将来の医療需要を踏まえた外来及び在宅医療の提供体制の構築のための研究

文献情報

文献番号
202321016A
報告書区分
総括
研究課題名
将来の医療需要を踏まえた外来及び在宅医療の提供体制の構築のための研究
課題番号
22IA1009
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
今村 知明(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 野田 龍也(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
  • 西岡 祐一(奈良県立医科大学 公衆衛生学講座)
  • 次橋 幸男(奈良県立医科大学 公衆衛生学講座)
  • 赤羽 学(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部)
  • 柿沼 倫弘(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部)
  • 中西 康裕(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部)
  • 佐藤 拓也(東京大学医学部附属病院 救急・集中治療科)
  • 町田 宗仁(国立保健医療科学院 国際協力研究部)
  • 明神 大也(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
10,686,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、在宅医療と外来医療においてNDB・KDB等のレセプトデータや介護DB、外来機能報告等を用いて、各地域における医療需要を推計し、効率的かつ効果的な入院外医療の提供体制について検討を行うことを目的とする。
研究方法
① 在宅医療・介護保険サービス提供の実態と将来需要の検討(在宅医療班)
奈良県KDB改良データを用いて、1)リハビリテーションにかかる実態把握方法の検討、2)在宅患者のアクセシビリティ分析に関する予備検討、の2つの研究を行った。
② 外来医療の実態と将来需要の検討(外来医療計画班)
令和4年度病床機能報告及び、2022年6月時点の地域医療支援病院、特定機能病院のリスト、2024年1月時点の紹介受診重点医療機関のリストを突合し、外来機能報告データにおいて各医療機関の一般病床数、地域医療支援病院、特定機能病院、紹介受診重点医療機関の設定の有無の情報を追加した。
③ 効率的・効果的な入院外医療の提供体制の検討(入院外医療の提供体制班)
在宅療養支援病院(在支病)とその関連する医療福祉施設に対して、入院医療から在宅医療への移行の取組の状況について、医療資源の豊富な都市部の事例1件、地方都市の8地域の在支病と、その連携機関に、ヒアリングを通じて情報収集した。
結果と考察
<結果>
① 在宅医療班
1)では、2019年度のデータを対象にリハビリテーションを受けている患者数を性・年齢階級、二次医療圏別に集計した。リハビリテーション資源(病床、専門職数)の少ない圏域ではリハビリテーションの提供が少ない傾向がみられ、外来でのリハビリテーション提供においてはアクセスの低さがリハビリテーション提供の少なさと関連する傾向がみられた。2)では、ArcGISのメッシュ別人口データを用いて架空の在宅患者を発生させて、県全域、二次医療圏別のパターンで予備的に分析方法の検討を行ったが複数回の試行において発生地点がばらつくことが明らかとなった。
② 外来医療計画班
12,109医療機関から外来機能報告があり、その内訳は無床診療所10、有床診療所5,172、病院6,927医療機関で、さらにそのうち特定機能病院は86、地域医療支援病院681であった。分析の結果、紹介受診重点外来が占める割合が再診の25%という条件が、初診の40%という条件よりも満たさない医療機関が多いこと、その紹介受診重点外来を項目別に分析するとCTやMRIをはじめとする高額等の医療機器・設備を使用する外来が占める割合が大きいことが分かった。
③ 入院外医療の提供体制班
入院された高齢者の患者が、早期退院して、在宅医療に円滑移行できるための取り組みについて、入院直後からの多職種連携による退院後の生活イメージを共有、再入院がすぐ出来る体制の用意が重要であることがわかった。在宅療養支援病院の届出のための人員配置等の苦労について、医師を配置するだけで精一杯であるという回答を得た。どのような『素養を持つ人材』が病院にいることが望ましいかについて、総合診療を担う医師や患者を引継ぐ側の事情が分かる人、また、『素養を持つ人材』を養成するための研修について、医師が往診業務をするための研修が必要との回答を得た。

<考察>
① 在宅医療班
圏域間での比較では関連資源ならびに提供量に格差がみられた。リハビリテーションの提供期間と場所、介護保険下でのリハビリテーション提供などについても分析することで、さらに詳細な実態の把握と解決策を検討できると考えられる。アクセシビリティ分析においては在宅医療機関の絞り込みを行い、重みづけ等を考慮した分析が必要と考えられる。
② 外来医療計画班
外来機能報告の分析により、医療機関の区分や規模による差異が認められたものの、全体的には紹介率、逆紹介率、重点外来、重点医療機関といった指標によって、医療機関間で一定程度の機能分化が存在していることが明らかになった。患者の医療機関選択の円滑化や医療機関従事者の負担軽減を目指す施策を検討する上で、さらなる研究の深化が必要である。
③ 入院外医療の提供体制班
高齢者向けの医療提供については、入院医療から入院外医療への効率的・効果的に移行する取り組みが必要である。また病気の治療のための、入院医療を担う医療スタッフが、患者の退院後の生活についても、受け入れ先と共に考えることが、今後一層、求められると考えられる。
結論
本研究は、各都道府県が策定・実施する医療計画や地域医療構想の実務的な資料として機能することが期待され、特に入院外医療(在宅医療+外来医療)について進めていくべき機能分化・連携の方向性やその方法を示す成果となると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2024-05-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-05-29
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202321016Z