文献情報
文献番号
202320007A
報告書区分
総括
研究課題名
指標等を活用した地域の実情に応じた肝炎対策均てん化の促進に資する研究
課題番号
23HC2003
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
考藤 達哉(国立研究開発法人 国立国際医療研究センター 国府台病院 肝炎・免疫研究センター)
研究分担者(所属機関)
- 田中 純子(広島大学 大学院医系科学研究科 疫学・疾病制御学)
- 島上 哲朗(金沢大学 附属病院 地域医療教育センター)
- 玉城 信治(武蔵野赤十字病院 消化器科)
- 大座 紀子(国立国際医療研究センター肝炎・免疫研究センター)
- 瀬戸山 博子(熊本大学 消化器内科)
- 竹内 泰江(国立研究開発法人 国立国際医療研究センター 肝炎・免疫研究センター 肝炎情報センター )
- 西井 正造(公立大学法人横浜市立大学 先端医科学研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服政策研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
23,077,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
肝炎対策基本指針の見直しにおいて、肝硬変又は肝がんへの移行者を減らすことが目標と設定された。現在、肝炎政策スキームの各ステップにおいて、各実施主体の達成数値目標が統一されておらず、改善策を提示しにくい状況である。
本研究班では以下を主な目的とした。①先行研究班で作成・運用した肝炎政策に係る各事業、医療実施主体別に事業、医療の程度と質を評価する指標を継続調査する。②ウイルス肝炎検査に関する全国調査(国民調査)2024を計画・実施し、ウイルス肝炎検査に対する国民意識の変化、受検行動規定要因等を明らかにする。③臨床的肝硬変移行率を推計する指標、方策を確立し、その有効性・妥当性を評価する。④一般国民に対する波及力の高い肝炎啓発方法の確立を目指して新規エデュテインメント資材を開発・運用する。
本研究班では以下を主な目的とした。①先行研究班で作成・運用した肝炎政策に係る各事業、医療実施主体別に事業、医療の程度と質を評価する指標を継続調査する。②ウイルス肝炎検査に関する全国調査(国民調査)2024を計画・実施し、ウイルス肝炎検査に対する国民意識の変化、受検行動規定要因等を明らかにする。③臨床的肝硬変移行率を推計する指標、方策を確立し、その有効性・妥当性を評価する。④一般国民に対する波及力の高い肝炎啓発方法の確立を目指して新規エデュテインメント資材を開発・運用する。
研究方法
肝炎医療指標、病診連携指標は拠点病院(72施設)と専門医療機関(R5年度:20都道府県、100施設に拡充)を対象に実施した。また、一次医療機関を含む調査を奈良県で実施した。自治体に関しては、厚労省の自治体事業調査結果から指標関連結果を抽出し指標値を算出、評価した。拠点病院事業指標については各指標の経年推移を解析し、啓発事業指標を作成した。住民検診での肝炎ウイルス検査受検経験を忘れて「未受検」判定となっている既受検者の割合を算出するために、2022年にパイロット調査を実施した。B型肝炎における肝線維化指標として、MREの有用性を検討した。「肝炎すごろく」の改訂第3版、若年層向けの「肝ぞうライフすごろく」を作成した。
結果と考察
肝炎医療指標、自治体事業指標、拠点病院事業指標
全体的には均てん化された肝炎医療が提供されていた。R4年度の未達成項目のうちDAA再治療前のRAS検査については改善を認めたが、新たに2項目(DAA治療前のDDI安全確認の実施、DAA治療後のSVR確認)が未達成項目となった。専門医療機関においても多くのウイルス肝炎患者が治療を受けていた。奈良県調査では施設間連携を行いながら施設規模、設備に応じた診療を行っている実態が明らかになり、専門医療機関における肝疾患診療の地域別特徴を評価することが可能であった。診療連携指標は肝炎患者の紹介率、逆紹介率は、前年度から横ばいあるいは増加に転じた。自治体事業指標は肝がん罹患率と死亡率は、経時的に低下傾向を示した。全ての都道府県が肝炎対策に関しての計画を策定し94%の都道府県で具体的な数値目標が設定されていた。肝炎医療コーディネーター数は、拠点病院、専門医療機関、市町村、保健所いずれも増加傾向であった。拠点病院事業指標では、啓発活動、研修事業においてWEBを活用した形式で実施数・参加者数ともに回復傾向であった。肝疾患相談・支援センターのHPが設置されているが、施設毎に掲載内容は異なっているため、HP指標案を作成し、調査を開始した。
国民調査(パイロット調査2022)の解析
住民検診で2年以内に肝炎ウイルス検査を受検したことが判っている1,916人を対象とし、993人から回答を得た。肝炎ウイルス検査を受検した人の半数以上が、検査受検歴を忘れていた。受検歴を忘れ、かつ手術・妊娠・献血の経験がなく、「未受検者」と誤分類された者の割合は、受検者全体の28.0%(HBV)、33.4%(HCV)を占めた。この割合をもとに、2020年度国民調査の検査受検経験率を補正したところ、HBV 85.5%、HCV 76.4%となった。
肝硬変移行率評価指標
肝癌のある症例と肝癌のない症例を比較すると肝癌のある症例において有意にMREによる肝硬度が高く、肝硬度の測定によって発癌リスク症例を同定することが出来た。非活動性キャリアと判断され核酸アナログが投与されていない症例の中で14%の症例は肝硬度が高値である“隠れ肝硬変”が存在し、発癌している症例も存在した。これらの症例の肝硬変の判定にはMREが有用であると考えられた。
肝炎啓発エデュテインメント資材の開発
「肝炎すごろく」改訂版と「肝ぞうライフすごろく」を開発し、普及活動を行った。「肝炎すごろく」の学習効果検証の比較試験(リーフレットや映像教材との比較)に向けて、テストの至適化検証を行った。「肝炎すごろく」の対面での使用が困難な対象者向けに、ウェブなどで簡易に実施可能なデジタル資材開発に向けての検討を開始した。
全体的には均てん化された肝炎医療が提供されていた。R4年度の未達成項目のうちDAA再治療前のRAS検査については改善を認めたが、新たに2項目(DAA治療前のDDI安全確認の実施、DAA治療後のSVR確認)が未達成項目となった。専門医療機関においても多くのウイルス肝炎患者が治療を受けていた。奈良県調査では施設間連携を行いながら施設規模、設備に応じた診療を行っている実態が明らかになり、専門医療機関における肝疾患診療の地域別特徴を評価することが可能であった。診療連携指標は肝炎患者の紹介率、逆紹介率は、前年度から横ばいあるいは増加に転じた。自治体事業指標は肝がん罹患率と死亡率は、経時的に低下傾向を示した。全ての都道府県が肝炎対策に関しての計画を策定し94%の都道府県で具体的な数値目標が設定されていた。肝炎医療コーディネーター数は、拠点病院、専門医療機関、市町村、保健所いずれも増加傾向であった。拠点病院事業指標では、啓発活動、研修事業においてWEBを活用した形式で実施数・参加者数ともに回復傾向であった。肝疾患相談・支援センターのHPが設置されているが、施設毎に掲載内容は異なっているため、HP指標案を作成し、調査を開始した。
国民調査(パイロット調査2022)の解析
住民検診で2年以内に肝炎ウイルス検査を受検したことが判っている1,916人を対象とし、993人から回答を得た。肝炎ウイルス検査を受検した人の半数以上が、検査受検歴を忘れていた。受検歴を忘れ、かつ手術・妊娠・献血の経験がなく、「未受検者」と誤分類された者の割合は、受検者全体の28.0%(HBV)、33.4%(HCV)を占めた。この割合をもとに、2020年度国民調査の検査受検経験率を補正したところ、HBV 85.5%、HCV 76.4%となった。
肝硬変移行率評価指標
肝癌のある症例と肝癌のない症例を比較すると肝癌のある症例において有意にMREによる肝硬度が高く、肝硬度の測定によって発癌リスク症例を同定することが出来た。非活動性キャリアと判断され核酸アナログが投与されていない症例の中で14%の症例は肝硬度が高値である“隠れ肝硬変”が存在し、発癌している症例も存在した。これらの症例の肝硬変の判定にはMREが有用であると考えられた。
肝炎啓発エデュテインメント資材の開発
「肝炎すごろく」改訂版と「肝ぞうライフすごろく」を開発し、普及活動を行った。「肝炎すごろく」の学習効果検証の比較試験(リーフレットや映像教材との比較)に向けて、テストの至適化検証を行った。「肝炎すごろく」の対面での使用が困難な対象者向けに、ウェブなどで簡易に実施可能なデジタル資材開発に向けての検討を開始した。
結論
各指標を継続調査した。経年調査結果を「肝炎総合政策に係る指標報告書」に纏め、事業・医療改善のための提言と併せて、関係各所に配布した。指標結果を各施設、都道府県の担当者で共有し、課題を明らかにすることで、医療・政策の均てん化が推進される。
公開日・更新日
公開日
2025-01-28
更新日
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