人口動態や地域の実情に対応するへき地医療の推進を図るための研究

文献情報

文献番号
202321001A
報告書区分
総括
研究課題名
人口動態や地域の実情に対応するへき地医療の推進を図るための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
21IA1004
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
小谷 和彦(自治医科大学 地域医療学センター)
研究分担者(所属機関)
  • 前田 隆浩(長崎大学保健・医療推進センター)
  • 井口 清太郎(新潟大学大学院 医歯学総合研究科 総合地域医療学講座)
  • 小池 創一(自治医科大学 地域医療学センター地域医療政策部門)
  • 松本 正俊(広島大学医学部)
  • 春山 早苗(自治医科大学 看護学部)
  • 村上 礼子(自治医科大学 看護学部)
  • 佐藤 栄治(宇都宮大学 地域デザイン科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
3,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
へき地の実情に対応する医療提供体制の推進に向けて以下のテーマに取り組んだ:(1)へき地の医療提供体制関連事項、(2)へき地医療機関での情報通信技術(ICT)の利活用、(3)医療計画におけるへき地での看護に係る特定行為の策定状況。
研究方法
(1)①国勢調査、医療施設静態調査等の統計情報と地理情報システムを用い、都道府県別の医療アクセシビリティの特性を観察した。医療施設との距離や、30分で医療施設に到達しない30分圏外人口の推計量と無医地区数との相関性を分析した。②5つのへき地医療機関の受診者(734人)に対して、同機関に必要と思う専門診療科について質問紙で調査した。(2)①全国のへき地医療拠点病院(334病院)とへき地診療所(1,006診療所;離島に所在する212診療所、離島以外の794診療所)を対象にした質問紙調査(2021年度)の自由記載をもとに、オンライン診療の長短所を整理した。また、へき地診療所の所在を離島と非離島とに分け、遠隔医療(オンライン診療を含む)の実施状況を分析した。②ICT、特にオンライン診療を導入している9施設に対してその促進要因と阻害要因のインタビュー調査(2022年度)をもとに、その詳記を行うとともに、得られたカテゴリに関してエビデンスを実践に移す領域を示したフレームワークへの適合性を観察した。(3)第8次医療計画における看護に係る特定行為に関する策定状況、特に計画立案に活用した情報、取り組み、課題等について、各都道府県に質問紙で調査した。
結果と考察
(1)①医療アクセシビリティにおける距離構造に都道府県差が認められた。大都市圏以外においてアクセシビリティが困難になる様相が示された.距離ならびに30分圏外人口と無医地区数との間に正相関がみられた.都道府県の医療アクセシビリティはへき地医療の提供とも関連すると考えられた。②464人(回収率:63%)から回答を得た。必要と思う専門診療科は、上位から「整形外科」「循環器科」「眼科」「耳鼻咽喉科」「消化器科」の順であった。これらはへき地医療設定で好発する疾患に対処したり、比較的専門的な処置等を行ったりする診療科と考えられた。(2)①オンライン診療の長所は、へき地医療拠点病院(有効回答数7)では「患者の移動負担の軽減」、へき地診療所(有効回答数35)では「医師が診療所を離れている時でも診療ができること」が最多であった。短所としては、へき地医療拠点病院では「診療報酬上の制約」、へき地診療所では「ハード面の整備の必要性」が最多であった。また、離島群の診療所のほうが非離島群よりも、遠隔医療やオンライン診療を多く利活用していた。離島群のほうが自治体からの支援を受けていた。②オンライン診療導入の「促進要因」として<人材育成>、<インセンティブ>、<運用規則・ガイドラインの整備>、<誰もが使いやすいシステム作り>、<地域ぐるみの連携>、<現場の苦手意識の克服>、<行政の相談窓口>、<住民の理解>、<コンサルタント起用>、<トラブル対応要員の整備>のカテゴリ、「阻害要因」として<予算の問題>、<人的問題>、<運用上の問題>のカテゴリが抽出された上で、各カテゴリの語りを詳記するとともに、カテゴリはフレームの6領域に概ね当てはまることを確認した。<運用上の問題><人材教育><インセンティブ><住民の理解><コンサルタント起用>は複数の領域に当てはまった。ただし、<誰もが使いやすいシステム作り>はいずれの領域にも当てはまらなかった。これらを通じて、へき地での遠隔医療やオンライン診療は患者側、医師側に有用で、その導入にはハード面、報酬、自治体の支援、人材等が鍵になることが示された。(3)30都道府県から回答を得られた。特定行為研修に関する計画立案のための情報としては研修修了者数や指定研修機関数が最も使われていた。地域医療介護総合確保基金による計画の多くは受講料等の費用負担であった。課題として、研修の普及と研修修了者の活動支援が見出された。現状では、へき地医療機関に限定した情報の使用や活動支援の計画はみられなかった。
結論
いずれも、へき地医療計画に寄与すると考えられる所見である。(1)①へき地医療において、へき地に特出した計画とともに、都道府県の実相と併せての医療提供の整備も必要である。②へき地医療機関で必要な専門診療科の列挙は、専門診療科の設置や専門医派遣、またへき地医療の診療機能や社会医療法人の検討等に関する資料に繋がり得る。(2)①②へき地医療での遠隔診療やオンライン診療の整備は重要と考えられているが、その導入にはいくつかの鍵があると思われる。(3)へき地医療での特定行為の意義は議論されてきたところであるが、へき地医療に限った策定にはさらに検討を要する。

公開日・更新日

公開日
2024-06-19
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2024-06-19
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202321001B
報告書区分
総合
研究課題名
人口動態や地域の実情に対応するへき地医療の推進を図るための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
21IA1004
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
小谷 和彦(自治医科大学 地域医療学センター)
研究分担者(所属機関)
  • 前田 隆浩(長崎大学保健・医療推進センター)
  • 井口 清太郎(新潟大学大学院 医歯学総合研究科 総合地域医療学講座)
  • 小池 創一(自治医科大学 地域医療学センター地域医療政策部門)
  • 松本 正俊(広島大学医学部)
  • 春山 早苗(自治医科大学 看護学部)
  • 村上 礼子(自治医科大学 看護学部)
  • 佐藤 栄治(宇都宮大学 地域デザイン科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国のへき地医療は医療計画の事業の一角を占める。本研究では次のテーマに取り組んだ:(1)へき地の医療提供体制関連事項、(2)へき地医療での情報通信技術(ICT)の利活用、(3)へき地医療での看護の実践や特定行為、(4)トピック論文の情報整理。
研究方法
(1)①無医地区・準無医地区の設定;統計情報と地理情報システムを用い、都道府県別に、99.9%の人口をカバーする時間距離を算出した。これに対して、各都道府県で設定されている無医地区・準無医地区の時間距離の位置を観察した。②距離構成指標による医療アクセシビリティ;距離構成指標種(空間距離と道路距離)別の圏域内人口を比べた。一県内の無医地区・準無医地区と中心地において、最寄の病院までの空間距離と道路距離の差(道直差)を比べた。③都道府県の医療アクセシビリティとへき地医療との関係;医療施設への到達のしやすさ(医療アクセシビリティ)を都道府県別に推計した。30分で医療施設に到達しない圏外人口の推計量と無医地区数との相関を分析した。④へき地医療における専門診療;総合診療主体のへき地医療機関(5機関)の外来受診者(734人)に対して、同機関に必要と思う専門診療科について質問紙調査を行った。
(2)①へき地医療拠点病院とへき地診療所におけるICTの利活用の実態;全国のへき地医療拠点病院(334病院)とへき地診療所(1006診療所)に対し、オンライン診療を含む遠隔医療の利活用と導入支援等に関して質問紙調査(2022年2月)を行った。②ICTの利活用に関する要因;へき地医療拠点病院(9病院)に対し、ICT、特にオンライン診療の利活用に対する促進要因・阻害要因についてインタビューを行って質的に分析した。
(3)①ICTを用いた看護実践の実態;ICTやオンライン診療を利活用している看護師に対し、実践状況、その効果と課題を中心にインタビューを行って質的に分析した。②医療計画におけるへき地での看護に係る特定行為の策定状況;第8次医療計画での特定行為に関する策定状況(使用する情報、計画の課題等)について各都道府県に質問紙調査を行った。
(4)トピック論文の情報整理;へき地での遠隔心疾患診療や遠隔メンタルヘルスケアについて国内外の文献をレビューした。
結果と考察
(1)① 99.9%人口をカバーする時間距離と無医地区・準無医地区の位置関係は、都道府県により様々であった。②空間距離圏域の人口は道路距離圏域よりも多かった。中心地に比べ、無医地区・準無医地区の道直差は大きかった。③医療アクセシビリティ特性には都道府県差があった。都道府県の30分圏外人口と無医地区数とは正に相関した。④必要な専門診療科として「整形外科」「循環器科」「眼科」「耳鼻咽喉科」「消化器科」が順に挙げられた。
(2)①へき地医療拠点病院の35%、へき地診療所の14%は遠隔医療を実施していた。オンライン診療では、同病院の12%、同診療所の7%がDoctor-to-Doctor、同病院の7%、同診療所の8%がDoctor-to-Patient、同診療所の7%がDoctor-to-Patient with Nurseの形態で実施していた。遠隔医療やオンライン診療の利活用には自治体からの支援が正に関連した。②オンライン診療の「促進要因」として人材育成、インセンティブ、運用規則・ガイドラインの整備、誰もが使いやすいシステム作り、地域ぐるみの連携、現場の苦手意識の克服、行政の相談窓口、住民の理解、コンサルタント起用、トラブル対応要員の整備、「阻害要因」として予算、人的問題、運用上の問題のカテゴリが抽出された。
(3)① ICTまたオンライン診療が、医師との情報共有や受療判断に役立ち、患者や看護師に安心感を生むことが語られた。他方、情報の限定、機器の取り扱い、看護実践力を高める必要性等の課題も語られた。②計画策定に、研修修了者数や指定研修機関数の情報が用いられた。研修の普及や研修修了者の活動支援は課題であった。へき地医療に限定した検討はみられなかった。
(4) ①遠隔心疾患診療に関しては、へき地の医師から都市部の専門医への相談を目的とする場合が多かった。②メンタルヘルスの不調、不眠、うつ等に対する遠隔メンタルヘルスケアは症状を改善することが示された。
結論
へき地医療やその計画に寄与する所見が得られた。へき地医療については、へき地に特化して計画することは重要である。一方、都道府県の医療アクセシビリティとの相関性等からは、へき地医療は都道府県全般の医療提供と併せて整備する必要性も示唆される。へき地医療機関の専門診療の結果は専門科設置や専門医派遣、社会医療法人等の検討に用い得る。今回、へき地医療での遠隔医療やオンライン診療の有用性やその支援に関する把握が進んだ。

公開日・更新日

公開日
2024-06-19
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-06-19
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202321001C

収支報告書

文献番号
202321001Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,160,000円
(2)補助金確定額
3,885,000円
差引額 [(1)-(2)]
275,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 18,492円
人件費・謝金 1,369,323円
旅費 812,230円
その他 724,958円
間接経費 960,000円
合計 3,885,003円

備考

備考
その他の収入 3円

公開日・更新日

公開日
2025-04-23
更新日
-