潜在看護職の復職に係る実態把握及び効果的な支援方策の検討のための研究

文献情報

文献番号
202321020A
報告書区分
総括
研究課題名
潜在看護職の復職に係る実態把握及び効果的な支援方策の検討のための研究
課題番号
22IA1013
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
武村 雪絵(東京大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 市川 奈央子(杏林大学 保健学部)
  • 磯部 環(東京大学 大学院医学系研究科 健康科学・看護学専攻 看護管理学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
3,490,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
多様な背景を持つ潜在看護職の効果的な復職には、個別の状態とニーズに応じた学習を自ら組み立て、場所や時間に制約されずに学習を進められる復職支援プログラムが求められる。本研究は、潜在看護職に対する新たな復職支援プログラムのあり方を提案するために、求職者(看護職)、求人者(医療介護施設)、復職支援者(ナースセンター等)への調査から復職に関するニーズと支援の実態を明らかにし、開発すべきプログラムコンテンツの内容、構成、効果的な提供方法等を検討することを目的とし、次の4つの研究を行った。
1.復職支援における看護職及び求人施設のニーズの把握
2.復職支援の先駆的な取り組み及び好事例の情報収集
3.ナースセンターにおける復職支援の実態把握
4.復職支援プログラム開発ニーズの同定、及び、実現可能で効果的な復職支援実施方法の検討
研究方法
1. 復職支援における看護職及び求人施設のニーズの把握
2023年6月から7月に、復職経験のある看護職12名と医療介護施設の看護管理者6名にインタビュー調査を実施した。

2. 復職支援の先駆的な取り組み及び好事例の情報収集
2023年3月から7月にかけて、6事例の事業所視察とインタビューを実施した。

3. ナースセンターにおける復職支援の実態把握
各都道府県ナースセンターの公式ウェブサイト上の公開情報から、復職支援プログラムの種類や実施形態を抽出する公開情報調査を基に、調査票を作成し、質問紙調査を行った。

4.復職支援プログラム開発ニーズの同定、及び、実現可能で効果的な復職支援実施方法の検討
これまでの研究結果を踏まえ、より効果的な復職支援のあり方と実施方法を検討するため、2024年3月に2回のパネル討議を行った。
結果と考察
1. 復職支援における看護職及び求人施設のニーズの把握
看護職インタビューでは、再就職を意識し始めた段階から復職後まで各段階で復職支援が必要であること、個別にカスタマイズできるプログラムを求める一方で、看護職本人が内容を選択するのは困難であることがわかった。施設管理者インタビューでは、知識のアップデートや働く心構え、人間関係スキルの涵養が必要なこと、小規模施設は教育資源が限られることが指摘された。

2. 復職支援の先駆的な取り組み及び好事例の情報収集
ハローワークとの連携強化、キャリアコンサルタントによるキャリアデザイン支援、キャリア形成を主軸としたリカレントプログラム、看護職同士のネットワーキング、SNSを活用した広報等が行われ、長期的キャリアを視野に入れ、心理面も含めて支援する必要性が示唆された。

3. ナースセンターにおける復職支援の実態把握
各都道府県ナースセンターの2023年度の復職支援プログラムは108件(都道府県平均2.3件,最小0件,最大7件)であった。質問紙調査には38都道府県ナースセンターが回答した。プログラムの内容は施設のニーズと概ね合致していたが、接遇、看護倫理、電子カルテ操作は含まれなかった。4割がオンライン教材を利用していたが、視聴が進まないなどの課題が挙げられた。

4.復職支援プログラム開発ニーズの同定、及び、実現可能で効果的な復職支援実施方法の検討
7名のパネリストと研究班により、潜在看護職が復職検討時、復職準備期、復職後の各タイミングで学習できる復職支援プログラムの必要性が確認された。学習内容は、看護知識・技術に加えて、キャリアデザインや働く心構えの形成、他者と関係構築スキルなどの幅広いコンテンツからカスタマイズできることが望ましい。オンライン教材は学びたいタイミングで生活ペースに合わせて学習できるが、利用促進には個別性に応じて推奨コンテンツを提示する仕組みや達成度をフォローする仕組みが必要であり、学習の効果性を高めるには、対面やオンライン会議による反転学習やコミュニケーションの場が必要である。受講者が少ない地域では他県と共同開催も検討することや、復職者を採用する施設も受け入れ体制を学ぶことが必要である。
結論
本研究により、看護職・医療介護施設双方に復職支援のニーズがあり有効性が実感されていた一方で、支援が十分に利用されていない実態があった。潜在看護職の個別性に応じた内容をいつでもどこでも学ぶことを可能にする支援が求められるが、オンデマンド教材の提供のみでは学習効果が不十分となりやすいため、対面研修と効果的に組み合わせる必要がある。また、都道府県ナースセンターと医療介護施設が相互に連携し、施設横断的・継続的な支援を提供することが求められる。

公開日・更新日

公開日
2024-06-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2024-06-25
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202321020B
報告書区分
総合
研究課題名
潜在看護職の復職に係る実態把握及び効果的な支援方策の検討のための研究
課題番号
22IA1013
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
武村 雪絵(東京大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
需要に見合う看護職員確保には潜在看護職の復職推進が不可欠だが、潜在看護職は個人差があり、求人施設の特性も多様なことから、カスタマイズされた復職支援が必要である。本研究は潜在看護職に対する新たな復職支援プログラムのあり方を提案することを目的として以下を実施する。
1. 復職支援における潜在看護職および求人施設のニーズの把握(ニーズ調査)
2. 都道府県ナースセンター、職業紹介事業者等が実施している復職支援の先駆的な取り組みおよび好事例の情報収集(事例収集)
3. 全国のナースセンターで実施されている復職支援の実態把握(実態調査)
4. 復職支援プログラムのあり方の検討(パネル検討)
研究方法
1. ニーズ調査
3ヶ月以上の離職経験のある看護職、および、医療介護施設の管理者を対象に、2023年1月~2月にオンライン調査、2023年6月~7月にオンラインインタビューを実施した。量的データは記述統計を算出し、自由記載やインタビューデータは質的に分析した。

2. 事例収集
2023年3月~7月に先進的あるいは効果的な取り組みをしている事業者等への視察およびインタビューを実施し、データを質的に分析した。

3. 実態調査
2023年10月~11月、各都道府県ナースセンターの復職支援事業についてウェブサイトより情報収集した。2024年1月~2月、43ナースセンターを対象に個別質問紙を用いてプログラムの実施状況や課題を尋ねた。量的データは記述統計を算出し、自由記載は質的に分析した。

4. パネル検討
各調査結果を踏まえて、2024年3月に2回、パネリスト計7人と効果的な復職支援プログラムのあり方を検討した。
結果と考察
1. ニーズ調査
 看護職2,298人から有効回答を得た。4割が復職支援を受け、うち8割以上が役立ったと答えた。受講したいタイミングで研修がなかった、開催地が遠く受講できなかったという声もあった。オンライン教材利用者は少なかったが、利用者の7割は役立ったと答えた。インタビューには12人が参加した。再就職を意識し始めた段階から復職後まで各段階で復職支援が必要であること、個別にカスタマイズできるプログラムを求める一方で、看護職本人が内容を選択するのは困難であることがわかった。
病院、介護施設、訪問看護事業所、診療所等の管理者393人から有効回答を得た。復職する潜在看護職に必要な研修として共通していたのは「看護実践手技」「感染対策」「医療安全」で、病院では「電子カルテの操作方法」、介護施設や訪問看護事業所では「急変対応」「接遇」が挙げられた。インタビューには6人の看護管理者が参加した。知識のアップデートや働く心構え、人間関係スキルの涵養が必要なこと、小規模施設は教育資源が限られることが指摘された。

2. 事例収集
6つの事業者を視察した。ハローワークとの連携強化、キャリアコンサルタントによるキャリアデザイン支援、キャリア形成を主軸としたリカレントプログラム、看護職同士のネットワーキング、SNSを活用した広報等が行われ、長期的キャリアを視野に入れ、心理面も含めて支援する必要性が示唆された。

3. 実態調査
2023年度の復職支援プログラムは108件(都道府県平均2.3件,最小0件,最大7件)であった。質問紙調査には38都道府県ナースセンターが回答した。プログラムの内容は施設のニーズと概ね合致していたが、接遇、看護倫理、電子カルテ操作は含まれなかった。4割がオンライン教材を利用していたが、視聴が進まないなどの課題が挙げられた。

4. パネル検討
討議の結果、潜在看護職が復職検討時、復職準備期、復職後の各タイミングで学習できる復職支援プログラムの必要性が確認された。学習内容は、看護知識・技術に加えて、キャリアデザインや働く心構えの形成、他者と関係構築スキルなどの幅広いコンテンツからカスタマイズできることが望ましい。オンライン教材は学びたいタイミングで生活ペースに合わせて学習できるが、利用促進には個別性に応じて推奨コンテンツを提示する仕組みや達成度をフォローする仕組みが必要であり、学習の効果性を高めるには、対面やオンライン会議による反転学習やコミュニケーションの場が必要である。受講者が少ない地域では他県と共同開催も検討することや、復職者を採用する施設も受け入れ体制を学ぶことが必要である。
結論
看護職・医療介護施設双方に復職支援のニーズがあり有効性が実感されていた一方で、支援が十分に利用されていない実態があった。
潜在看護職の個別性に応じた内容をいつでもどこでも学ぶことを可能にする支援が求められるが、オンデマンド教材の提供のみでは学習効果が不十分となりやすいため、対面研修と効果的に組み合わせる必要がある。
都道府県ナースセンターと医療介護施設が相互に連携し、施設横断的・継続的な支援を提供することが求められる。

公開日・更新日

公開日
2024-06-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202321020C

収支報告書

文献番号
202321020Z