プロテオーム解析を用いた高齢認知症患者における大脳白質病変と抗血管内皮細胞抗体の関連性に関する研究

文献情報

文献番号
200935073A
報告書区分
総括
研究課題名
プロテオーム解析を用いた高齢認知症患者における大脳白質病変と抗血管内皮細胞抗体の関連性に関する研究
課題番号
H21-こころ・若手-022
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
木村 暁夫(岐阜大学医学部附属病院 神経内科・老年学分野)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高度の大脳白質病変を有する高齢認知症患者において網羅的に抗血管内皮細胞抗体を検出し、その中で大脳白質病変に密接に関連することが予想される自己抗体を抽出し、認知症の診断に有用な新たなバイオマーカーの確立ならびに予防・治療法の開発に役立てることを目的とする。
研究方法
ヒト大脳微小血管内皮細胞を培養し、そのホモジネートを抗原とした二次元免疫ブロットにより、高度の大脳白質病変を合併した認知症患者を含む対象者の血清中に存在する抗血管内皮細胞抗体を検出する。検出された自己抗体のうちで高度大脳白質病変合併例に特異的なスポットを抽出し、その認識抗原蛋白を質量分析により同定する。得られた抗原情報をもとに、ELISAによる特異性の検討、免疫組織学的検討、細胞レベルでの抗体機能解析を行いその病的意義につき検討する。
結果と考察
本年度、抗血管内皮細胞抗体を同定するためのヒト大脳微小血管内皮細胞ホモジネートをサンプルとした二次元免疫ブロットシステムの構築を行った。その結果極めて再現性よく約900個の蛋白スポットの分離に成功した。さらにこのシステムを用いて対象者の血清を一次抗体として抗原抗体反応を施行した。広範な大脳白質病変を合併した60歳以上の対象者21名の一人あたりの抗体反応スポット数は43.9±17.0個、大脳白質病変を合併しない60歳以上の対象者22名では46.3±19.6個、40歳未満の健常者18名では22.1±17.8個という結果であった。60歳以上の対象者43名は、40歳未満の健常者18名と比較し有意に一人当たりの抗体反応スポット数が多い結果となった。また特異性の検討では広範な大脳白質病変を合併した患者、大脳白質病変を合併しない患者、それぞれに特異的ないくつかの蛋白スポットを抽出した。抗血管内皮細胞抗体に関するこれまでの報告では、自己抗体が血管内皮細胞障害をもたらすという報告(Margutti P, et al. Blood, 2008)や、反対に自己抗体が血管内皮細胞に保護的に作用するといった報告(Ronda N, et al. Clin Exp Immunol, 2003)があり今後、今回検出した自己抗体が大脳微小血管内皮細胞に及ぼす機能的な影響につき検討する必要があると考えられた
結論
1、ヒト血清中に存在する大脳微小血管内皮細胞を抗原とする自己抗体の検出システムを構築し広範な大脳白質病変を合併した高齢認知症患者を含む多数例の血清を用い二次元免疫ブロットを施行した。
2、 広範な大脳白質病変合併患者群、大脳白質病変非合併患者群のそれぞれに比較的特異性が高いと思われる抗体反応スポットを抽出した。

公開日・更新日

公開日
2010-08-31
更新日
-