都市機能等の整備と協調してアクセシビリティを確保しつつ持続可能な医療提供体制を構築するための研究

文献情報

文献番号
202321015A
報告書区分
総括
研究課題名
都市機能等の整備と協調してアクセシビリティを確保しつつ持続可能な医療提供体制を構築するための研究
課題番号
22IA1008
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
石川 ベンジャミン光一(学校法人 国際医療福祉大学 大学院医学研究科 赤坂心理・医療福祉マネジメント学部 医療マネジメント学科 )
研究分担者(所属機関)
  • 村松 圭司(産業医科大学 医学部 公衆衛生学)
  • 石田 円(国際医療福祉大学 赤坂心理・医療福祉マネジメント学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
6,570,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
2025年の地域医療構想の実現と次期医療計画の策定に向けて、地域を主体とする医療提供体制についての検討が進められている。近年では各種のオープンデータの整備を通じて検討のための基礎データは充実してきているものの、現場での議論で利用するにはデータの加工が不可欠であり、現場ですぐに活用可能な実務的資料の整備が求められている。
 本研究では、①地域分析用統合データベースを構築し、②医療機関の再編等に伴うアクセシビリティ変化の評価を可能とするとともに、③再編統合事例で利用されてきた都市整備事業や、④活用可能な補助金等の調査を行い、持続可能な医療提供体制を構築するための情報とノウハウを整備することを目的としている。
研究方法
①地域分析用統合データベースについては、初年度に2011年から2021年までの保険医療機関総覧を整備し、2015~2020年のDPC調査と2019~2020年の病床機能報告のオープンデータに収載された病院について、保険医療機関番号に基づく統合データべースの構築を行った。今年度はDPC調査データに対する手術有無別・救急医療入院についての集計追加や病床機能報告データに対する人員規模別の集計の追加、看護系職員についての可視化の充実を行った。また、将来推計人口データの整備・統合を行った。
②医療機関の再編等に伴うアクセシビリティ変化の評価については、初年度にアクセシビリティを可視化する地域区分として、公益財団法⼈統計情報研究開発センターが提供する平成27年度国勢調査地域メッシュ統から基準地域メッシュ(第3次地域区画、一辺約1Km、以下1Kmメッシュ)の区画データを用利用し、運転時間については、1Kmメッシュの重心点から病院までの運転時間が最も短くなる経路を探索して計算を行った。なお、道路ネットワークについては、2021年4月1日までに供用・廃止される道路を利用し、道路の種別ごとに移動速度を定め、交差点毎に6秒の通過時間を加算することにより算出し、この結果を用いて各種の資料を作成した。今年度はDPC調査データで公開される施設別・傷病別の診療件数に基づいて施設の集約化を行うための可視化資料を作成するとともに、自動車による運転時間に基づく地域カバー状況を可視化し、神奈川県・肺がんの入院治療についての事例検討を行った。
③医療機関の再編等と連動した交通網・都市整備事例についての調査、④交通網・都市整備において活用可能な補助金等の調査について、初年度はコミュニティバスの運用事例を対象として調査を行った。今年度は国土交通省の地域公共交通確保維持改善事業費補助金を対象として、文献検索により情報を整理して、事業の実施状況について検討した。
結果と考察
①地域分析用統合データベースについては、初年度の研究成果としてインターネットで公開中の各種資料に追加して、既存資料への機能追加と新たな可視化資料の開発を行うとともに、2023年12月に公開された国立社会保障・人口問題研究所『日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)』の可視化を行った。
②医療機関の再編等に伴うアクセシビリティ変化の評価については、初年度に構築した自動車による運転時間データベースを活用して、PC調査データに基づく地域内の病院の症例集積の状況と、医療機能の集約化によるアクセシビリティへの影響を自動車による運転時間に基づいて可視化する手法について検討を行い、神奈川県の肺がん入院治療を例とした分析を実施した。
③医療機関の再編等と連動した交通網・都市整備事例についての調査、④交通網・都市整備において活用可能な補助金等の調査については、国土交通省の地域公共交通確保維持改善事業費補助金を対象として、補助金交付の流れ、補助金予算、補助金交付実績に関連した文献検索により情報を整理して、事業の実施状況を明らかにした。
結論
本研究では、これまでに統合化したDPC調査・病床機能報告オープンデータ等を活用するための資料の充実に取り組むほか、医療機能の集約化とアクセシビリティへの影響を可視化する手法についての検討を行って新たな画面を実装・インターネットで提供し、神奈川県の肺がん入院治療についての事例検討を行った。その結果として、すでに高度な集約化が進む地域、複数施設からの集約化が必要な地域、地域人口の制約により圏域内での集約化が難しく、広域での連携と地域に密着したサービスの組み合わせが必要な地域などがあることが示された。また、交通網・都市整備事例と補助金の調査からは国土交通省による2事業についてその活用状況を明らかにすることができた。今後はこうした可視化資料を用いて、各地域での調整を行うことが重要と考えられる。

公開日・更新日

公開日
2024-05-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-05-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202321015Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,541,000円
(2)補助金確定額
7,460,473円
差引額 [(1)-(2)]
1,080,527円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 18,601円
人件費・謝金 0円
旅費 0円
その他 5,470,872円
間接経費 1,971,000円
合計 7,460,473円

備考

備考
物品費については研究で使用する物品についての見直しを行った結果、現有機器等を有効活用することにより減額となった。
人件費・謝金については、データ整理等のためにアルバイトスタッフを雇用する予定であったが、研究班員により作業を実施することができたため減額となった。
旅費については、オンライン会議やインターネット上資料を活用することにより情報の収集・交換を行ったため減額となった。
その他については、㈶統計情報研究開発センターの地域メッシュ統計データが予想よりも低くなったため減額となった。
なお、研究全体としての減額分については、国立社会保障人口問題研究所が公表する日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)のデータ整備を外注することを検討したが、当該データの公開が大幅に遅れたため、年度内に外注業務が完了できない見込みとなったため実施することができなかった。そこで研究者が作業することにより予定する成果を得た。
経費の変動はあったが、研究に支障はなく、研究目標を達成することができた。

公開日・更新日

公開日
2024-06-05
更新日
-