プリオン病に対する診断・治療技術開発に関する研究

文献情報

文献番号
200936005A
報告書区分
総括
研究課題名
プリオン病に対する診断・治療技術開発に関する研究
課題番号
H19-難治・一般-006
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
堂浦 克美(東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 坪井 義夫(福岡大学 医学部)
  • 佐藤 克也(長崎大学 医学部)
  • 片岡 泰文(福岡大学 薬学部)
  • 佐々木 健介(九州大学 大学院医学研究院)
  • 工藤 幸司(東北大学 未来医工学治療開発センター)
  • 堀内 基広(北海道大学 大学院獣医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
29,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
多数の後天性プリオン病の発生や発病リスク保因者の存在を背景に、実効性のある予防治療法が求められており、患者やリスク保因者に成果を直に還元できる治療診断技術の開発を行った。
研究方法
①現行の治療手段の改善と新たな治療手段の検討、②新規治療候補薬の実用化準備と新規治療開発、③新規診断技術の評価と次世代診断技術の開発を行った。具体的には、①ではPPS脳室内持続投与法の有効性や安全性に影響する宿主要因の分析、治療効果判定のための蛋白生化学的な定量的解析とその妥当性評価を行った。②では、優れた治療予防薬候補である糖誘導体の安全性試験・動態試験、抗プリオン活性を発揮する各種アミロイド親和性化合物の特徴解析、抗プリオン活性を発揮する生薬の薬効成分解析、治療薬開発の新たな標的因子の探索、プリオン蛋白異常化とシャペロン分子の関係解析、プリオン蛋白siRNA の最適化、幹細胞移植療法の作用機序解析を実施した。③では[11C]BF-227によるPETの探索的臨床研究、近赤外線蛍光プローブの最適化研究、髄液を用いた診断技術の開発を行った。
結果と考察
研究成果として、①では、PPS療法の副作用である硬膜下水腫が生じる時期や脳委縮との関係を明らかにした。また、PPS治療例で観察されたプリオン蛋白オリゴマー形成抑制が、PPSの治療効果を反映していることをex vivo系実験で確認した。②では、糖誘導体の安全性が確認できた。また、糖誘導体の治療効果発現と密接に関係する組織所見を発見した。さらに、優れた抗プリオン活性を持つシンナミック酸誘導体を発見し、新たな創薬標的候補としてLRP1と細胞外マトリックス関連因子を発見した。また、骨髄由来間葉系幹細胞の脳内移行メカニズムを明らかにし、同細胞のプリオン病罹患動物における治療効果について神経保護因子の関与を示した。③では、 [11C]BF-227PETのGSS患者における有用性を改めて確認するとともに、近赤外線蛍光プローブとして新たな基本化学構造を持つTHK-8XYを発見した。また、鑑別診断マーカーとしてMMP-9/TIMP-1比の値の有用性を発見し、プリオン病診断に役立つ高感度・高特異度な14-3‐3蛋白検出ELISAキットの作製に成功した。
結論
最終年度として3年間を締めくくる実用的な成果や学術的に優れた成果が多数得られ、各研究項目の当初目標を6-10割達成することができた。

公開日・更新日

公開日
2010-05-20
更新日
-

文献情報

文献番号
200936005B
報告書区分
総合
研究課題名
プリオン病に対する診断・治療技術開発に関する研究
課題番号
H19-難治・一般-006
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
堂浦 克美(東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 片岡 泰文(福岡大学 薬学部)
  • 工藤 幸司(東北大学 未来医工学治療開発センター)
  • 坪井 義夫(福岡大学 医学部 )
  • 志賀 裕正(宮城病院)
  • 佐々木 健介(九州大学 大学院医学研究院)
  • 長谷部 理絵(北海道大学 大学院獣医学研究科)
  • 堀内 基広(北海道大学 大学院獣医学研究科)
  • 佐藤 克也(長崎大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
多数の後天性プリオン病の発生や発病リスク保因者の存在を背景に、実効性のある予防治療法が求められており、患者やリスク保因者に成果を直に還元できる治療診断技術の開発を行った。
研究方法
①現行の治療手段の改善と新たな治療手段の検討、②新規治療候補薬の実用化準備と新規治療開発、③新規診断技術の評価と次世代診断技術の開発を行った。具体的には、①では現行のPPS脳室内持続投与法の有効性や安全性に関する分析、同法の治療効果判定のための病理生化学的解析とその妥当性を評価した。また、新たな治療手段として抗プリオン活性を持つ臨床薬2剤の有効性と安全性を評価した。②では、優れた治療予防薬候補である糖誘導体の安全性試験・動態試験、抗プリオン活性をもつ化合物群の最適化研究や薬効成分解析、治療薬開発の新たな標的因子の探索、先端的治療法(プリオン蛋白siRNA 、抗プリオン蛋白抗体、幹細胞)の開発を行った。③では[11C]BF-227PETの探索的臨床研究、近赤外線蛍光プローブの最適化研究、髄液を用いた診断技術の開発を行った。
結果と考察
研究成果として、①では、PPS療法が有効性を示す症例の特徴や副作用(硬膜下水腫)が生じる要因を明らかにした。また、病理生化学的にPPS治療効果を証明した。臨床薬2剤投与は安全だが無効であることを明らかにした。②では、糖誘導体の一過性毒性所見の存在と長期間の組織滞留を明らかにし、その作用機序解明につながる要因を示した。さらに、優れた抗プリオン活性を持つアミロイド親和性化合物や構造シャペロン化合物や生薬成分を発見し、新たな創薬標的候補として3つの宿主因子を発見した。また、抗プリオン抗体や骨髄由来間葉系幹細胞の末梢投与での有効性とその作用機序を明らかにした。③では、 [11C]BF-227PETのGSS患者における有用性を明らかにするとともに、近赤外線蛍光プローブとしてTHK-265とTHK-8XYを発見した。また、鑑別診断マーカーとしてMMP-9/TIMP-1比の有用性を発見し、プリオン病診断に役立つ高感度・高特異度な14-3‐3蛋白検出ELISAキットの作製に成功した。
結論
プリオン病の治療技術や診断技術において患者やリスク保因者に還元できる実用的な成果や学術的に優れた成果が多数得られ、各研究項目の当初目標を6割から10割達成することができた。

公開日・更新日

公開日
2010-05-20
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200936005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
プリオン蛋白オリゴマーの病態や治療における意義、糖誘導体の驚異的な治療予防効果と実用可能性、抗プリオン活性をもつ新たな化合物群、新たな創薬標的候補群、抗プリオン蛋白抗体や間葉系幹細胞の末梢投与での治療効果、プリオンアミロイドPETの有用性と限界、次世代診断薬としての近赤外線蛍光プローブ、プリオン病患者における脳血液関門機能、などの発見は学術的に優れている。既にいくつかのものは国際誌に掲載されているか掲載が決まっており、残りのものについても投稿中か投稿準備中である。
臨床的観点からの成果
現行の治療手段(PPS療法)の効果と安全性の解析、新規治療予防薬候補(糖誘導体)の安全性の検証、新規診断技術(プリオンアミロイド画像化技術)の評価、次世代画像化診断薬(近赤外線蛍光プローブ)の開発、現行診断法(髄液14-3-3蛋白検査)の改良(高感度化)と商品化、鑑別診断マーカー(MMP-9/TIMP-1比)の開発、などの研究内容の成果は、患者や発病リスク保因者の治療や診断に直結するものであり、近い将来に臨床の現場に還元されることが期待できるものである。
ガイドライン等の開発
『プリオン病感染予防ガイドライン(2008年版)』作成に協力して、本研究班の研究成果の一部である「医療従事者・研究者の針刺し等事故時の処置に関する考察」という内容をガイドラインに盛り込んだ。これは、医療従事者あるいは研究者に対して、その医療行為や実験中に針刺し等事故を起こした際の発症予防のための処置方法等を具体的に示したものである。
その他行政的観点からの成果
多数の後天性プリオン病の発生や発病リスク保因者の存在を背景に、本研究班でなされた治療技術や診断技術の開発研究で得られた成果は患者や発病リスク保因者に直に還元できるものであり、難治性疾患克服行政に貢献する。「臨床的観点からの成果」で記した内容は、実用的な研究成果として国民から見やすいものである一方、「学術的な観点からの成果」で記した内容には長期的な視点に立って育成していくことが必要なものも含まれるが、いずれの研究成果も患者や発病リスク保因者に恩恵を与えるものである。
その他のインパクト
本研究班では、他のプリオン研究グループと協力して毎年「食と医療の安全に関わるプリオン病の市民講座」を開催して情報発信を行い、積極的にホームページで研究成果を公開するなど、研究成果が効率良く社会に還元されるよう努めてきた。また、難治性疾患克服研究事業「プリオン病及び遅発性ウイルス感染症に関する調査研究」班やヒトゲノム・再生医療等研究推進事業「プリオン病関連遺伝子の構造・機能に基づく治療法の開発」班と合同で班会議を開催して本研究班の研究成果が効率的に他のプリオン研究者にも利用できるよう配慮した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
36件
その他論文(和文)
22件
その他論文(英文等)
5件
学会発表(国内学会)
67件
学会発表(国際学会等)
40件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計11件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
その他成果(普及・啓発活動)
6件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kimura T, Ishikawa K, Sakasegawa Y, et al.
GABAA receptor subunit beta1 is involved in the formation of protease-resistant prion protein in prion-infected neuroblastoma cells.
FEBS Lett. , 584 (6) , 1193-1198  (2010)
原著論文2
Okamura N, Shiga Y, Furumoto S, et al.
In vivo detection of prion amyloid plaques using [(11)C]BF-227 PET.
Eur J Nucl Med Mol Imaging. , 37 (5) , 934-941  (2010)
原著論文3
Terada T, Tsuboi Y, Obi T, et al.
Less protease-resistant PrP in a patient with sporadic CJD treated with intraventricular pentosan polysulphate.
Acta Neurol Scand. , 121 (2) , 127-130  (2010)
原著論文4
Satoh K, et al.
Establishment of a standard 14-3-3 protein assay of the cerebrospinal fluid as a diagnostic tool for Creutzfeldt-Jakob disease.
Lab Invest.  (2010)
原著論文5
Tsuboi Y, Doh-Ura K, Yamada T.
Continuous intraventricular infusion of pentosan polysulfate: clinical trial against prion diseases.
Neuropathology. , 29 (5) , 632-636  (2009)
原著論文6
Minaki H, Sasaki K, Honda H, et al.
Prion protein oligomers in Creutzfeldt-Jakob disease detected by gel-filtration centrifuge columns.
Neuropathology. , 29 (5) , 536-542  (2009)
原著論文7
Sasaki K, Minaki H, Iwaki T.
Development of oligomeric prion-protein aggregates in a mouse model of prion disease.
J Pathol. , 219 (1) , 123-130  (2009)
原著論文8
Shindoh R, Kim C-L, Song C-H, et al.
The region approximately between amino acids 81 and 137 of proteinase K-resistant PrPSc is critical for the infectivity of the Chandler prion strain.
J Virol. , 83 , 3852-3860  (2009)
原著論文9
Song C-H, Honmou O, Nakamura K, et al.
Effect of transplantation of immortalized human bone marrow-derived mesenchymal stem cells on mice infected with prions.
J Virol. , 83 , 5918-5927  (2009)
原著論文10
Horiuchi M, Karino A, Furuoka H, et al.
Generation of monoclonal antibody that distinguishes PrPSc from PrPC and neutralizes prion infectivity.
Virology. , 394 , 200-207  (2009)
原著論文11
Nakamitsu S, Kurokawa A, Yamasaki T, et al.
Cell-density dependent increase of the amount of protease-resistant PrP in prion-infected Neuro2a mouse neuroblastoma cells.
J Gen Virol. , 91 , 563-569  (2009)
原著論文12
Mutsukura K, Satoh K, Shirabe S, et al.
Familial Creutzfeldt-Jakob disease with the V180I mutation: comparative analysis with pathological findings and diffusion-weighted images.
Dement Geriatr Cogn Disord. , 28 (6) , 550-557  (2009)
原著論文13
Nguyen TH, Lee CY, Teruya K, et al.
Antiprion activity of functionalized 9-aminoacridines related to quinacrine.
Bioorg Med Chem. , 16 (14) , 6737-6746  (2008)
原著論文14
Song C-H, Furuoka H, Kim C-L, et al.
Effect of intraventricular infusion of anti-prion protein monoclonal antibodies on disease progression in prion-infected mice.
J Gen Virol. , 89 , 1533-1544  (2008)
原著論文15
Takakura Y, Yamaguchi N, Nakagaki T, et al.
Bone marrow stroma cells are susceptible to prion infection.
Biochem Biophys Res Commun. , 377 , 957-961  (2008)
原著論文16
Shiga Y, Satoh K, Kitamoto T, et al.
Two different clinical phenotypes of Creutzfeldt-Jakob disease with a M232R substitution.
J. Neurol. , 254 , 1509-1517  (2007)
原著論文17
Kawasaki Y, Kawagoe K, Chen CJ, et al.
Orally administered amyloidophilic compound is effective in prolonging the incubation periods of animals cerebrally infected with prion diseases in a prion strain-dependent manner.
J. Virol. , 81 (23) , 12889-12898  (2007)
原著論文18
Doh-Ura K, Kuge T, Uomoto M, et al.
Prophylactic effect of dietary seaweed Fucoidan against enteral prion infection.
Antimicrob. Agents Chemother. , 51 (6) , 2274-2277  (2007)
原著論文19
Doh-ura K, Tamura K, Karube Y, et al.
Chelating compound, chrysoidine, is more effective in both antiprion activity and brain endothelial permeability than quinacrine.
Cell. Mol. Neurobiol. , 27 (3) , 303-316  (2007)
原著論文20
Kuwata K, Nishida N, Matsumoto T, et al.
Hot spots in prion protein for pathogenic conversion.
Proc Natl Acad Sci U S A. , 104 , 11921-11926  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-