文献情報
文献番号
199700670A
報告書区分
総括
研究課題名
化学物質の効率的毒性試験法等の確立に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
小野 宏(財団法人食品薬品安全センター秦野研究所長)
研究分担者(所属機関)
- 小島幸一(財団法人食品薬品安全センター秦野研究所)
- 今井清(財団法人食品薬品安全センター秦野研究所)
- 田中憲穂(財団法人食品薬品安全センター秦野研究所)
- 松木容彦(財団法人食品薬品安全センター秦野研究所)
- 原巧(財団法人食品薬品安全センター秦野研究所)
- 大原直樹(財団法人食品薬品安全センター秦野研究所)
- 長尾哲二(財団法人食品薬品安全センター秦野研究所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 健康地球研究計画推進研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
23,140,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
化学物質の総合的安全対策の基礎となる毒性試験システムは、あらゆる種類の毒性を効率的に検出することが求められるが、各試験は、確実・迅速に検査できるもので、かつ実用的に簡便・廉価であることが求められる。また、動物愛護の立場からも容認されるものであって、国際的に共通の基盤の上で行われる必要がある。そこで、国際的な視野に立ち、現在、化学物質の毒性検出に利用されている毒性試験の問題点の改良を試みるとともに、科学技術の進歩に応じた新しい試験法を確立することを目的とした。
研究方法
「代替毒性試験法の実際的検討」では、提案された新しい毒性試験法の確立のための試験を試行した。急性毒性試験の代替試験法について国際的情勢の観察を行い、研究の動向を調査した。
「長期毒性試験の検査法の改良と開発」では、各動物種における生化学検査の至適化と自動分析化を行った。動物の血液アルブミンや免疫蛋白IgG、IgM、C3、CH50の測定法を免疫比濁法によって開発した。測定法を確立した試験法を用いて実際の毒性試験の試料について測定検討を実施した。
「長期毒性試験の動物飼育法の改良」では、蛋白含量約18%の低蛋白固型飼料CR-LPFと蛋白含量約25%の標準固型飼料CE-2を用い、IGS雄ラット(Sprague-Dawley系)に給餌し、更に、自由摂取群と70-75%制限給餌群を設け、これらの動物に、肝毒性物質四塩化炭素、肺毒性物質パラコート、メタプロテレノール、ブレオマイシン、神経毒性物質アクリルアミド、ビスシアノメチルアミンを投与して、症状観察、血液検査、病理検査を行い、毒性発現に対する食餌性の影響を調査した。
「毒性試験改良に関する国際的調査」では、OECD化学物質試験法ガイドライン検討会議、動物代替世界会議、NTP/NIEHSトラスジェニックマウス評価会議等に参加し、試験法の改良・開発・確立に関する国際的動向を調査した。
「培養細胞を用いる試験系の開発」では、紫外線照射による光毒性試験をBALB/3T3細胞を用いたニュートラルレッド取り込み法で威来ない、また各種in vitro変異原性試験に応用して光遺伝毒性試験を実施した。Single Cell Gel(SCG) assayにはL5178Y TK+/- 細胞を用い、染色体異常試験にはチャイニーズハムスターCHL/IU細胞を用いた。光毒性物質としては二酸化チタンを選定した。
「細胞増殖試験法の開発」では、V79細胞を用い、微小管ネットワークに対する解重合性を指標としてエストロゲン誘導体の影響を調査した。
「鶏胚を用いる試験法の開発」では、鶏卵の漿尿膜を用いるCAM-HET試験に改良を加えた人工気室法を用い、漿尿膜刺激性試験を実施した。その結果とウサギを用いた眼刺激性試験(Draize法)の結果を比較した。
「ジョウジョウバエを用いる変異原性試験法」では、翅毛スポットテスト、DNA修復試験を同時に検査できる系の試料を入手し、試験法成績のデータベースの作成を試みた。
「血液細胞を用いる試験法の開発」では、血液細胞と血管系の反応を検討するため、摘出ラット腸間膜血管標本を用い、血管作動性物質に対する収縮弛緩反応を観察した。加齢の影響も観察した。また、SHRとWKYラットでの比較して高血圧症における反応の変化を確認した。加齢の影響も観察した。また、SHRとWKYラットで比較して高血圧症における反応の変化を確認した。
「In vitro生殖発生毒性試験法の開発」では、ラットの全胚培養法を開発し、Crj:CDラットの妊娠9.5日胚に5-フルオロウラシル、バルプロ酸を加えて催奇形性の確認を実施した。また、S9mixを添加して代謝活性化を含む胎児培養系を設計し、5-FU及びウラシル添加の影響を観察した。また、卵胞培養系の確立を試み、卵胞ホルモン測定によって評価した。
「長期毒性試験の検査法の改良と開発」では、各動物種における生化学検査の至適化と自動分析化を行った。動物の血液アルブミンや免疫蛋白IgG、IgM、C3、CH50の測定法を免疫比濁法によって開発した。測定法を確立した試験法を用いて実際の毒性試験の試料について測定検討を実施した。
「長期毒性試験の動物飼育法の改良」では、蛋白含量約18%の低蛋白固型飼料CR-LPFと蛋白含量約25%の標準固型飼料CE-2を用い、IGS雄ラット(Sprague-Dawley系)に給餌し、更に、自由摂取群と70-75%制限給餌群を設け、これらの動物に、肝毒性物質四塩化炭素、肺毒性物質パラコート、メタプロテレノール、ブレオマイシン、神経毒性物質アクリルアミド、ビスシアノメチルアミンを投与して、症状観察、血液検査、病理検査を行い、毒性発現に対する食餌性の影響を調査した。
「毒性試験改良に関する国際的調査」では、OECD化学物質試験法ガイドライン検討会議、動物代替世界会議、NTP/NIEHSトラスジェニックマウス評価会議等に参加し、試験法の改良・開発・確立に関する国際的動向を調査した。
「培養細胞を用いる試験系の開発」では、紫外線照射による光毒性試験をBALB/3T3細胞を用いたニュートラルレッド取り込み法で威来ない、また各種in vitro変異原性試験に応用して光遺伝毒性試験を実施した。Single Cell Gel(SCG) assayにはL5178Y TK+/- 細胞を用い、染色体異常試験にはチャイニーズハムスターCHL/IU細胞を用いた。光毒性物質としては二酸化チタンを選定した。
「細胞増殖試験法の開発」では、V79細胞を用い、微小管ネットワークに対する解重合性を指標としてエストロゲン誘導体の影響を調査した。
「鶏胚を用いる試験法の開発」では、鶏卵の漿尿膜を用いるCAM-HET試験に改良を加えた人工気室法を用い、漿尿膜刺激性試験を実施した。その結果とウサギを用いた眼刺激性試験(Draize法)の結果を比較した。
「ジョウジョウバエを用いる変異原性試験法」では、翅毛スポットテスト、DNA修復試験を同時に検査できる系の試料を入手し、試験法成績のデータベースの作成を試みた。
「血液細胞を用いる試験法の開発」では、血液細胞と血管系の反応を検討するため、摘出ラット腸間膜血管標本を用い、血管作動性物質に対する収縮弛緩反応を観察した。加齢の影響も観察した。また、SHRとWKYラットでの比較して高血圧症における反応の変化を確認した。加齢の影響も観察した。また、SHRとWKYラットで比較して高血圧症における反応の変化を確認した。
「In vitro生殖発生毒性試験法の開発」では、ラットの全胚培養法を開発し、Crj:CDラットの妊娠9.5日胚に5-フルオロウラシル、バルプロ酸を加えて催奇形性の確認を実施した。また、S9mixを添加して代謝活性化を含む胎児培養系を設計し、5-FU及びウラシル添加の影響を観察した。また、卵胞培養系の確立を試み、卵胞ホルモン測定によって評価した。
結果と考察
「簡略・代替試験法の検討」急性毒性試験の3種類の代替試験法がOECDで正規のガイドラインとして採択されている。この主たる目的は、化学物質の危険度分類にある。刺激性試験の代替法の検討は、バリデーションが成立せず、懸案になっ ており、今後更に研究を継続する必要がある。
「長期毒性試験の検査法の改良と開発」各測定法の検量線の再現性は良好であった。免疫学的項目について実際の測定を見ると、OECD既存化学物質投与試験の動物では測定値に著名な変化を示したものはなかったが、レバミゾール、サイクロフォスファミド、デキサメサゾン等を投与すると明らかな変動が観察された。毒性試験において免疫系の因子を追跡した例はこれまで文献的にほとんど見ることができないが、必要性は強く主張されている。この研究で開発した検査法はそのために有用であると考えられる。
「長期毒性試験の動物飼育法の改良」ラットの摂餌量を自由摂取群の70%に制限した群では、自然発生腫瘍の発生頻度が低下し、心筋線維化と腎症の程度が軽度になった。制限給餌群では、四塩化炭素投与後の肝硬変が強く現れた。低蛋白飼料CR-LRF給餌群は、通常の飼料CE-2を給餌した群と比べ、パラコートによる肺胞の組織学的変化が軽く、制限給餌群では更に軽かった。メタプロテレノールでも同様の変化が観察された。神経毒性については調査した物質については制限給餌の影響は認められなかった。
「国際的調査研究」OECD試験法ガイドライン検討会議に出席し、各種毒性試験法ガイドラインの改訂の状況について調査した。毒性試験法は、科学の進歩に基づいて、また、動物愛護の主張に対応して種々の改良、開発が試みられており、現行の動物試験の代替法としてin vitro試験法や遺伝子操作動物の開発が行われている。それに合わせて試験法のバリデーションの基準と行政承認を判断する規準の確立に向けて議論が進められている。
「培養細胞を用いる毒性試験法の研究」では、BALB 3T3細胞を用いるニュートラルレッド法による光毒性試験が精度、感度、再現性において優れた方法であることを認めた。また、一部の化学物質の毒性が光によって著明に増強されることを認めた。Single Cell Gel Assayによる光遺伝毒性試験では、二酸化チタンのDNA傷害が明らかに検出され、それがフリーラジカル産生に基づく機序によるものであることが認められた。
「細胞増殖検出系の開発」では、エストロゲン誘導体の細胞増殖抑制作用を、V79細胞の微小管ネットワークに対する解重合活性を指標として検討した結果、活性の強い構造を確認した。
「鶏胚を用いる試験法の開発」では、鶏胚漿尿膜試験による局所刺激性の結果は界面活性剤については有用な試験法と考えられたが、他の物質では、ウサギで実施したDraize眼刺激性試験あるいは細胞毒性試験と一致しないことがあった。
「ショウジョウバエを用いる変異原性試験法」では、スイスのGraf、Frei、スウェーデンのCederbergらと共同で、数百件の試験データを入手し、個々の物質について、文献調査により他の変異原性試験法の資料を収集して、比較検討した。その結果、この試験法は、変異原性試験法及びがん原性物質の検出力が高いことが示された。
「血液細胞を用いる試験法の開発」では、ラット腸間膜血管標本の動脈の薬物反応性を比較し、加齢や病態(高血圧)によって変化することを認め、反応に関与する局所細胞及び血液細胞の変化が観察できることを示した。
「In vitro生殖発生毒性試験法ほ開発」では、ラット胎児培養法を確立し、胎齢9日からの培養胚に起こる変化を検査できるようにした。5-FUの催奇形性は、S9mix添加によって軽減され、ウラシルの同時投与によって増強された。従って、代謝系を導入した全胚培養系の有用性が示された。
「長期毒性試験の検査法の改良と開発」各測定法の検量線の再現性は良好であった。免疫学的項目について実際の測定を見ると、OECD既存化学物質投与試験の動物では測定値に著名な変化を示したものはなかったが、レバミゾール、サイクロフォスファミド、デキサメサゾン等を投与すると明らかな変動が観察された。毒性試験において免疫系の因子を追跡した例はこれまで文献的にほとんど見ることができないが、必要性は強く主張されている。この研究で開発した検査法はそのために有用であると考えられる。
「長期毒性試験の動物飼育法の改良」ラットの摂餌量を自由摂取群の70%に制限した群では、自然発生腫瘍の発生頻度が低下し、心筋線維化と腎症の程度が軽度になった。制限給餌群では、四塩化炭素投与後の肝硬変が強く現れた。低蛋白飼料CR-LRF給餌群は、通常の飼料CE-2を給餌した群と比べ、パラコートによる肺胞の組織学的変化が軽く、制限給餌群では更に軽かった。メタプロテレノールでも同様の変化が観察された。神経毒性については調査した物質については制限給餌の影響は認められなかった。
「国際的調査研究」OECD試験法ガイドライン検討会議に出席し、各種毒性試験法ガイドラインの改訂の状況について調査した。毒性試験法は、科学の進歩に基づいて、また、動物愛護の主張に対応して種々の改良、開発が試みられており、現行の動物試験の代替法としてin vitro試験法や遺伝子操作動物の開発が行われている。それに合わせて試験法のバリデーションの基準と行政承認を判断する規準の確立に向けて議論が進められている。
「培養細胞を用いる毒性試験法の研究」では、BALB 3T3細胞を用いるニュートラルレッド法による光毒性試験が精度、感度、再現性において優れた方法であることを認めた。また、一部の化学物質の毒性が光によって著明に増強されることを認めた。Single Cell Gel Assayによる光遺伝毒性試験では、二酸化チタンのDNA傷害が明らかに検出され、それがフリーラジカル産生に基づく機序によるものであることが認められた。
「細胞増殖検出系の開発」では、エストロゲン誘導体の細胞増殖抑制作用を、V79細胞の微小管ネットワークに対する解重合活性を指標として検討した結果、活性の強い構造を確認した。
「鶏胚を用いる試験法の開発」では、鶏胚漿尿膜試験による局所刺激性の結果は界面活性剤については有用な試験法と考えられたが、他の物質では、ウサギで実施したDraize眼刺激性試験あるいは細胞毒性試験と一致しないことがあった。
「ショウジョウバエを用いる変異原性試験法」では、スイスのGraf、Frei、スウェーデンのCederbergらと共同で、数百件の試験データを入手し、個々の物質について、文献調査により他の変異原性試験法の資料を収集して、比較検討した。その結果、この試験法は、変異原性試験法及びがん原性物質の検出力が高いことが示された。
「血液細胞を用いる試験法の開発」では、ラット腸間膜血管標本の動脈の薬物反応性を比較し、加齢や病態(高血圧)によって変化することを認め、反応に関与する局所細胞及び血液細胞の変化が観察できることを示した。
「In vitro生殖発生毒性試験法ほ開発」では、ラット胎児培養法を確立し、胎齢9日からの培養胚に起こる変化を検査できるようにした。5-FUの催奇形性は、S9mix添加によって軽減され、ウラシルの同時投与によって増強された。従って、代謝系を導入した全胚培養系の有用性が示された。
結論
現在、なお変化しつつある試験法の動向について、更に調査検討を続け、それらの確立に向けて尽力することが重要である。開発、改良された試験法の確立と行政規制への採用を促進するために、バリデーションの手順を確立することが必要である。
公開日・更新日
公開日
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更新日
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