切れ目のないポリファーマシー対策を提供するための薬剤師間の情報連携の推進に資する研究

文献情報

文献番号
202321023A
報告書区分
総括
研究課題名
切れ目のないポリファーマシー対策を提供するための薬剤師間の情報連携の推進に資する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23IA1001
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
溝神 文博(国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター 病院 薬剤部)
研究分担者(所属機関)
  • 亀井 美和子(帝京平成大学 薬学部)
  • 水野 智博(藤田医科大学 医学部)
  • 藤原 久登(昭和大学藤が丘病院 薬剤部)
  • 島崎 良知(東京都健康長寿医療センター 薬剤科)
  • 小島 太郎(東京大学大学院医学系研究科)
  • 竹屋 泰(大阪大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
3,337,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ポリファーマシーは、単に薬剤数の問題だけでなく、薬物有害事象や服薬アドヒアランスの低下などを含む、包括的な薬物療法の適正化が求められている。これに対応するためには、多職種での連携が不可欠であり、認知機能、日常生活動作(ADL)、栄養状態、生活環境などを含む高齢者総合機能評価(CGA)を用いた多角的な患者評価と介入が重要である。現行の指針や加算制度があるにもかかわらず、対応できている施設は少なく、薬剤師がCGAに基づいた処方見直しに十分対応できていない。地域での対策でも情報共有が不十分で、病院と薬局間の連携が課題となっている。2021年に導入された退院時薬剤情報連携加算の利用も限定的で、情報提供が十分とは言えない。また、トレーシングレポートという言葉も医師には認識されておらず情報連携を阻害する要因となっている。さらに、情報共有がFAXに依存していることも課題である。そこで、本研究の目的は、これらの課題に対応するために、CGAを含む情報連携ツールの開発、および用語の検討およびその情報共有の仕組みを構築することである。
研究方法
1.薬剤師間の情報連携ツールに関する網羅的調査(2023年度)
調査対象と調査期間
 調査対象は2023年6月11日時点で厚生労働省のウェブサイトに掲載されている特定機能病院と各都道府県庁のウェブサイトに掲載されている地域医療支援病院とし、調査期間は2023年6月11日から2023年10月8日とした。
・病院薬剤師が使用する情報連携ツールの調査
・薬局薬剤師が使用する情報連携ツールの調査
薬剤情報全般の情報提供ツールの報告内容の分類
 情報連携ツールの分野のうち、薬剤情報全般の情報提供ツールは集計の簡便化及び読み手側の軽減を目的に報告内容の分類がされていることがあるため、報告内容の分類及びその有無の集計を行った。
2.薬剤師間および多職種との情報連携に関する実態把握(2023年度)
質問票を用いた研究(個人を特定できないようにしたアンケート調査)
①病院及び薬局の薬剤師に対するアンケート調査
②病院等に所属する医師、歯科医師、看護職、リハビリ職に対するアンケート調査
③全国のポリファーマシー対策チームを有する病院の担当薬剤師に対するアンケ―ト調査
④電子薬歴、薬剤管理指導支援システム等を販売する事業者に対するアンケート調査
アンケート調査期間 2024年2月1日~2024年2月15日とした。
3.薬剤師間の情報連携ツール案の開発(2023年度〜2024年度)
情報連携ツールの案に関する概念を検討した。
4.情報連携ツールの利用実態調査
病院内及び施設外にけるポリファーマシーに対する取り組み、および地域医療への情報連携の実態について視察を行い、実態調査を実施した。
結果と考察
HPの網羅的調査結果によると、病院薬剤師が使用する情報連携ツールの掲載率は2%に留まり、薬局薬剤師は63%であった。特に高齢者のCGAに関する項目はわずか7%の病院でしか記載されていなかった。アンケート調査結果から薬剤師間の情報連携が薬物治療の向上に繋がると感じる薬剤師は56.4%であったが、情報提供書の作成には68.5%が時間的な困難を感じていた。また、情報提供書には主に処方歴や検査結果が含まれていたが、栄養状態やADL、認知機能などの情報は不足していた。多職種との情報交換頻度は施設内では87.5%と高かったが、施設外では35.1%にとどまった。ポリファーマシー対策チームの薬剤師は定期的に情報共有を行っているが、病院外との連携は47.6%と低かった。情報共有の主な課題として、時間的・人員的な困難や、システム間の互換性、コストが挙げられた。事業者のアンケートでは、62.5%が情報提供書作成機能を持つシステムを提供していたが、情報連携のための技術的課題が指摘された。視察結果では、三豊総合病院がCGAを反映した薬剤管理サマリーを使用して他施設や薬局との連携を行っているが、その普及にはさらなる取り組みが必要であることが明らかになった。また、情報提供書の作成には多くの薬剤師が時間的負担を感じており、情報連携の際に電子的手段の利用が少なく、主にFAXや電話が用いられていることが分かった。また、情報連携ツールの試作を行った。
結論
ポリファーマシー対策に必要な薬剤師間の情報連携ツールを作成するためには、CGAの加味、情報収集の効率化、多職種連携の強化、教育と研修の充実が不可欠である。これらの要素を効果的に取り入れることで、高齢者の薬物療法の質を向上させ、ポリファーマシーのリスクを軽減することが可能である。これらの要素を考慮することで、ポリファーマシー対策における薬剤師間の情報連携ツールの作成とその活用が促進されることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2024-05-31
更新日
-

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2024-05-31
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文献番号
202321023Z