文献情報
文献番号
202321005A
報告書区分
総括
研究課題名
第8次医療計画に向けた周産期センターの集約化・重点化と周産期医療を担当する医師の確保・専門教育に関する研究
課題番号
21IA1011
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
池田 智明(国立大学法人三重大学 医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
1,736,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
第8次医療計画策定に向けて、周産期医療の改善や体制の構築に関する重要な情報を提供することを目的としている。研究目的は以下の3点に焦点を当てた。
1. 周産期医療施設の集約化・重点化の必要性
2.周産期医療を担う人材育成と周産期専門医の位置づけの向上
3.一次施設と周産期母子医療センターの有機的な連携
1. 周産期医療施設の集約化・重点化の必要性
2.周産期医療を担う人材育成と周産期専門医の位置づけの向上
3.一次施設と周産期母子医療センターの有機的な連携
研究方法
日本周産期・新生児医学会の5年間の専門医研修施設診療実績報告から、総合周産期母子医療センターを基準とした地域周産期母子医療センターの診療実績スコアを作成した。さらに、産婦人科医師数や専門医数、周産期専門医の数などの医療人材に関する情報を収集し、産科人材スコアも作成した。
周産期母子医療センターの機能的集約に関しては、診療実績スコアや医療人材スコア、分娩数、新生児搬送距離、許可NICU病床数などを考慮し、ArcGISProとMANDARAソフトウェアを使用して全国の周産期母子医療センターがマッピングし、地域性を考慮した地図を作成した。また、全国DPCデータ2020年版の妊娠期間短縮、低出産体重に関連する障害(140010)に焦点を当て、全国の病院での医療圏毎の寄与度を評価し、各都道府県の周産期医療体制のパターン分類を行った。
さらに、周産期医療から小児医療へのスムーズな連携に関する研究では、埼玉医科大学総合医療センターでの入院加療を受けた患児の診療体制や病態、転帰、小児医療への連携の課題を検討した。また、NICU退院後の在宅医療やPICUでの診療を受けた患者の推移や病態も調査した。新型コロナウイルス感染症の影響を受ける前後での在宅医療患者の医療支援入院(介護者を休ませるための入院)の状況も調査した。
周産期母子医療センターの機能的集約に関しては、診療実績スコアや医療人材スコア、分娩数、新生児搬送距離、許可NICU病床数などを考慮し、ArcGISProとMANDARAソフトウェアを使用して全国の周産期母子医療センターがマッピングし、地域性を考慮した地図を作成した。また、全国DPCデータ2020年版の妊娠期間短縮、低出産体重に関連する障害(140010)に焦点を当て、全国の病院での医療圏毎の寄与度を評価し、各都道府県の周産期医療体制のパターン分類を行った。
さらに、周産期医療から小児医療へのスムーズな連携に関する研究では、埼玉医科大学総合医療センターでの入院加療を受けた患児の診療体制や病態、転帰、小児医療への連携の課題を検討した。また、NICU退院後の在宅医療やPICUでの診療を受けた患者の推移や病態も調査した。新型コロナウイルス感染症の影響を受ける前後での在宅医療患者の医療支援入院(介護者を休ませるための入院)の状況も調査した。
結果と考察
地域周産期母子医療センターの診療実績および産科人材は、総合周産期母子医療センターの約半分であった。また、診療実績スコアと産科人材スコアについて、有意な相関が見られた。周産期専門医(母体・胎児)が2人以上いる地域周産期母子医療センターの診療実績スコアの平均値は、1人以下の施設より高かったことから、周産期専門医の養成および各施設への適切な配置が重要と考えられた。当直体制についての調査では、総合周産期母子医療センター産科65%、新生児科48%、地域周産期母子医療センター産科84%、新生児科77%が変形時間労働制を選択していなかった。宿日直許可を総合周産期母子医療センターの産科60%、新生児科60%、地域周産期センター産科84%、新生児科73%が申請したもしくはする予定としていた。働き方改革に向けて、新生児科の現状の勤務形態と乖離する結果であり、周産期母子医療センターの集約化の重要性が改めて浮き彫りになった。
地理的観点による検討では、NICU6床以上または診療実績、産科人材スコア合計平均以上の条件を満たす地域周産期母子医療センターは181/298施設だった。全国の主要分娩施設は、北海道、岐阜、京都の一部地域、離島を除き、総合周産期母子医療センターならびに条件を満たす地域周産期母子医療センターから新生児搬送救急車60分以内でカバーできていた。また、全国DPCデータ2020年版から医療圏あたりの病院毎の寄与度を算出した。各都道府県の周産期医療体制を4つのパターン(都市集中型、都市分散型、地方集中型、地方分散型)に分類した。今後は、各々の都道府県、地域の実態に沿った方策を策定するために各都道府県、地域の個別での聞き取り調査が必要である。
また、重症新生児の救命例は年々増加傾向にあり、超早産児の長期入院が増えていたが、小児病棟へ移せた患児は6名に過ぎず、転棟を妨げている要因の一つは、新生児病床と小児病床の診療報酬の差にあると考えられ、インセンティブをつける診療報酬の改定が望まれる。NICU出身の小児在宅医療患者の数が近年ほぼ一定になっている一方で、在宅人工呼吸患者やPICUへ入院する在宅医療患者は漸増していた。「在宅医療支援入院」を在宅医療の重要な一環であると位置づけることや「退院支援加算」を、算定要件を多少変えて「退院・転院・転棟加算」にするなどを実現し、周産期医療と小児医療、そして成人医療とのスムースな連携を図っていくことが重要である。
地理的観点による検討では、NICU6床以上または診療実績、産科人材スコア合計平均以上の条件を満たす地域周産期母子医療センターは181/298施設だった。全国の主要分娩施設は、北海道、岐阜、京都の一部地域、離島を除き、総合周産期母子医療センターならびに条件を満たす地域周産期母子医療センターから新生児搬送救急車60分以内でカバーできていた。また、全国DPCデータ2020年版から医療圏あたりの病院毎の寄与度を算出した。各都道府県の周産期医療体制を4つのパターン(都市集中型、都市分散型、地方集中型、地方分散型)に分類した。今後は、各々の都道府県、地域の実態に沿った方策を策定するために各都道府県、地域の個別での聞き取り調査が必要である。
また、重症新生児の救命例は年々増加傾向にあり、超早産児の長期入院が増えていたが、小児病棟へ移せた患児は6名に過ぎず、転棟を妨げている要因の一つは、新生児病床と小児病床の診療報酬の差にあると考えられ、インセンティブをつける診療報酬の改定が望まれる。NICU出身の小児在宅医療患者の数が近年ほぼ一定になっている一方で、在宅人工呼吸患者やPICUへ入院する在宅医療患者は漸増していた。「在宅医療支援入院」を在宅医療の重要な一環であると位置づけることや「退院支援加算」を、算定要件を多少変えて「退院・転院・転棟加算」にするなどを実現し、周産期医療と小児医療、そして成人医療とのスムースな連携を図っていくことが重要である。
結論
診療実績および周産科人材スコアは周産期母子医療センターの集約化を行う際の指標として有用である。また、周産期専門医の重要性が示唆された。働き方改革にむけて大半の周産期母子医療センターが、宿日直許可で対応しようとしており、周産期母子医療センターの集約化が改めて重要であると考えられた。集約化に向けて、地理的観点だけでなく、医療圏での寄与度を加味した多角的な観点および地域の実情に沿った指標が必要である。
また、新生児病床を有効に利用するという観点から、長期入院患児を小児病棟へ移すことを考慮すべきである。PICUでの診療を要する事態も増えており、「在宅医療支援入院」「退院・転院・転棟加算」による重篤な小児在宅医療患者・家族への、より手厚い診療・ケアの体制を構築することが望まれる。
また、新生児病床を有効に利用するという観点から、長期入院患児を小児病棟へ移すことを考慮すべきである。PICUでの診療を要する事態も増えており、「在宅医療支援入院」「退院・転院・転棟加算」による重篤な小児在宅医療患者・家族への、より手厚い診療・ケアの体制を構築することが望まれる。
公開日・更新日
公開日
2024-05-31
更新日
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