災害派遣精神医療チーム(DPAT)活動における機能強化と激甚災害(南海トラフ地震等)への対応検討のための研究

文献情報

文献番号
202321026A
報告書区分
総括
研究課題名
災害派遣精神医療チーム(DPAT)活動における機能強化と激甚災害(南海トラフ地震等)への対応検討のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23IA1004
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
福生 泰久(公益社団法人日本精神科病院協会 DPAT事務局)
研究分担者(所属機関)
  • 太刀川 弘和(国立大学法人筑波大学 医学医療系臨床医学域 災害・地域精神医学)
  • 立石 清一郎(産業医科大学 産業生態科学研究所)
  • 五明 佐也香(獨協医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
2,822,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
2013年に、災害発生直後より精神科医療ニーズに対応できるチーム(災害派遣精神医療チーム:DPAT)が発足し、2023年4月現在、先遣隊は46都道府県106医療機関が、各自治体が整備する都道府県DPAT隊員も2021年末時点で、3,654人まで整備されている。
しかし、被災自治体やDPAT派遣元の自治体、ほかの支援チームからの客観的な評価は十分であるとは言い難い。また、全国のDPAT体制整備は進んできているが、自治体毎に差が認められる現状もある。さらに、今後想定される南海トラフ地震を考慮すると、現在のDPAT体制は脆弱であると言わざるを得ない。
 本研究班では、DPAT体制整備が乏しい都道府県の対策として、近隣ブロック体制整備について検討を行い、南海トラフ地震を想定した訓練において課題を抽出しつつ、過去の災害時のデータ解析等を行った。さらに他の支援チームへの調査等を行うことで、新たなDPATの課題や機能、およびその効果を検証し、DPAT事務局が主催する研修に反映されるよう、提案を行うことを目的とする。
研究方法
研究期間内では以下の研究を実施した。
・災害精神支援活動の文献データを集積し、AIに学習させ、データベースを作成した。
・東日本大震災におけるこころのケアチームの活動データ、熊本地震におけるDPATの活動データ、および南海トラフ地震の被災想定から、南海トラフ地震時におけるメンタルヘルス相談者数を推計し、そこからその支援に必要となるDPATの隊数を算出した。
・過去災害が起きた自治体等にヒアリング調査を行い、支援者支援についての現状の把握を行った
・能登半島地震においてDPATと産業医チーム(DOHAT)の連携の際に生じた課題等を抽出した。
・近隣自治体とのブロック体制の現状の把握及び、ブロック隊に関するアンケート調査を各自治体に対して実施した。
・令和5年大規模地震時医療活動訓練に参加する被災想定自治体担当者とともに、被災想定を確認し、そのうえで訓練内容の検討を行った。
・また、本訓練に参加した被災想定自治体担当者に、訓練結果を踏まえたDPAT隊数についてのアンケート調査を実施し、災害発生直後および急性期に必要なDPAT隊数を算出した。
・また、DMAT事務局の協力を得て、DMAT隊員に対し、DPATに求められる活動内容と、DPATにおける課題のアンケート調査を行った。
結果と考察
研究の結果、以下の点が示された。
・DPAT調整本部およびDPAT活動拠点本部における必要な人員、役割等が示された。また、病院避難、籠城支援時におけるDPAT必要隊数が示唆された。
・激甚災害時において、想定されるメンタルヘルスケアニーズの総数が示され、それに対応しうるDPAT隊数が示された。
・隣県との連携体制、ブロック隊体制についての現状と課題が示された。
・支援者支援において、産業医からなるDOHATとの連携体制のモデルケースが示された。
・DMATから肯定的な評価を得られたとともに、DMATとの連携に必要な活動や課題を把握する一助となった。
本研究から示された激甚災害時におけるDPAT隊数では、現時点でのDPAT先遣隊隊員数、都道府県DPAT隊員数が極めて少ない状況であることが露呈した。そのため、今後はさらなるDPAT隊員数、およびDPATインストラクター人員の増員の必要がある。
また、DPAT間の連携については、本調査から近隣自治体を対象とした合同研修及び合同訓練を実施し、自治体間の連携を深める必要性があると考えられた。しかし、当該研修や訓練について具体的な対応が困難であり、費用やその他の課題が挙げられたため、次年度は近隣自治体同士による連携を深めるため、好事例の調査をする必要がある。
最後に他の支援チームとの連携については、DMATから肯定的な評価は認めたものの、依然としてDPAT活動についての詳細を知られていないDMAT隊員も多くいたことが浮き彫りになった。さらに、DOHATとの連携については、令和6年能登半島地震におけるケースがよいモデルケースとなった。今回の連携体制を軸に、より洗練された体制づくりについて、議論していく必要がある。
結論
本研究によって、隣県とのブロック体制の現状と課題のほか、他の支援チームから見たDPATの評価及び新たな連携体制について検討できた。また、大規模地震時医療活動訓練時での調査及び、過去の災害時支援から得られたデータ解析から、急性期及び地域支援時におけるDPATの必要隊数を算出することができた。その結果DPATに対する肯定的な評価及び新たな連携体制の構築ができた一方で、南海トラフ地震等の激甚災害時においては、現在のDPAT隊数では不十分であることが示された。来年度は上記を踏まえ、その対策についての検討のほか、他の支援チームからの評価等を行う予定である。

公開日・更新日

公開日
2024-06-05
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-06-05
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202321026Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,600,000円
(2)補助金確定額
3,600,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 723,828円
人件費・謝金 1,203,000円
旅費 817,924円
その他 77,248円
間接経費 778,000円
合計 3,600,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2024-06-05
更新日
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