文献情報
文献番号
202321003A
報告書区分
総括
研究課題名
地域の実情に応じた医療提供体制の構築を推進するための政策研究
課題番号
21IA1006
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
今村 知明(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
研究分担者(所属機関)
- 松田 晋哉(産業医科大学 医学部・公衆衛生学)
- 藤森 研司(東北大学 大学院医学系研究科 公共健康医学講座医療管理学分野)
- 伏見 清秀(国立大学法人 東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 医療政策情報学)
- 石川 ベンジャミン光一(学校法人 国際医療福祉大学 大学院医学研究科 赤坂心理・医療福祉マネジメント学部 医療マネジメント学科)
- 瀬戸 僚馬(東京医療保健大学 医療保健学部 医療情報学科)
- 小林 美亜(山梨大学大学院 総合研究部 医学域 病院経営管理部)
- 野田 龍也(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
- 小林 大介(国立大学法人富山大学 附属病院 地域医療総合支援学講座)
- 佐藤 大介(藤田医科大学 大学院医学研究科)
- 吉村 健佑(国立大学法人千葉大学 医学部附属病院)
- 赤羽 学(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部)
- 西岡 祐一(奈良県立医科大学 公衆衛生学講座)
- 佐藤 拓也(東京大学医学部附属病院 救急・集中治療科)
- 明神 大也(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
22,254,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
令和6年度からの第8次医療計画の策定に向け、地域医療構想による病床の機能分化・連携、在宅医療・介護連携の推進をはじめとした医療計画の課題を抽出し、国の施策の検討に資する研究を行う。都道府県が実施した医療計画の中間見直し、新型コロナウイルス感染症等の新興感染症の動向や将来の医療受給の予測を踏まえ、PDCAサイクルを回せるしくみづくりや技術的な助言、医師偏在対策や医師確保計画、医療や介護との連携等について課題を整理した上で、NDBやDPC等のデータ分析を活用しつつ、技術的な助言を行う事を目的とする。
研究方法
医療計画班、感染症企画班、大規模データ班、地域実情分析班、実地検証班の5つの分担班に分けて研究を進め、班会議を2回開催し研究の進捗状況の管理・調整を行いつつ進めた。
結果と考察
医療計画班
2023推計人口に基づく全国将来患者数推計では、入院は2030年、外来は2025年を頂点として減少局面に入り、特に外来は2030年以降急激に減少する結果となった。都道府県別外来患者数は多くの都道府県で2020年にピークアウトしており、2045年には40都道府県が減少する結果となった。
2023推計人口では患者数減少速度が減速しているものの、わが国の人口が減少していることは純然たる事実である。限られた資源を有効活用すべく、国と都道府県には医療政策の適切な施行が求められる。
感染症企画班
予防計画の指標は、定義や数値取得の仕組みが明確だが、医療計画独自の指標はその定義に議論の余地があり、また都道府県が独自で数値取得のための調査を行う負担が大きいこともあり医療計画独自の指標は採用されていなかった。来年度以降は都道府県の医療計画について全体的なレビューを行い、感染症対応に係る医療計画を概観したうえで、医療計画と予防計画を連動させながら、感染拡大時に通常医療を含む都道府県全体の医療をどう回していくかを念頭に見直しを行っていく必要がある。
大規模データ班
今回の推計では国外からの入国超過が大きく推計に組み込まれており、これにより1都3県および大阪府・愛知県の推計が大きく膨らむ形となっていた。また、高齢者及び40歳以上の年齢層については前回の推計から大きな乖離が認められない一方で、40歳未満、特に若年層(0-14歳)では県庁所在地以外の2次医療圏で人口減少の加速化が進むことが示されていた。
今回の人口推計では年間16.4万人に及ぶ外国からの入国超過が長期的に維持されるものと仮定されている。この仮定が将来的に正しいものであるか否かという問題もあるが、各地域では住民基本台帳人口など人口の変化を迅速に把握できる資料を利用して、将来推計人口による需要予測を補うことが重要である。
地域実情分析班1
まちづくりの視点を含む地域医療構想における市町村の役割について、3つのカテゴリーと9つのサブカテゴリーが抽出された。市町村は住民の医療アクセス状況等を把握しているものの二次医療圏と生活圏域が一致しないという問題があった。新たな地域医療構想の策定時には、都道府県からの一方向的な政策や制度の情報提供のみではなく、地域医療構想調整会議のような場を十分に活用して、市町村との双方向的な議論が求められる。
地域実情分析班2
日本へルスケアネット、済生会熊本病院を対象とし、インタビュー調査を行った。医療と介護の連携を推進するためには、医療と介護の連携に必要となる具体的な方策を確立し運用していくことが重要となる。特に、医療と介護が対等な立場でコミュニケーションをとることにより、医療と介護の連携が円滑に進み、医療と介護を適切に組み合わせたケアマネジメントにつながる。
医療と介護の円滑な連携により地域全体の医療の質の向上に貢献することが明らかとなった。
実地検証班1
奈良県の在宅医療の提供体制を定量的に分析した結果、日常の療養支援を中心に「カテゴリーⅡ」と「カテゴリーⅢ」で提供されていた。施設入居時と在宅時の比較では、施設入居時の医学総合管理を受ける訪問診療が在宅時よりも多く、看取りを含む医療ニーズが高まっていることが示された。地域差については、奈良医療圏では施設入居時のカテゴリーⅢの増加が止まっている一方、南和医療圏では在宅医療の提供量が増加し、特にカテゴリーⅣの看取りが急増していた。
実地検証班2
1患者1データ化処理を行った奈良県KDBデータを用いて、Z-Adamを用いた診療行為別の点数を医療機関単位で集計するための手順を確立し、マニュアルを作成した。従来のシステムで実施できていたことが、Z-Adamでほぼ可能となった。
2023推計人口に基づく全国将来患者数推計では、入院は2030年、外来は2025年を頂点として減少局面に入り、特に外来は2030年以降急激に減少する結果となった。都道府県別外来患者数は多くの都道府県で2020年にピークアウトしており、2045年には40都道府県が減少する結果となった。
2023推計人口では患者数減少速度が減速しているものの、わが国の人口が減少していることは純然たる事実である。限られた資源を有効活用すべく、国と都道府県には医療政策の適切な施行が求められる。
感染症企画班
予防計画の指標は、定義や数値取得の仕組みが明確だが、医療計画独自の指標はその定義に議論の余地があり、また都道府県が独自で数値取得のための調査を行う負担が大きいこともあり医療計画独自の指標は採用されていなかった。来年度以降は都道府県の医療計画について全体的なレビューを行い、感染症対応に係る医療計画を概観したうえで、医療計画と予防計画を連動させながら、感染拡大時に通常医療を含む都道府県全体の医療をどう回していくかを念頭に見直しを行っていく必要がある。
大規模データ班
今回の推計では国外からの入国超過が大きく推計に組み込まれており、これにより1都3県および大阪府・愛知県の推計が大きく膨らむ形となっていた。また、高齢者及び40歳以上の年齢層については前回の推計から大きな乖離が認められない一方で、40歳未満、特に若年層(0-14歳)では県庁所在地以外の2次医療圏で人口減少の加速化が進むことが示されていた。
今回の人口推計では年間16.4万人に及ぶ外国からの入国超過が長期的に維持されるものと仮定されている。この仮定が将来的に正しいものであるか否かという問題もあるが、各地域では住民基本台帳人口など人口の変化を迅速に把握できる資料を利用して、将来推計人口による需要予測を補うことが重要である。
地域実情分析班1
まちづくりの視点を含む地域医療構想における市町村の役割について、3つのカテゴリーと9つのサブカテゴリーが抽出された。市町村は住民の医療アクセス状況等を把握しているものの二次医療圏と生活圏域が一致しないという問題があった。新たな地域医療構想の策定時には、都道府県からの一方向的な政策や制度の情報提供のみではなく、地域医療構想調整会議のような場を十分に活用して、市町村との双方向的な議論が求められる。
地域実情分析班2
日本へルスケアネット、済生会熊本病院を対象とし、インタビュー調査を行った。医療と介護の連携を推進するためには、医療と介護の連携に必要となる具体的な方策を確立し運用していくことが重要となる。特に、医療と介護が対等な立場でコミュニケーションをとることにより、医療と介護の連携が円滑に進み、医療と介護を適切に組み合わせたケアマネジメントにつながる。
医療と介護の円滑な連携により地域全体の医療の質の向上に貢献することが明らかとなった。
実地検証班1
奈良県の在宅医療の提供体制を定量的に分析した結果、日常の療養支援を中心に「カテゴリーⅡ」と「カテゴリーⅢ」で提供されていた。施設入居時と在宅時の比較では、施設入居時の医学総合管理を受ける訪問診療が在宅時よりも多く、看取りを含む医療ニーズが高まっていることが示された。地域差については、奈良医療圏では施設入居時のカテゴリーⅢの増加が止まっている一方、南和医療圏では在宅医療の提供量が増加し、特にカテゴリーⅣの看取りが急増していた。
実地検証班2
1患者1データ化処理を行った奈良県KDBデータを用いて、Z-Adamを用いた診療行為別の点数を医療機関単位で集計するための手順を確立し、マニュアルを作成した。従来のシステムで実施できていたことが、Z-Adamでほぼ可能となった。
結論
本研究の成果は、各都道府県が次年度より策定する医療計画や地域医療構想の実務的な資料として機能することが期待され、わが国の5疾病6事業の推進や評価および病床機能の分化・連携や病床の効率的な利用に資する成果であると考えられる。
公開日・更新日
公開日
2024-06-07
更新日
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