文献情報
文献番号
202321012A
報告書区分
総括
研究課題名
医療機関内の医療事故の機能的な報告体制の構築のための研究
課題番号
22IA1004
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
木村 壯介(一般社団法人日本医療安全調査機構 )
研究分担者(所属機関)
- 宮田 哲郎(東京大学 医学部附属病院血管外科)
- 後 信(財団法人日本医療機能評価機構 医療事故防止事業部)
- 南須原 康行(北海道大学医学部・歯学部附属病院医療安全管理部)
- 秋元 奈穂子(立教大学法学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
6,014,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
医療事故調査制度は、医療事故の再発防止を図る制度として平成27年10月1日に施行された。本制度の対象が疑われる医療事故が発生した場合、当該医療機関自らその判断を行い、遺族への説明、医療事故調査・支援センターへ報告した後、院内調査を実施、調査結果について遺族へ説明及びセンターへ報告する。さらにセンターは、集積した情報の整理及び分析を行い、再発防止に関する普及啓発等を行うこととされている。制度開始から令和5年12月末までに、「医療事故」の発生報告2,909件、続いて行われる院内事故調査の結果報告書2,541件がセンターへ届けられている。
一方、事故対応が均霑化しているかに関しては議論がある。例えば人口で補正した都道府県別医療事故発生報告件数や、病床規模が同等の医療機関でも報告数にばらつきがあることが指摘されている。また、医療機関で死亡が発生してから医療事故報告されるまでの過程には、死亡事例の把握、医療事故該当性の判断、遺族への説明など進める必要があるが、医療機関でこれらの初期対応が円滑に行われているか、医療機関が抱える課題や必要な支援の内容も明らかになっていない。
そこで本研究では、特に死亡の発生から医療事故報告までの初期対応における医療機関内の体制に焦点をあてて実態調査を行い、抽出された課題から機能的な医療事故報告体制の確立に必要な要素を同定し、医療事故報告体制に関する手引きや訓練方法の開発を通じて医療機関の円滑な初期対応に資することを目的とする。
一方、事故対応が均霑化しているかに関しては議論がある。例えば人口で補正した都道府県別医療事故発生報告件数や、病床規模が同等の医療機関でも報告数にばらつきがあることが指摘されている。また、医療機関で死亡が発生してから医療事故報告されるまでの過程には、死亡事例の把握、医療事故該当性の判断、遺族への説明など進める必要があるが、医療機関でこれらの初期対応が円滑に行われているか、医療機関が抱える課題や必要な支援の内容も明らかになっていない。
そこで本研究では、特に死亡の発生から医療事故報告までの初期対応における医療機関内の体制に焦点をあてて実態調査を行い、抽出された課題から機能的な医療事故報告体制の確立に必要な要素を同定し、医療事故報告体制に関する手引きや訓練方法の開発を通じて医療機関の円滑な初期対応に資することを目的とする。
研究方法
研究1年目(令和4年度)に、医療機関における医療事故の報告体制の実態調査、特にどのような基準や体制のもと、医療事故の判断を行っているか等、全国約9,000施設に対し、病床規模別、人的体制等を考慮し、「医療機関における医療事故の報告体制の実態調査」を行った。加えて、海外の調査制度や安全管理体制について調査した。
研究2年目(令和5年度)は、前年度の研究結果を踏まえ、死亡の発生から医療事故報告までの初期対応に関する課題を抽出し、医療事故の機能的な報告体制構築にあたって医療機関の参考となる手引きや研修動画を作成した。
研究2年目(令和5年度)は、前年度の研究結果を踏まえ、死亡の発生から医療事故報告までの初期対応に関する課題を抽出し、医療事故の機能的な報告体制構築にあたって医療機関の参考となる手引きや研修動画を作成した。
結果と考察
今年度は研究2年目であり、前年度に実施した「医療機関における医療事故の報告体制の実態調査」の集計を行った。調査対象は全国の医療機関(病院および診療所)であり、送付数は9,297件、有効回答数は2,235件(回答率24.0%)であった。
アンケート結果において、医療機関が事故報告を行う過程で困った事項としては、「情報の収集と整理が大変だった」「当事者のヒアリングに苦労した」「遺族説明に苦労した」との回答が上位3位であった。
このアンケートの集計結果を踏まえ、「医療機関内の医療事故の機能的な報告体制構築のための手引き」を作成した。
本手引きには、医療事故調査制度における医療事故が疑われる死亡事例が発生した場合の院内体制の構築のために、「死亡発生時の院内の報告体制」や「医療事故が疑われる死亡事例の把握から事故判断における院内の体制」および「医療事故が疑われる死亡事例発生時の院内におけるフロー」のイメージを示した。
また、英国や米国における医療事故報告制度は、本邦における「医療事故調査制度」の形態とは異なるため手引きや教材動画に具体的な方策を取り込むことはできなかったが、米国においても医療機関による判断のばらつきの抑制や判断に要す時間の短縮化など、課題があることが分かった。
アンケートで医療機関が困っている事項の中から、「死亡直後の遺族説明」「医療事故の判断に関する検討会」「医療事故と判断した後の遺族説明」の3つの場面に焦点をあてて教材動画を作成した。教材動画は、模擬事例をもとに医療機関の対応の要点を示す内容となっており、今後の医療事故調査制度に関する研修等への活用が期待される。
アンケート結果において、医療機関が事故報告を行う過程で困った事項としては、「情報の収集と整理が大変だった」「当事者のヒアリングに苦労した」「遺族説明に苦労した」との回答が上位3位であった。
このアンケートの集計結果を踏まえ、「医療機関内の医療事故の機能的な報告体制構築のための手引き」を作成した。
本手引きには、医療事故調査制度における医療事故が疑われる死亡事例が発生した場合の院内体制の構築のために、「死亡発生時の院内の報告体制」や「医療事故が疑われる死亡事例の把握から事故判断における院内の体制」および「医療事故が疑われる死亡事例発生時の院内におけるフロー」のイメージを示した。
また、英国や米国における医療事故報告制度は、本邦における「医療事故調査制度」の形態とは異なるため手引きや教材動画に具体的な方策を取り込むことはできなかったが、米国においても医療機関による判断のばらつきの抑制や判断に要す時間の短縮化など、課題があることが分かった。
アンケートで医療機関が困っている事項の中から、「死亡直後の遺族説明」「医療事故の判断に関する検討会」「医療事故と判断した後の遺族説明」の3つの場面に焦点をあてて教材動画を作成した。教材動画は、模擬事例をもとに医療機関の対応の要点を示す内容となっており、今後の医療事故調査制度に関する研修等への活用が期待される。
結論
令和5年度は、令和4年度に実施した約9,000施設の医療機関を対象とする事故報告の体制に関するアンケート調査の結果を集計し、その結果を踏まえて医療機関向けの補助資料として「医療機関内の医療事故の機能的な報告体制構築のための手引き」を作成した。そして、医療事故調査の初期対応訓練に関して、医療機関が医療事故の初期対応において特に困っている3つの場面(死亡直後の遺族説明、医療事故の判断に関する検討会、医療事故と判断した後の遺族説明)について教材動画を作成した。医療機関における手引きや動画の活用に向けて本研究班のホームページを開設し、「医療機関内の医療事故の機能的な報告体制構築のための手引き」および研修動画「医療事故発生時の初期対応トレーニング」を公表し、医療機関における幅広い活用を推進していく予定である。
公開日・更新日
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