あん摩マッサージ指圧施術所の就業実態を把握するための研究

文献情報

文献番号
202321008A
報告書区分
総括
研究課題名
あん摩マッサージ指圧施術所の就業実態を把握するための研究
課題番号
21IA1015
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
谷川 武(順天堂大学 大学院 医学研究科公衆衛生学講座)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
1,211,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律(以下、あはき法)第19条をめぐる議論に必要な、技術・政策的判断に資する基準の作成に寄与する基礎的な知見を得ることを目的としている。
今年度は、全国のあん摩マッサージ指圧、はり、きゅう(以下、あはきと略す)業を営む施術所ならびに出張専門で営む業者(以下、出張専門業者と略す)を対象に実施したWeb調査票の回答データを集計し、あはき師の就業実態の現状等を把握するとともに、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大の影響等について、各設問項目の回答状況を全体、視覚障害の有無別、企業形態、所持免許別に分析を行った。
研究方法
本研究では、厚生労働省から提供を受けた令和5年5月時点の全国のあはき施術所ならびに出張専門業者のデータを基に、個人施術所(7,500件)、法人施術所(1,000件)、出張専門業者(1,500件)の合計10,000件を抽出した。対象者には郵送でアンケートの案内状を送付し、Web形式で回答を得た。調査期間は令和5年9月1日から令和6年3月11日まで実施した。Web調査では、営業状況、性別、年齢、婚姻状況、所持免許の種類、視覚障害の有無、開業年、自身の年収、世帯年収、1ヶ月の患者数、COVID-19の感染拡大前後の来院患者数の変化、施術料金、2019年から2022年までの売り上げ、療養費による施術、経営状況、経営の今後の不安、経営努力、COVID-19に関する支援制度の活用と満足度、補助金等の活用実態について調査した。これらの項目について、全体ならびに視覚障害の有無別に集計し、カテゴリー値はカイ二乗検定を用いて検討した。
結果と考察
10,000通のうち、7,563通が着信し、1,284人(回答率:17.0%)から回答を得た。このうち、営業中と回答し、視覚障害の有無に回答した者は1,003人であった。視覚障害を有する者は98人(9.8%)であった。自身の年収について、視覚障害がない者で「200万円以上、400万円未満」が296人(32.7%)、視覚障害がある者で「200万円未満」の回答が45人(46.4%)と最も多く、視覚障害がある者はない者に比べて自身の年収が有意に低かった(p<0.05)。COVID-19の感染拡大前後の来院患者数の変化について、視覚障害がない者で「かなり減った」が231人(25.6%)、視覚障害がある者で「かなり減った」の回答が44人(45.4%)と最も多く、視覚障害の有無とCOVID-19の感染拡大前後の来院患者数の変化に有意な関連が認められた(p<0.05)。2019年から2022年の売り上げについて、視覚障害がない者において、各年の売り上げの中央値(四分位範囲)は400(100-925)万円、400(120-900)万円、430(175-930)万円、492(200-995)万円であった。同様に、視覚障害のある者では、120(38-300)万円、120(25-300)万円、115(37-300)万円、120(60-320)万円であった。
結論
本調査により、視覚障害のあるあはき師は、視覚障害がないあはき師に比べ、年収が低く、売り上げについては4倍以上の格差がある現状が明らかになった。これは特に、COVID-19の感染拡大以降に広がる傾向があり、視覚障害者のあはき師は非常に厳しい状況に置かれていると考えられる。したがって、あん摩マッサージ指圧師に係る学校又は養成施設を新たに設置する際には、本調査結果を参考とし、慎重な議論の下に検討すべきであると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2024-07-17
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202321008B
報告書区分
総合
研究課題名
あん摩マッサージ指圧施術所の就業実態を把握するための研究
課題番号
21IA1015
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
谷川 武(順天堂大学 大学院 医学研究科公衆衛生学講座)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律(以下、あはき法)第19条をめぐる議論に必要な、技術・政策的判断に資する基準の作成に寄与する基礎的な知見を得ることを目的とした。
研究方法
上記の目的を達成するため、本研究では、まず、視覚障害者のICTの利活用の実態ならびに新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)のあん摩マッサージ指圧、はり、きゅう(以下、あはき)業への影響に関するヒアリング調査を行い、調査票の設問ならびにWeb調査票を作成した(Ⅰ.視覚障害者のあはき師へのヒアリングとWeb調査票の作成)。次に、厚生労働省が所管するあはき業を営む施術所と同業を出張専門で営む業者(以下、出張専門業者)の業者名簿を収集した。収集した業者名簿から調査対象の1万件を抽出するため、都道府県別かつ個人施術所、法人施術所、出張専門業者の企業形態別に全国比率を算出し、層化2段無作為抽出法によって標本を抽出した。そして、抽出した全国のあはき業を営む施術所ならびに出張専門業者を対象にWeb調査を実施した(Ⅱ.案内状送付先台帳の作成とWeb調査票の回収)。さらに、回答データを集計し、営業状況、性別、年齢、婚姻状況、所持免許の種類、視覚障害の有無、開業年、自身の年収、世帯年収、1ヶ月の患者数、COVID-19の感染拡大前後の来院患者数の変化、施術料金、2019年から2022年までの売り上げ、療養費による施術、経営状況、経営の今後の不安、経営努力、COVID-19に関する支援制度の活用と満足度、補助金等の活用実態について調査した。これらの項目について、全体ならびに視覚障害の有無別、企業形態別、所持免許別に集計し、カテゴリー値はカイ二乗検定を用いて検討した(Ⅲ.Web調査票の分析)。
結果と考察
送付した10,000件のうち、7,563通が着信し(着信率75.6%)、2,437通が宛先人不明等の理由で返送された。そのうち、最終的に個人施術所965件、法人施術所112件、出張専門業者207件の合計1,284件より回答を得た(回収率17.0%)。このうち、営業中と回答し、視覚障害の有無に回答した者は1,003人であった。視覚障害を有する者は98人(9.8%)であった。自身の年収について、視覚障害がない者で「200万円以上、400万円未満」が296人(32.7%)、視覚障害がある者で「200万円未満」の回答が45人(46.4%)と最も多く、視覚障害がある者はない者に比べて自身の年収が有意に低かった(p<0.05)。COVID-19の感染拡大前後の来院患者数の変化について、視覚障害がない者で「かなり減った」が231人(25.6%)、視覚障害がある者で「かなり減った」の回答が44人(45.4%)と最も多く、視覚障害の有無とCOVID-19の感染拡大前後の来院患者数の変化に有意な差が認められた(p<0.05)。2019年から2022年の売り上げについて、視覚障害がない者において、各年の売り上げの中央値(四分位範囲)は400(100-925)万円、400(120-900)万円、430(175-930)万円、492(200-995)万円であった。同様に、視覚障害のある者では、120(38-300)万円、120(25-300)万円、115(37-300)万円、120(60-320)万円であった。
結論
本調査により、視覚障害のあるあはき師は、視覚障害がないあはき師に比べ、年収が低く、売り上げについては4倍以上の格差がある現状が明らかになった。これは特に、COVID-19の感染拡大以降に広がる傾向があり、視覚障害者のあるあはき師は非常に厳しい状況に置かれていると考えられる。したがって、あん摩マッサージ指圧師に係る学校又は養成施設を新たに設置する際には、本調査結果を参考とし、慎重な議論の下に検討すべきであると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2024-07-17
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202321008C

成果

専門的・学術的観点からの成果
視覚障害のあるあはき師は、視覚障害がないあはき師に比べ、年収が低く、売り上げについては4倍以上の格差がある現状が明らかになった。これは特に、COVID-19の感染拡大以降に広がる傾向があり、視覚障害者のあはき師は非常に厳しい状況に置かれていると考えられた。本研究で得られた成果は、日本公衆衛生学会、全日本鍼灸学会等の関連学会において発表ならびに論文投稿をする予定である。
臨床的観点からの成果
該当なし
ガイドライン等の開発
該当なし
その他行政的観点からの成果
本研究は、今般の社会状況を踏まえた視覚障害者ならびに晴眼者のあん摩マッサージ指圧師の生計の実態を詳細に把握したものであり、あん摩マッサージ指圧師に係わる学校または養成施設における定員の増員や設置申請等があった場合に、その可否を審査する際の基礎資料となることが期待される。また、本研究はCOVID-19があはき業に与えた影響についても明らかにしたものであり、今後のポストコロナ社会における視覚障害者ならびに晴眼者のあはき業に対する支援策を検討する上でも重要な基礎資料となることが期待される。
その他のインパクト
該当なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2024-06-25
更新日
-

収支報告書

文献番号
202321008Z