文献情報
文献番号
202320002A
報告書区分
総括
研究課題名
全国規模の肝炎ウイルス感染状況の把握及びウイルス性肝炎eliminationに向けた方策の確立に資する疫学研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22HC1001
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
田中 純子(広島大学 大学院医系科学研究科 疫学・疾病制御学)
研究分担者(所属機関)
- 谷 慶彦(大阪府赤十字血液センター)
- 相崎 英樹(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
- 保坂 哲也(国家公務員共済組合連合会 虎の門病院 肝臓内科)
- 古賀 浩徳(久留米大学 医学部)
- 山崎 一美(独立行政法人国立病院機構長崎医療センター臨床研究センター)
- 豊田 秀徳(大垣市民病院 消化器科)
- 宮坂 昭生(岩手医科大学 医学部 内科学講座 消化器内科肝臓分野)
- 島上 哲朗(金沢大学 附属病院 地域医療教育センター)
- 菊地 勘(医療法人社団豊済会 下落合クリニック)
- 秋田 智之(広島大学 大学院医系科学研究科 疫学・疾病制御学)
- 杉山 文(広島大学大学院 医系科学研究科 疫学・疾病制御学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服政策研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
36,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
わが国の肝炎状況に対処するため、全国規模の肝炎ウイルス感染状況の把握及びHBV感染後・HCV排除後の長期経過に関する臨床疫学研究を実施し、政策の企画立案と基準策定の基礎資料や施策に科学的根拠を与えるための成果の獲得をめざし、地域レベルを含むウイルス肝炎排除への方策を提示する
研究方法
基礎、臨床、社会医学各分野の専門家の参加を得て組織的に実施する
結果と考察
・大阪医療センター肝臓内科受診HCV患者115人を対象に、薬物乱用者集団(PWID)および男性間性交渉者集団(MSM)のHCV genotype把握、系統樹解析を実施した。①非MSM PWID(N=31), ②MSM PWID(N=15), ③MSM 非PWID(N=25),④非MSM非PWID(N=44)の4群でみると①はgenotype 2a(56%)、②③④は1b(87%,65%,70%)。系統樹では、MSMでのみクラスターがみられ、HCVの感染経路を決定づける因子として「MSMか否か」は「静脈薬物使用有無」よりも優先される因子である可能性を示唆。ハイリスク感染の防止策普及レベルを図る指標としてPWIDを対象とした現行のWHO指標に加え、新たな指標の設定が必要。
・2016年度に次ぎ、第2回「HBV母子感染防止事業による妊婦を対象とした検査に関する全国調査2023」を全市町村(1,741市町村)を対象に実施。2021-22年度の妊婦331,005人分の検診結果を解析した結果、HBs抗原陽性率は0.13%、HCV抗体陽性率は0.12%。日本におけるHBs抗原陽性妊婦数は、2023年度推計1,004人(95%CI :910-1,098人)となった(2016年度調査2,313人から半減)。把握された24例についてHBV母子感染成立率は0%、WHOのElimination目標におけるHBV母子感染予防関連指標は達成していると考えられた。
・NDBを解析し、2012~2021年度B・C型肝炎受療中の性年齢別、地域・都道府県別、受療内容別の患者数を算出。受療中患者はB型が増加、C型は減少傾向。2021年時点総患者数は、HBV216,230人、HCV223,275人。通院フォローのみ(薬物療法なし)患者数は2020年度HBV202,702人、HCV82,645人。マルコフモデルによる肝病態推移、NBNC肝癌の実態を解析中。また、肝がん・重度肝硬変治療研究促進事業の見直しのための資料を提供(肝炎対策推進室より依頼)。
・2021年度自治体調査をもとに、各都道府県・各ブロックの肝炎対策の取り組み状況(2020年度実績)をスコア化し、肝癌罹患・死亡・肝臓専門医数・受検率と合わせレーダーチャートによる対策と疫学状況の「見える化」を行った。全国ブロック会議で都道府県担当者にフィードバックを実施。
・NDBと全国規模疫学資料に基づく2020年時点のtotalキャリア数を更新し、2020年時点153~192万人(HBV99~103万人/HCV54~88万人)。
・住民健診の新たなHCV検査手順として、抗原と抗体を組み合わせたHCV検査法について検討しリスト更新。
・五島列島のHBs抗原陽性住民の血清からD型肝炎ウイルス(HDV)RNAが同定された。
・第4回調査国民調査による肝炎ウイルス検査受検率実態調査2024の実施準備、住民基本台帳より対象者抽出・調査項目検討。
・継続観測中の国立病院機構群におけるB型およびC型急性肝炎の発生状況は1980 -2022年42年間の登録患者数はB型1,583例、C型449例。また、2017年にDAAによるSVR達成したC型肝炎症例921例の臨床情報を集積中。
・感染症サーベイランスによる急性B型肝炎の届出は減少傾向(2020~2022年)、25-29歳男性が多く、感染原因の7割は性的接触。届出数は東京都、大阪府、神奈川県、兵庫県、福岡県に多く、100万人当たり数は、宮崎県、東京都、群馬県、岡山県、沖縄県、岩手県が上位に位置した。
・献血者のHBV新規感染の殆どはHBcAb陰性、HBsAb<10mIU/mLであることを確認。HBcAb陰性、HBsAb≧10 mIU/mLのワクチン接種者と考えられる献血者のブレークスルー感染もわずかながら確認された。
・令和5年12月に「透析施設における標準的な透析操作と感染予防に関するガイドライン」の六訂版を策定。全国の全透析施設に対して「透析施設における感染対策およびウイルス性肝炎の現況に関するアンケート調査を実施。
・2016年度に次ぎ、第2回「HBV母子感染防止事業による妊婦を対象とした検査に関する全国調査2023」を全市町村(1,741市町村)を対象に実施。2021-22年度の妊婦331,005人分の検診結果を解析した結果、HBs抗原陽性率は0.13%、HCV抗体陽性率は0.12%。日本におけるHBs抗原陽性妊婦数は、2023年度推計1,004人(95%CI :910-1,098人)となった(2016年度調査2,313人から半減)。把握された24例についてHBV母子感染成立率は0%、WHOのElimination目標におけるHBV母子感染予防関連指標は達成していると考えられた。
・NDBを解析し、2012~2021年度B・C型肝炎受療中の性年齢別、地域・都道府県別、受療内容別の患者数を算出。受療中患者はB型が増加、C型は減少傾向。2021年時点総患者数は、HBV216,230人、HCV223,275人。通院フォローのみ(薬物療法なし)患者数は2020年度HBV202,702人、HCV82,645人。マルコフモデルによる肝病態推移、NBNC肝癌の実態を解析中。また、肝がん・重度肝硬変治療研究促進事業の見直しのための資料を提供(肝炎対策推進室より依頼)。
・2021年度自治体調査をもとに、各都道府県・各ブロックの肝炎対策の取り組み状況(2020年度実績)をスコア化し、肝癌罹患・死亡・肝臓専門医数・受検率と合わせレーダーチャートによる対策と疫学状況の「見える化」を行った。全国ブロック会議で都道府県担当者にフィードバックを実施。
・NDBと全国規模疫学資料に基づく2020年時点のtotalキャリア数を更新し、2020年時点153~192万人(HBV99~103万人/HCV54~88万人)。
・住民健診の新たなHCV検査手順として、抗原と抗体を組み合わせたHCV検査法について検討しリスト更新。
・五島列島のHBs抗原陽性住民の血清からD型肝炎ウイルス(HDV)RNAが同定された。
・第4回調査国民調査による肝炎ウイルス検査受検率実態調査2024の実施準備、住民基本台帳より対象者抽出・調査項目検討。
・継続観測中の国立病院機構群におけるB型およびC型急性肝炎の発生状況は1980 -2022年42年間の登録患者数はB型1,583例、C型449例。また、2017年にDAAによるSVR達成したC型肝炎症例921例の臨床情報を集積中。
・感染症サーベイランスによる急性B型肝炎の届出は減少傾向(2020~2022年)、25-29歳男性が多く、感染原因の7割は性的接触。届出数は東京都、大阪府、神奈川県、兵庫県、福岡県に多く、100万人当たり数は、宮崎県、東京都、群馬県、岡山県、沖縄県、岩手県が上位に位置した。
・献血者のHBV新規感染の殆どはHBcAb陰性、HBsAb<10mIU/mLであることを確認。HBcAb陰性、HBsAb≧10 mIU/mLのワクチン接種者と考えられる献血者のブレークスルー感染もわずかながら確認された。
・令和5年12月に「透析施設における標準的な透析操作と感染予防に関するガイドライン」の六訂版を策定。全国の全透析施設に対して「透析施設における感染対策およびウイルス性肝炎の現況に関するアンケート調査を実施。
結論
上記、得られた知見は研究目的に適う
公開日・更新日
公開日
2025-01-14
更新日
-