衛生検査所等の適切な登録基準の確立のための研究

文献情報

文献番号
202321024A
報告書区分
総括
研究課題名
衛生検査所等の適切な登録基準の確立のための研究
課題番号
23IA1002
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
〆谷 直人(国際医療福祉大学熱海病院 臨床検査科)
研究分担者(所属機関)
  • 宮地 勇人(新渡戸文化短期大学 臨床検査学科)
  • 山田 俊幸(自治医科大学 医学部)
  • 菊池 春人(済生会横浜市東部病院 臨床検査科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
1,944,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国の医療機関(衛生検査所を含む)における検体検査の精度の全般的な向上のために、平成29年6月に医療法等の一部を改正する法律(平成29年法律第57号)が公布され、平成30年12月に施行された。医療法等の一部を改正する法律では、精度管理に係わる責任者の設置および各種標準作業書・作業日誌・台帳の作成が義務化された他、検体検査に関する内部精度管理および外部精度管理調査や研修が努力義務とされた。検査室の第三者認定、とくに国際的な認定においては、それなりの取得・維持の経費が必要となるものの、医療機関に関しては診療報酬の中で国際標準検査管理加算として評価されているが、衛生検査所においては該当するものがない。令和2年度厚生労働科学研究事業「検体検査の精度の確保等による研究」の報告書では、第三者認証・認定の取得には人員、時間、資金面において大きな負担があり、資金面でのインセンティブが必要と指摘されている。また、外部精度管理調査を受検できる検査項目は、一般的で実施頻度が高い項目に限定される。その他の項目、とくに遺伝子関連・染色体検査に関しては、現在、日臨技の精度管理調査とCAPサーベイのみしか存在していないため、小規模な衛生検査所においては受検していない。衛生検査所の規模や有する機能などは多種多様であり、検査技術の進歩に登録基準が合っていない衛生検査所もみられる。衛生検査所においては、法令改正により負担増加となるが、検体検査の精度の向上、医療経済への貢献の両立という観点から衛生検査所等の適切な登録基準等についての研究を目的とする。
研究方法
規模・地域・施設の機能等の点で可能な限り幅広い範囲の衛生検査所を対象に、衛生検査所業務医療関連サービスマーク認定の日本衛生検査所協会(日衛協)会員の認定施設と登録衛生検査所を対象にアンケートにより以下の項目に分けて調査を行う。
1.管理組織と基準について(管理者・指導監督医・精度管理責任者の資格・責務等)
2.文章および記録の管理について(各種標準作業書・作業日誌・台帳等)
3.問合せ・苦情処理について
4.環境・安全・衛生について
5.器材の管理について
6.検体検査について(内部精度管理を含む)
7.外部精度管理調査について
8.第三者機関による認証・認定について
9.外部委託について
10.遺伝子関連・染色体検査について
11.回答者の施設情報
一般財団法人医療関連サービス振興会と公益財団法人日本適合性認定協会の研究協力者によって衛生検査所の優劣の条件に関する意見をいただいた上で、これらの調査結果について各委員が解析を行う。その他の研究協力者は、日本臨床検査振興協議会理事長をはじめ、日本医師会、日本臨床衛生検査技師会、日本臨床検査医学会、日衛協、株式会社エスアールエル等で、各委員は各分担研究を進める一方、日衛協の事務局をホスト会場としたWEB・対面のハイブリッド形式の会議を開催し、全委員で意見交換を行いながら、議論を進める。
なお、アンケートの回答者の個人情報は、情報漏洩のリスクを考慮し、エクセルファイル(パスワードで情報保護)にて研究分担者に返送するようにする。
アンケートの集計は、結果をまとめたエクセルファイルから情報を抽出し、図表化する。
結果と考察
各委員が、現在の立場、専門性を踏まえ、独自の調査・解析を実施し、それも分担研究として加えた。結果として以下の分担研究報告書を踏まえ、各論点についてまとめた。
帳票類記載内容の見直し(重複、記載が省略できる部分の確認)
記載内容についての具体的なガイドライン、テンプレートの提供
システム化に向けての電子的テンプレート提示
職員数・検査室面積・必要器具の基準と登録検査分野数の見直し
指導監督医の資格の明確化
ブランチラボの品質・精度の確保のための柔軟な運用・対応
パニック値の報告の仕方
衛生検査所における臨床検査技師等の教育と育成
検体検査の再委託における精度管理
登録分野における専⾨資格取得者
第三者認定の取得の基準
新型コロナウイルス病原体核酸検査が拡⼤した⼩規模施設での実施
遺伝⼦関連・染⾊体検査の外部精度管理調査における課題
⾼度な技術に相当する遺伝⼦関連・染⾊体検査の報告書における精度の確保の責任者
結論
本研究により、医療施設においては依頼している衛生検査所の検査結果と衛生検査所が提供するサービスに満足していることが明らかとなった。
平成30年12月に施行された医療法等の一部を改正する法律の衛生検査所における振り返りができた。衛生検査書は大手だけでなく地域医療に貢献する地方の小中規模の衛生検査所もあるため、職員数、面積、機器等を規模に合った柔軟な登録要件や、指導監督医の資質について提言した。衛生検査所のISO 15189に基づく第三者認定取得施設の拡大は、第三者認定等取得にあたる労力・経費に見合うインセンティブが寄与する。

公開日・更新日

公開日
2024-05-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2024-05-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202321024C

成果

専門的・学術的観点からの成果
衛生検査所の登録基準は、登録検査分野数に基づいて昭和33年に設定され、その後変更されることなく適用されてきた。平成30年に実施された改正医療法において臨床検査分類は見直された。しかし、これらは見直された臨床検査分類を従来の基準へ適用したものであり、十分な検討はされていなかった。
本研究では、衛生検査所における改正医療法後の検証と今後の課題をアンケートによる調査をもとに抽出し、分析・検討を加え、衛生検査所の適切な登録基準について提言を行った。
臨床的観点からの成果
医療施設(病院、診療所等)が臨床検査を依頼している衛生検査所の検体検査の品質・精度の向上、ならびに衛生検査所の管理組織、職員数、検査室の面積・構造設備等の見直しに資することが期待される。また、遺伝子検査の再委託等ゲノム医療が係わる検体検査に関する検討材料として活用されることも期待される。
加えて、生命が危ぶまれるほど危険な状態であることを示唆するパニック値の把握は臨床的な診察だけでは困難で検査のみによって可能とされているため、医療機関の実情に応じたパニック値の報告方法を検討する必要性を明示した。
ガイドライン等の開発
現時点ではなし。
その他行政的観点からの成果
現時点ではなし。
その他のインパクト
現時点ではなし。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2024-06-03
更新日
-

収支報告書

文献番号
202321024Z