美容医療における医療安全を確保し、医療安全に係る諸制度との連携を実装して安全な美容医療のシステムを構築するための研究

文献情報

文献番号
202321014A
報告書区分
総括
研究課題名
美容医療における医療安全を確保し、医療安全に係る諸制度との連携を実装して安全な美容医療のシステムを構築するための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22IA1006
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
朝戸 裕貴(獨協医科大学 医学部形成外科学)
研究分担者(所属機関)
  • 大慈弥 裕之(北里大学 医学部形成外科・美容外科)
  • 吉村 浩太郎(自治医科大学 形成外科)
  • 橋本 一郎(徳島大学 大学院ヘルスバイオサイエンス研究部)
  • 山本 有紀(和歌山県立医科大学 医学部)
  • 石河 晃(東邦大学 医学部)
  • 杉山 文(広島大学大学院 医系科学研究科 疫学・疾病制御学)
  • 南須原 康行(北海道大学医学部・歯学部附属病院医療安全管理部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
2,208,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
先行研究である令和元年度「美容医療における合併症の実態調査と診療指針の作成」、令和2-3年度「美容医療における合併症実態調査と診療指針の作成及び医療安全の確保に向けたシステム構築への課題探索」において、美容医療に関係する5学会(日本美容外科学会JSAPS, 日本美容皮膚科学会JSAD, 日本美容外科学会JSAS,日本形成外科学会JSPRS, 日本皮膚科学会JDA)の会員施設を対象に合併症の実態調査、および5学会が協力して診療指針の作成を行う仕組みができた。
本研究では、①美容医療における有害事象の実態調査、②美容医療診療指針の活用調査、③既存の医療安全に係る制度と連携した取り組みの検討を通して、美容医療における医療安全の向上に資することを目的に研究を行った。
研究方法
①美容医療有害事象実態調査
先行研究に引き続き、日本国内で行われた美容医療の合併症について美容医療有害事象の実態調査を行った。調査対象は前述5学会会員の所属施設(4201施設)であり、各施設で診療した合併症と後遺症の種類、原因と考えられる医療行為の内容(施術、手技、材料、機器、麻酔など)について、前向き調査として2023年7月から12月までの期間にweb登録システム上で調査した。
②診療指針作成と診療指針活用調査
まず先行研究の結果である診療指針について、公開から一定期間の後に、日常診療においてどのように診療指針が活用されているかアンケート調査を行った。調査対象は合併症調査と同様の4201施設の医師とし、同時に依頼した。
③医療安全諸制度との連携システム構築への取り組み
美容医療に関する医療安全上の問題点を、既存の医療事故情報収集等事業や医療事故調査制度、医療安全支援センターなどと連携させるべく、医師に対する講習動画のコンテンツを作成し、web上で公開した。
結果と考察
①美容医療有害事象実態調査
4201施設中44施設(1.0%)から回答を得、日本国内で行われた美容医療に起因する合併症は159件報告された。重度の合併症/後遺症は107件(67.3%)で、多かったのは「異物肉芽種、しこり形成」(29件)、次いで「治療後の形態的左右差」(20件)、「開瞼・閉瞼障害」(10件)であった。軽度の合併症/後遺症は52件(32.7%)で、多かったのは「軽度の変形、左右差」(31件)であり、次いで「軽度の瘢痕」(12件)であった。「出血多量、輸血を必要とするもの」や「敗血症」症例など重篤な症例も報告されており、国内未承認の医薬品・材料に起因する「重度の合併症/後遺症症例」も4例認められた。
 本合併症調査は回答率の低さから有害事象の全体像を把握できるものではないと考える。ただ重篤な合併症を引き起こすことがあることを周知し、今後も合併症調査を行っていく必要があるものと考える。
②診療指針作成と診療指針活用調査
活用調査の回答数は140(回答率3.3%)であった。回答者のうち、冊子体を所有している割合は34.8%、PDFデータを参考にしている割合は28.4%で、学会HPからPDFをダウンロードできることの認知度は42.6%にとどまっていた。参考になったCQは日光黒子・肝斑・後天性真皮メラノサイトーシス、次いでシワやタルミに対するHIFU、ヒアルロン酸の適応、次に脱毛であった。すべてのCQが参考になった、あるいはすべて目を通していないため判断できないとの回答が78%あった。
指針を読んだ人全員が「他の医師や他の医療機関に勧められる」と回答し、指針の内容は高く評価されたが、情報発信強化が課題と考えられた。
③医療安全諸制度との連携システム構築への取り組み
美容医療に携わる医療機関における医療安全講習に使用できるビデオを作成した。講習内容には外部弁護士の講演や、厚労省からの医療安全施策の動向に関する講演も加え、分担研究者の講演2つを合わせて4つの講演動画を作成し内容編集を行った。公開方法として広告収入の入らないプラットフォームを使用し、web上に公開した(https;//www.jsaps.com/movies/index.html)。広く美容医療機関で利用されるよう、周知活動を続ける必要がある。
結論
 美容医療の質を担保する基盤となる本研究事業の意義は大きいと考えられる。医療安全を確保し、医療安全に係る諸制度との連携を実装して安全な美容医療のシステムを構築するために、今後、制度面でのより踏み込んだ検討が求められる。

公開日・更新日

公開日
2025-07-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2025-07-17
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202321014B
報告書区分
総合
研究課題名
美容医療における医療安全を確保し、医療安全に係る諸制度との連携を実装して安全な美容医療のシステムを構築するための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22IA1006
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
朝戸 裕貴(獨協医科大学 医学部形成外科学)
研究分担者(所属機関)
  • 大慈弥 裕之(北里大学 医学部形成外科・美容外科)
  • 吉村 浩太郎(自治医科大学 形成外科)
  • 橋本 一郎(徳島大学 大学院ヘルスバイオサイエンス研究部)
  • 山本 有紀(和歌山県立医科大学 医学部)
  • 石河 晃(東邦大学 医学部)
  • 杉山 文(広島大学大学院 医系科学研究科 疫学・疾病制御学)
  • 南須原 康行(北海道大学医学部・歯学部附属病院医療安全管理部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
先行研究である令和元年度「美容医療における合併症の実態調査と診療指針の作成」、令和2-3年度「美容医療における合併症実態調査と診療指針の作成及び医療安全の確保に向けたシステム構築への課題探索」において、美容医療に関係する5学会(日本美容外科学会JSAPS, 日本美容皮膚科学会JSAD, 日本美容外科学会JSAS,日本形成外科学会JSPRS, 日本皮膚科学会JDA)の会員施設を対象に合併症の実態調査、および5学会が協力して診療指針の作成を行う仕組みができた。
本研究では、美容医療における合併症の傾向を把握することを目的に合併症の前向き調査を行うとともに、診療指針の活用状況を明らかにするための調査も行った。また美容医療において発生した患者の安全に関する事案を既存の医療安全に係る制度において効果的に活用するための方策を検討し、医療安全の講習動画を作成した。

研究方法
①美容医療有害事象実態調査
先行研究に引き続き、日本国内で行われた美容医療の合併症について美容医療有害事象の実態調査を行った。調査対象は前述5学会会員の所属施設等(4201施設)であり、各施設で診療した合併症と後遺症の種類、原因と考えられる医療行為の内容(施術、手技、材料、機器、麻酔など)について、前向き調査として2023年7月から12月までの期間にweb登録システム上で調査した。
②診療指針作成と診療指針活用調査
2022年10月に美容医療診療指針が発行されてから一定期間の後に、日常診療においてどのように診療指針が活用されているかgoogle formsを用いてweb入力する方法で、2023年7月から12月までの期間アンケート調査を行った。調査対象は合併症調査と同様の4201施設の医師とし、同時に依頼した
③医療安全諸制度との連携システム構築への取り組み
美容医療に関する医療安全上の問題点を、既存の医療事故情報収集等事業や医療事故調査制度、医療安全支援センターなどと連携させるべく、講習動画を作成し、公開することとした。
結果と考察
①美容医療有害事象実態調査
4201施設中44施設(1.0%)から回答を得、日本国内で行われた美容医療に起因する合併症は159件報告された。重度の合併症/後遺症は107件(67.3%)で、多かったのは「異物肉芽種、しこり形成」(29件)、次いで「治療後の形態的左右差」(20件)、「開瞼・閉瞼障害」(10件)であった。軽度の合併症/後遺症は52件(32.7%)で、多かったのは「軽度の変形、左右差」(31件)であり、次いで「軽度の瘢痕」(12件)であった。「出血多量、輸血を必要とするもの」や「敗血症」症例など重篤な症例も報告されており、国内未承認の医薬品・材料に起因する「重度の合併症/後遺症症例」も4例認められた。美容医療における医療安全の重要性を示唆する結果であったと言える。
②診療指針作成と診療指針活用調査
活用調査の回答数は140(回答率4.2%)であった。回答者のうち、冊子体を所有している割合は34.8%、PDFデータを参考にしている割合は28.4%で、学会HPからPDFをダウンロードできることの認知度は42.6%であった。情報発信の強化が課題と考えられた。参考になったと回答したCQは割合が多い順に日光黒子・肝斑・後天性真皮メラノサイトーシス、次いでシワやタルミに対するHIFU、ヒアルロン酸の適応、次に脱毛であった。すべてのCQが参考になった、あるいはすべて目を通していないため判断できないとの回答が78%あった。
③医療安全諸制度との連携システム構築への取り組み
美容医療に携わる医療機関における医療安全講習に使用できるビデオを作成した。講習内容には外部弁護士の講演や、厚労省からの医療安全施策の動向に関する講演も加え、分担研究者の講演2つを合わせて4つの講演動画を作成し内容編集を行った。公開方法として広告収入の入らないプラットフォームを選択し、web上に公開した。(https://www.jsaps.com/movies/index.html)。広く医療機関で利用されるよう、周知活動を続ける必要がある。
結論
 美容医療の質を担保する基盤となる本研究事業の意義は大きいと考えられる。医療安全を確保し、医療安全に係る諸制度との連携を実装して安全な美容医療のシステムを構築するために、今後、制度面でのより踏み込んだ検討が求められる。

公開日・更新日

公開日
2025-07-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2025-07-17
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202321014C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 美容医療に関係する5つの学会等の4,201施設を対象に、令和5年7月から12月までの期間に国内で行われた美容医療に関する有害事象の前向き調査を行った。また同時期に先行研究の結果令和4年に刊行に至った美容医療診療指針を、医師がどのように活用しているかのアンケート調査を行った。また医療安全に関するビデオ講習を作成・公開した。このことはわが国における美容医療の医療安全向上に寄与するものである。
臨床的観点からの成果
有害事象調査では異物肉芽腫やしこり形成がもっとも多く、次いで形態の左右差や、開瞼・閉瞼障害が多く報告された。出血多量や敗血症など重篤な合併症や、国内未承認の医薬品・材料に起因する合併症の報告もあった。診療指針活用調査では診療指針の内容は高く評価されているが、診療指針自体の認知度をさらに高める必要性が明らかとなった。医療安全のビデオ講習についての評価は今後明らかになっていくものと考えられる。
ガイドライン等の開発
先行研究の結果である「美容医療診療指針(令和3年度改訂版)」を令和4年10月に完成、刊行した。今回の研究では発刊後9か月を経て、診療指針がどのように活用されているか調査を行っている。参考になったCQは日光黒子(老人性色素斑)、肝斑、後天性真皮メラノサイトーシス、次いでシワ、タルミに対するHIFU(High Intensity Focused Ultrasound)やヒアルロン酸の適応、脱毛であった。指針を読んだすべての回答者から「他の医師や医療機関に勧められる」と評価が得られた。
その他行政的観点からの成果
美容医療に関連する5団体等の協力のもとに、先行研究から続いている美容医療の有害事象調査や、診療指針の改訂などを引き続き行っていくことによって、安心安全な美容医療体制の構築に寄与できるものと考えられる。また、本研究の講習ビデオによって、医療者らに対して、医療事故情報収集等事業への報告や、患者に対する医療安全支援センターなどの相談先の紹介等を周知する一助になると考えられる。
その他のインパクト
特記なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2025-06-16
更新日
-

収支報告書

文献番号
202321014Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,801,000円
(2)補助金確定額
2,312,000円
差引額 [(1)-(2)]
489,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 656,846円
人件費・謝金 427,185円
旅費 49,300円
その他 586,460円
間接経費 593,000円
合計 2,312,791円

備考

備考
① 物品費、人件費・謝金が交付決定額より増額した理由
物品費:当初有害事象調査と診療指針活用調査において必要と考えられていた物品費以外に、ビデオ講習作成および編集を担当する分担研究者間で共有するためにメモリーメディア等の物品費を増額する必要があった。
人件費・謝金:有害事象活用調査を開始するためにwebページの改変について、委託会社との連絡等のために人件費を当初よりも増額する必要があった。
② 旅費、委託費が交付決定額より減額した理由
旅費:Covid-19の影響もあり、対面での班会議は行わずWEB会議にて行ったため、当初想定していた金額よりも減額した。
委託費:有害事象調査および診療指針活用調査の調査期間が短縮されたこと、ならびに有害事象調査を従来のwebページの部分的修正によって行うことができたため、委託費が当初予定よりも減額した。

公開日・更新日

公開日
2024-06-07
更新日
-