医療需要や医師の働き方等の変化を踏まえた病院薬剤師の需要把握のための研究

文献情報

文献番号
202321011A
報告書区分
総括
研究課題名
医療需要や医師の働き方等の変化を踏まえた病院薬剤師の需要把握のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22IA1002
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
安原 眞人(帝京大学 薬学部 地域医療薬学研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 伏見 清秀(国立大学法人 東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 医療政策情報学)
  • 今井 志乃ぶ(鎌田 志乃ぶ)(昭和大学 薬学部薬剤疫学部門)
  • 白岩 健(国立保健医療科学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
6,802,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
令和3年6月に発出された「薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会 とりまとめ」では、薬剤師の従事先には業態の偏在や地域偏在があり、病院を中心として薬剤師が充足しておらず、病院薬剤師の確保は喫緊の課題であると指摘された。さらに、病院の機能・規模やチーム医療の観点から、病院ごとに必要な薬剤師数や業務等の情報を把握した上で、需給推計や確保対策を考える必要があると指摘された。本研究は、医療需要や医師の働き方等の変化、医師等の需給推計方法を踏まえた病院薬剤師の需要推計に資する手法を開発し、病院薬剤師に係わる医療行政の基礎資料の構築を目的とする。
研究方法
1.病院薬剤師の需要推計モデル構築:5回の班会議を開催し、DPCデータを用いる病院薬剤師の需要推計モデルの構築について協議した。需要推計のデータソースとして、厚労科研伏見班収集の令和3年度DPCデータ(以下、DPCデータ)に加えて、日本病院薬剤師会の令和4年度病院薬剤部門の現状調査結果と令和4年度厚生労働省委託事業として病院薬剤師の勤務実態調査業務で行った令和4年度タイムスタディの提供を受け、厚生労働省の公表データである令和4年度病床機能報告を利用して推計を進めた。
令和4年度病院部門の現状調査には、薬剤師が関連しうる診療報酬の算定件数等として125種類の診療報酬項目が挙げられている。病院薬剤師の需要推計に必要と思われる診療報酬項目を絞り込むために、令和5年4月に日本病院薬剤師会の委員など65名の有識者にアンケート調査を実施した。
2.病院薬剤師業務のアウトカム評価:各病院の薬剤師業務の実施状況や常勤薬剤師数、アウトカムに関する状況、患者層の特徴に関するデータを得るために、令和3年度DPC導入の影響評価に係る調査、DPC研究班データベース(令和3年6月分)、および令和3年度病床機能報告を利用した。
3.薬剤師届出票に基づく潜在薬剤師数調査:届出票情報の利用について厚生労働大臣の承諾を得て、平成16年から令和2年までの薬剤師届出票データの提供を受け、薬剤師登録番号を指標に薬剤師が従事する職種の経年的な変遷について、年齢、経験年数、性別の影響を調査した。
4.薬剤師のキャリアパス調査:令和5年2~3月に日本医療薬学会の過去3年間の退会者を対象にアンケート調査を行い、283人の回答を得た。令和5年11月4日に第33回日本医療薬学会年会において、「日本医療薬学会退会者を対象とした薬剤師のキャリアパスに関するアンケート調査結果報告」と題するポスター発表を行い、参加者と意見交換を行った。
5.公開シンポジウム:令和6年3月2日(水・祝)に、研究班の2年間の研究成果を報告する公開シンポジウムをステーションカンファレンス東京(東京都千代田区)とWeb会場のハイブリッド方式により開催した。
結果と考察
令和4年度厚生労働省委託事業「病院薬剤師の勤務実態調査」のタイムスタディ調査結果を用いて薬剤師が各業務に要する労働時間を算出し、病院薬剤師需要に掛け合わせることで業務量ベースもしくは病床数ベースの病院薬剤師需要を推定することが可能となった。病院薬剤師業務のアウトカム評価については、病院薬剤師業務や薬剤師数の充足が患者の健康アウトカムの向上に資する可能性が示唆された。
平成16年から令和2年までの薬剤師届出票データを用いて、薬剤師登録番号を指標に経年的な薬剤師の職種の変遷を調査することが可能となった。各調査年度で10%前後の病院薬剤師が2年後には転職しており、転職動向は年齢や性別により異なることが示された。
令和5年2~3月に日本医療薬学会の過去3年間の退会者を対象にアンケート調査を行い、283人の回答を得た。令和5年11月に開催された日本医療薬学会年会で調査結果をポスター発表し、広く意見交換した。
令和6年3月20日に公開シンポジウムをハイブリッド開催し、研究班の成果を報告した。参加者からは、研究を継続し現場の薬剤師業務の状況を反映した需要推計法の確立を求める声が寄せられた。
結論
 病院薬剤師の多様な業務内容毎に患者数,病床数、疾患種別などを変数として必要とされる人数を推定するモデルを構築した。医療ニーズに応じた需要推計に加えて、薬剤師の転職やキャリアパスの変動要因を把握し支援策を講じることが、薬剤師の偏在問題の解消に繋がるものと期待される。

公開日・更新日

公開日
2025-01-06
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2025-01-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202321011B
報告書区分
総合
研究課題名
医療需要や医師の働き方等の変化を踏まえた病院薬剤師の需要把握のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22IA1002
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
安原 眞人(帝京大学 薬学部 地域医療薬学研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 伏見 清秀(国立大学法人 東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 医療政策情報学)
  • 今井 志乃ぶ(鎌田 志乃ぶ)(昭和大学 薬学部薬剤疫学部門)
  • 白岩 健(国立保健医療科学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 薬剤師の従事先には業態の偏在や地域偏在があり、特に病院薬剤師の確保は喫緊の課題とされている。令和4年届出薬剤師数によれば、32万人の薬剤師の61.6%を女性が占めているが、結婚・出産・育児等による休業や退職もしくは復職の実態や潜在薬剤師数についての情報は不十分な現状である。本研究は、医療需要や医師の働き方等の変化を踏まえた病院薬剤師の需要推計法の開発を目指すとともに、潜在薬剤師数の推定や薬剤師のキャリアパス調査を通して、病院薬剤師の確保に資する方策を考察する。
研究方法
 本研究は、日本病院薬剤師会、日本薬剤師会、日本医療薬学会の全面的な協力により研究班を組織し、遂行した。
1.病院薬剤師の需要推計モデル構築:需要推計のデータソースとして、厚労科研伏見班収集の令和3年度DPCデータ(以下、DPCデータ)に加えて、日本病院薬剤師会の令和4年度病院薬剤部門の現状調査結果と令和4年度厚生労働省委託事業として病院薬剤師の勤務実態調査業務で行った令和4年度タイムスタディの提供を受け、厚生労働省の公表データである令和4年度病床機能報告を利用して推計を進めた。
薬剤師が関連しうる診療報酬の算定項目125種類の中から病院薬剤師の需要推計に必要な項目を絞り込むために、令和5年4月に日本病院薬剤師会の委員など65名の有識者にアンケート調査を実施した。
2.病院薬剤師業務のアウトカム評価:各病院の薬剤師業務の実施状況や常勤薬剤師数、アウトカムに関する状況、患者層の特徴に関するデータを得るために、令和3年度DPC導入の影響評価に係る調査、DPC研究班データベース(令和3年6月分)、および令和3年度病床機能報告を利用した。
3.薬剤師届出票に基づく潜在薬剤師数調査:届出票情報の利用について厚生労働大臣の承諾を得て、平成16年から令和2年までの薬剤師届出票データの提供を受け、薬剤師登録番号を指標に薬剤師が従事する職種の経年的な変遷について、年齢、経験年数、性別の影響を調査した。
4.薬剤師のキャリアパス調査:令和5年2~3月に日本医療薬学会の過去3年間の退会者を対象にアンケート調査を行った。本アンケート調査は帝京大学医学系研究倫理委員会の承認(帝倫22-175号)を受けた上で実施し、283人の回答を得た。令和5年11月4日に第33回日本医療薬学会年会において、「日本医療薬学会退会者を対象とした薬剤師のキャリアパスに関するアンケート調査結果報告」と題するポスター発表を行い、参加者と意見交換を行った。
5.公開シンポジウム:令和6年3月2日(水・祝)に、研究班の2年間の研究成果を報告する公開シンポジウムをハイブリッド方式により開催した。シンポジウム終了後に、参加者を対象にWebアンケート調査を実施した。
結果と考察
DPCデータの薬剤師が関わる診療報酬項目の請求件数と薬剤師が費やす業務時間と薬剤師の寄与度を表す換算係数を掛け合わせることで、業務量ベースもしくは病床数ベースの病院薬剤師需要を推定することが可能となった。病院薬剤師業務のアウトカム評価では、病院薬剤師業務や薬剤師数の充足が患者の健康アウトカムの向上に資する可能性が示唆された。薬剤師届出票に基づく薬剤師の転職状況や日本医療薬学会の退会者アンケート結果からは、結婚・出産・育児といったライフエベントが男性に比し女性薬剤師の就業に大きく影響している状況が確認され、病院薬剤師の基本的な処遇改善に加えて、復職支援、子育て支援等の施策の必要性が推察された。
結論
 病院薬剤師の多様な業務内容毎に患者数,病床数、疾患種別などを変数として必要とされる人数を推定するモデルを構築した。本需要推計モデルは今後の検証と更なる改変が欠かせないが、医療ニーズに応じた病院薬剤師の需要推計の基本情報として活用され、薬剤師の転職やキャリアパスの変動要因を把握し支援策を講じることで、薬剤師の偏在問題の解消に繋がるものと期待される。

公開日・更新日

公開日
2025-01-06
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2025-01-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202321011C

収支報告書

文献番号
202321011Z