた在宅医療提供体制構築が重要となる。本研究班では、第8次医療計画の見直しに向けた在宅医療の課題や指標例等を検討するための基礎資料を得ることを目的とし、以下の3つの課題に対して9件の研究を行った。
研究方法
各課題の研究テーマを示す(詳細な方法は省略する)。
【課題1・地域別の課題の検討】
研究1: 茨城県の医療介護レセプト突合分析データを用いた訪問診療と訪問看護を受ける患者の市町村別の在宅医療受療状況の検討
研究2: 訪問看護ステーションの規模別にみた訪問看護提供体制や教育・研修体制:全国調査データの二次分析
研究3: 訪問看護ステーションの損益と関連要因:全国調査データの二次分析
【課題2・指標等を用いた実態の把握】
研究4 :訪問看護ステーションのアウトカム評価:全国調査データの二次分析
研究5: 茨城県の医療介護レセプト突合データ分析を用いた訪問診療、訪問看護を受ける患者の在宅医療の4つの医療機能の指標に関する実態把握と検討
研究6: 自治体の医療介護突合データを用いた訪問薬剤管理についての検討
研究7: 口腔・栄養・リハビリテーションに関する訪問系サービスの一体的提供に関する実態:自治体の医療介護突合データを用いた検討
【課題3・様々な在宅医療に関する情報収集】
研究8: レセプトデータを用いた、本邦の医療的ケア児を含めた小児の在宅医療の利用実態についての現状把握
研究9: 医療的ケア児に対する在宅医療の実態把握、茨城県内の関係諸機関に対する聞き取り調査
結果と考察
【課題 1・地域別の課題の検討】
研究1からは地域での訪問看護のリソースが多ければ訪問診療や訪問看護が提供される患者が多くなる可能性が示唆された。研究2,3では訪問看護ステーションの事業者規模が大きいほど、対応体制や教育・研修体制、利用者の転帰がよい結果が得られ、大規模化の推進はサービスの質向上に寄与する可能性が示唆された。
【課題2・指標等を用いた実態の把握】
研究4,5では在宅医療を受ける患者の「アウトカム」を含めた現状把握を行った。研究4では訪問看護ステーションへの調査結果から「再入院割合」、「在宅死亡割合」、「機能改善割合」のアウトカムごとに事業所特性が異なっていることが示され、利用者に適した訪問看護ステーションの選択や質を向上させていくためには、「ストラクチャー」「プロセス」だけでなく、「アウトカム」情報が必要であることが示唆された。研究5では訪問診療のみ群、訪問看護のみ群と比べると訪問診療と訪問看護利用群で最も医療や介護のニーズが高い患者の割合が高いことが示された。
研究6,7では医師、看護師以外の職種の在宅医療への関わりについて実態把握に基づく検討を行った。訪問薬剤管理指導を受けた者は2014年度から2018年度にかけて増加している増えているものの、訪問栄養食事管理指導を受けた患者はいなかったことから、「口腔・栄養・リハビリテーションの一体的提供」はまだ提供量が少ない状況であることが示された。また、訪問薬剤に関しては、認知症の周辺症状に対しての見守り・介助に費やす時間を多く必要とする者で特に需要が高い可能性、「口腔・栄養・リハビリの一体的提供」に対しては要介護度が重度である居宅療養者において需要が高い可能性が示唆され、患者家族のニーズに応じて適切なサービスを提供できるよう留意するべきと考えられた。なお、訪問薬剤管理の算定を届け出ている薬局の数のうち実際に応需している薬局数は48.3–63.2%であり、乖離の原因については今後さらに検討する必要性が示唆された。
【課題 3・様々な在宅医療に関する情報収集】
令和5年度は小児の在宅医療に関してレセプトデータによる実態把握とヒアリングを行った。研究8では、訪問診療はほとんどが医療的ケア児に利用されている一方、医療的ケア児全体からみると利用者の割合は15.9%に留まっていたことが示された。研究9からは、小児の在宅医療のニーズが成人対象の在宅医療と異なり、特に急変時対応、看取りに関する部分で大きなギャップがあったことから、医療関係者・保護者双方が同じ目線にたって、ケアプランや長期方針の話し合いができるようになるための環境整備が必要であると考えられた。
結論
令和5年度は、8件の分析的研究と1件のヒアリング調査を実施した。その結果、訪問看護、訪問診療、訪問薬剤、訪問歯科診療、訪問リハビリテーション、訪問栄養指導、小児への在宅医療等の様々な在宅医療に関する実態把握を行うことで、患者のニーズに応じた在宅医療サービスの提供や今後の課題の検討につなげることができた。地域別の課題の検討に関しては、今後NDB・介護DB等により生態学的研究を行い、さらに検討を進めていく必要があると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2024-05-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2024-06-03
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202321027Z