看護職及び特定行為研修修了者による医行為の実施状況の把握・評価のための調査研究

文献情報

文献番号
202321019A
報告書区分
総括
研究課題名
看護職及び特定行為研修修了者による医行為の実施状況の把握・評価のための調査研究
課題番号
22IA1012
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
永井 良三(自治医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 前原 正明(蒲田リハビリテーション病院)
  • 釜萢 敏(公益社団法人 日本医師会)
  • 木澤 晃代(日本看護協会)
  • 見城 明(福島県立医科大学 医学部)
  • 飯室 聡(国際医療福祉大学 未来研究支援センター)
  • 村上 礼子(自治医科大学 看護学部)
  • 川上 勝(自治医科大学 看護学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
5,385,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
「特定行為研修制度」の創設時から医療環境は大きく変化した。医療環境に対応した研修制度が必要であり、研修制度の見直しに向けた基礎資料を得るため、各医療機関に勤務する医師や看護師を対象に、看護師による医行為の実施状況と今後の委譲意向について把握することを目的とした。
研究方法
全国の特定機能病院、病院(100床以上)、有床診療所(在宅医療支援)、介護保険施設(介護老人保健施設、介護医療院、介護療養型医療施設)、訪問看護ステーションに勤務する医師及び看護師を対象とした。対象施設は厚生労働省の公開情報に基づき選定し、特定機能病院は全施設、その他はランダムに抽出した。調査方法はWeb調査で、対象施設に調査概要と参加方法を郵送し、専門・認定看護師には資格認定制度のシステムを通じて通知した。調査項目は、2010年度調査で選定された203項目に、新たに7項目を追加した210項目の医行為で、看護師の現在の実施状況と委譲意向の回答を得た。
結果と考察
2,111人が回答、医師240人と看護師1,871人であった。医師は、特定機能病院からの回答が34.5%、一般病院が14.1%、その他に訪問看護ステーションから12.6%、有床診療所から9.9%、介護保険関連施設等から2.9%の回答があった。看護師は、認定・専門看護師課程、特定行為研修修了者(以下、特定行為看護師)は1,704人で全体の91.1%だった。
医師・看護師共に、「導尿・留置カテーテルの挿入」が現在の実施状況と今後看護師の委譲意向可能と考える医行為の両方で最も高い割合を示した。医師と看護師の回答では、最も低い医行為割合はそれぞれ異なり、医師は「眼底検査の結果の評価」、看護師は「小児の臍カテに関連する輸液路確保」だった。看護師の回答で、実施の医行為は、医療機関の種類によって異なり、病院では「導尿・留置カテーテルの挿入」、病院以外では「創部洗浄・消毒」が最も高い割合であった。また、今後看護師が実施可能と考える医行為では、医療機関の種類により差異があり、特定行為看護師の回答では、病院で「直接動脈穿刺による採血」、病院以外では「創部洗浄・消毒」が挙げられた。
前回調査との比較では、全体的に、看護師が実施と回答した割合が有意に増加しており、「導尿・留置カテーテルの挿入」が最も高い実施率を示した。一方で、「幹細胞移植:接続と滴数調整」など、一部の医行為は実施率が低下した。検査、呼吸器、処置・創傷、日常生活、手術、緊急時対応、予防医療、薬剤使用、その他の領域で比べても、看護師による実施状況が前回調査に比べて有意に増加しているものが多かった。特に、「直接動脈穿刺による採血」や「経腹部的膀胱超音波検査」などの検査関連行為や、「褥瘡の壊死組織のデブリードマン」、「創傷の陰圧閉鎖療法の実施」などの処置・創傷関連行為は顕著だった。また、医師と看護師の今後看護師が実施可能と考える医行為も増加しており、特に「胃ろうチューブ・ボタンの交換」など日常生活に関わる行為だった。しかし、一部の医行為では、看護師以外が実施すべきという意見が多かった。
結論
本調査の回答率は6.2%(推定)と低いが、現場の看護師の医行為の実施状況や看護師への委譲意向に関しての一定の信頼度が期待できる調査結果である。
 医行為の実施について、「現在、看護師が実施」の回答割合が半数を超える項目は、13項目(6.2%)に留まり、多くの医行為は医師が担っている現状が窺えた。その一方で、前回調査との比較では、144項目(70.9%)は、「現在、看護師が実施」の回答割合が有意に増加し、研修制度の普及によって看護師への医行為のタスクシフト・タスクシェアが促進してきていることが確認された。しかし、前回調査と比較して、主に薬剤関連の医行為では、看護師の実施率に有意な増加が認められないものもあった。それらは、研修制度の普及に関連して、全身状態の評価や継続的な評価の重要性が改めて広く認知され、対症的な薬剤投与では安全が担保できないことの感度が高まったことが理由の一つと推察され、継続的な調査が必要である。
 「今後、看護師が実施可能」の回答割合が半数を超える項目は、117項目(55.7%)に上り、医療現場の医師、看護師は、さらなる看護師の医行為の実施の促進や役割拡大への期待や意欲が大きい。特定行為の前回調査との比較では、41項目中33行為(80.5%)が有意な増加を示した。特定行為の活動成果の報告など増え、認知度を高めてきたことが、本結果にも影響していることが推察される。一方、「今後、看護師が実施可能」の割合が有意に低下したものもある。それらは、他の特定行為と比べ指定研修機関の数や特定行為看護師が少なく、活動モデルや成果の共有が限定的であることから研修制度の普及が進められていないことが考えられる。

公開日・更新日

公開日
2024-06-06
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-06-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202321019B
報告書区分
総合
研究課題名
看護職及び特定行為研修修了者による医行為の実施状況の把握・評価のための調査研究
課題番号
22IA1012
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
永井 良三(自治医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 前原 正明(蒲田リハビリテーション病院)
  • 釜萢 敏(公益社団法人 日本医師会)
  • 木澤 晃代(日本看護協会)
  • 見城 明(福島県立医科大学 医学部)
  • 飯室 聡(国際医療福祉大学 未来研究支援センター)
  • 村上 礼子(自治医科大学 看護学部)
  • 川上 勝(自治医科大学 看護学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
「特定行為研修制度」の創設時から時間が経過し、我が国の医療環境は大きく変化した。医療環境に対応した研修制度が求められており、特定行為研修制度の見直しに向けた基礎資料を得るため、令和4年度は特定行為に関連する学協会団体等(以下、調査対象)が想定している看護師が担う医行為の推進意向等を確認し、令和5年度は全国の医療機関に勤務する医師や看護師を対象に、看護師による医行為の実施状況と今後の実施可能性について把握した。
研究方法
令和4年度は特定行為および診療の補助業務に関連する医学系および看護系の学協会121団体を対象、Web調査で無記名のアンケート調査を実施した。令和5年度は、全国の特定機能病院、病院、有床診療所、介護保険施設、訪問看護ステーションに勤務する医師及び看護師を対象にWeb調査を行った。調査項目には、2010年度調査で選定された203項目に、令和4年度調査の結果を踏まえ210項目の医行為で、看護師の現在の実施状況と委譲意向の回答を得た。
結果と考察
令和4年は、調査参加に同意した64団体(52.9%)のうち回答があった49団体(76.6%)(医学系27団体、看護系20団体、その他2団体)を分析対象とした。特定行為である38の医行為のうち24行為は、「実施を推進している」もしくは「今後実施を推進したい」(以下、推進の意向あり)と回答した団体が3割以上で、特定行為である医行為の多くは各団体にとって関連する医行為の実施を推進する意向であった。また、看護師が実施することの推進には、医学・看護系団体間でやや強い相関があったことから、全体としては共通している傾向が確認できた。
令和5年度は、医師240人と看護師1,871人の回答を得た。医師は、特定機能病院からの回答が34.5%、一般病院からが14.1%となり、その他に訪問看護ステーションから12.6%、有床診療所から9.9%、介護保険関連施設等から2.9%の回答があった。看護師は、認定看護師課程・専門看護師課程、特定行為研修修了者(以下、特定行為看護師)は1,704人で全体の91.1%だった。
医師・看護師共に、「導尿・留置カテーテルの挿入」が現在の実施状況と今後看護師が実施可能と考える医行為の両方で最も高い割合を示した。また、今後看護師が実施可能と考える医行為では、医療機関の種類により差異があり、特定行為看護師の回答では、病院で「直接動脈穿刺による採血」、病院以外では「創部洗浄・消毒」が挙げられた。
2010年調査との比較では、全体的に、看護師が実施と回答した割合が有意に増加しているものが多かった。特に、「直接動脈穿刺による採血」や「経腹部的膀胱超音波検査」などの検査関連行為や、「褥瘡の壊死組織のデブリードマン」、「創傷の陰圧閉鎖療法の実施」などの処置・創傷関連行為は顕著だった。また、医師と看護師の今後看護師が実施可能と考える医行為では「胃ろうチューブ・ボタンの交換」などなど日常生活に関わる行為は増加していた。一方で、一部の医行為では、看護師以外が実施すべきという意見もあった。
結論
看護師が実施することの推進には、医学・看護系団体間でやや強い相関があったことや、医療現場の実施または今後の委譲意向の結果から、研修制度の普及によって看護師への医行為のタスクシフト・タスクシェアが促進してきている、または、促進できることが確認された。しかし、2010年調査と比較して、主に薬剤関連の医行為では、看護師の実施率に有意な増加が認められないものもあった。それらは、研修制度の普及に関連して、全身状態の評価や継続的な評価の重要性が改めて広く認知され、対症的な薬剤投与では安全が担保できないことの感度が高まったことが理由の一つであると推察され、継続的な調査が必要である。また、特定行為に限らず共通してタスクシフト・シェアの促進が期待できる意向が高い医行為もあり、看護師が実施することの安全性の確保や、活動モデル、成果が共有されることで、よりタスクシフト・シェアできる医行為が増えることは可能ではないかと考える。

公開日・更新日

公開日
2024-06-06
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-06-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202321019C

成果

専門的・学術的観点からの成果
特定行為に係る研修制度が開始して約9年が経過し、研修制度の普及によって看護師への医行為のタスクシフト・タスクシェアが促進してきている、または、促進できることが確認された。このことから、我が国の医療環境の変化に対応したチーム医療の推進や医師の働き方改革の検討材料となり、社会的意義が高いと考える。
臨床的観点からの成果
医療現場の看護師は、研修制度の普及に関連して全身状態の評価や継続的な評価の重要性を改めて広く認知していることが示唆され、医療安全の意識が高まっていることが推察され、今後、医療の質保証ならびに向上にも寄与していくことが考えられる。
ガイドライン等の開発
該当事項無し。
その他行政的観点からの成果
特定行為を含め医行為の看護師の実施状況や今後の実施意向について、各関連団体や学会、全国の各種医療現場の医師や看護師に調査を行った成果は、今後の特定行為に係る看護師の研修制度の見直しの材料として貢献できる。
その他のインパクト
啓発活動として、都道府県行政からの依頼や、学種学会等からの依頼で、特定行為の現状や今後の展望に関して講演依頼を受け、発表している。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
5件
講演・シンポジウム5件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2024-06-06
更新日
-

収支報告書

文献番号
202321019Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
7,000,000円
(2)補助金確定額
7,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 62,249円
人件費・謝金 1,625,631円
旅費 0円
その他 3,697,120円
間接経費 1,615,000円
合計 7,000,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2024-06-05
更新日
-