地域における一般診療科と精神科の連携によるうつ病患者/自殺ハイリスク者の発見と支援

文献情報

文献番号
200935069A
報告書区分
総括
研究課題名
地域における一般診療科と精神科の連携によるうつ病患者/自殺ハイリスク者の発見と支援
課題番号
H19-こころ・若手-026
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
稲垣 正俊(国立精神・神経センター精神保健研究所 精神保健計画部)
研究分担者(所属機関)
  • 石蔵 文信(大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻医療技術科学分野機能診断科学講座)
  • 三島 和夫(国立精神・神経センター精神保健研究所精神生理部)
  • 山田 光彦(国立精神・神経センター精神保健研究所老人精神保健部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
4,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
かかりつけ医機能を担う内科等の身体科診療科においてうつ病患者を適切な治療に導入する役割が期待されつつある。そこで、本研究は、地域における一般診療科と精神科の連携によるうつ病患者/自殺ハイリスク者の発見と支援に資する調査研究を行った。
研究方法
1) 大規模診療報酬データを用いて、日本の実地診療におけるうつ病患者に対する睡眠薬および抗うつ薬の処方動向を解析し、うつ病診療の際の不眠管理の重要性を明らかにすることを試みた。2)ニュージーランドは、近年、自殺予防戦略とその戦略に基づく活動計画を策定してきた。この自殺予防戦略および活動計画を詳細に検討することは、我が国の自殺対策活動計画を作成・実施するうえで参考となる。そこで、ニュージーランド自殺予防戦略を翻訳し紹介した。
3)一般医と精神科医の連携を目的としたG-Pネット活動による会員の意識変化についてアンケート調査を行なった。
4)一般病院の内科外来において、うつ病の有病率、うつ病患者に対する主治医の精神障害の認識率を調査した。
結果と考察
1)大型健康保険組合加入者約32万人を元にした解析の結果、3ヶ月推定処方率は、睡眠薬3.7%、抗うつ薬2.0%であった。気分障害患者のうち、睡眠薬処方患者の34.7%、抗うつ薬処方患者の41.9%が両薬剤を併用していた。また、かなりの睡眠薬および抗うつ薬がメンタルヘルスの専門医以外から処方されている実態が明らかになった。
2)ニュージーランド自殺予防戦略と活動計画では、エビデンスに基づき活動内容を決定し、実施責任組織を決め、期間、評価法を予め決めることで、実施可能性を高め効果を上げる工夫がなされていた。
3)一般医と精神科医の交流はある程度進んで、一般医の精神疾患へ対応はやや積極的になったようではあるが、まだ十分とは言えないという結果であった。
4)内科外来においてうつ病の頻度は高いが、見逃されており、単なる不眠として対応されていた。
結論
内科等の一般身体科と精神科の連携の必要性が再確認された。更に、不眠とのみ診断されている患者のうつ病症状をスクリーニングすることで、見逃されているうつ病患者を適切な治療に導入できる可能性が示された。しかし、そのためには、少なくとも一般身体科においてうつ病をスクリーニング、モニタリングする必要があり、一般身体科医のうつ病に対する態度を変えていく介入が必要であろう。また、引き続き、一般身体科と精神科との連携を深める必要性が示された。

公開日・更新日

公開日
2010-06-15
更新日
-

文献情報

文献番号
200935069B
報告書区分
総合
研究課題名
地域における一般診療科と精神科の連携によるうつ病患者/自殺ハイリスク者の発見と支援
課題番号
H19-こころ・若手-026
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
稲垣 正俊(国立精神・神経センター精神保健研究所 精神保健計画部)
研究分担者(所属機関)
  • 石蔵 文信(大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻医療技術科学分野機能診断科学講座)
  • 三島 和夫(国立精神・神経センター精神保健研究所精神生理部)
  • 山田 光彦(国立精神・神経センター精神保健研究所老人精神保健部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
かかりつけ医機能を担う内科等の身体科診療科においてうつ病患者を適切な治療に導入する役割が期待されつつある。そこで、本研究は、地域における一般診療科と精神科の連携によるうつ病患者/自殺ハイリスク者の発見と支援に資する調査研究を行った。
研究方法
1)うつ病および自殺ハイリスク者のスクリーニング項目として不眠症状を用いることの妥当性にについての文献による系統的レビュー、
2)厚生省保健福祉動態調査データによる不眠症におけるうつ病の併存率の調査、
3)大規模診療報酬データによる睡眠薬および抗うつ薬の処方動向の解析、
4)海外の先進的な自殺戦略・活動計画、自殺対策研究・事業のレビューと考察、
5)一般医-精神科ネットワークの役割についての調査、
6)一般診療科医師のうつ病に対する態度の把握、
7)一般内科外来のうつ病有病率と医師のうつ病認識率調査を行った。
結果と考察
1)睡眠障害は、うつ病発病の危険因子であり、寛解後も再燃予測因子として重要であり、自殺の大部分がうつ病・うつ状態によって引き起こされていると推定された。
2)不眠の有症状率は43.4%、うつ病の併存が疑われる不眠症の有病率は5.5%であり、不眠症者全体の12.7%を占めた。
3)3ヶ月推定処方率は、睡眠薬3.65%、抗うつ薬2.01%であった。気分障害患者のうち、睡眠薬処方患者の34.7%、抗うつ薬処方患者の41.9%が両薬剤を併用していた。
4)海外の先進的な対策は、過去の研究の知見(エビデンス)に基づき実施されていた。うつ病などの精神保健を焦点に複合的な介入が行われていた。
5)一般医-精神科医ネットワークに所属する会員の連携は深まってきたが、まだ十分とは言えないという知見が得られた。
6)一般身体科医師も精神科医師も、うつ病は一般診療科の対象ではないと考えている実態が明らかとなった。
7)内科外来においてうつ病の頻度は高いが、多くが見逃され、不眠とのみ診断され対処されていた。
結論
内科等の一般身体科と精神科の連携の必要性が再確認された。更に、不眠とのみ診断されている患者のうつ病をスクリーニングすることで、見逃されているうつ病患者を適切な治療に導入できる可能性が示された。しかし、そのためには、少なくとも一般身体科においてうつ病をスクリーニング、モニタリングする必要があり、一般身体科医のうつ病に対する態度を変えていく介入が必要であろう。

公開日・更新日

公開日
2010-06-15
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200935069C

成果

専門的・学術的観点からの成果
海外では、プライマリケア場面におけるうつ病有病率が高いという結果を背景にプライマリケア場面における効果的なうつ病スクリーニング法が開発され、有効な介入法が確立している。しかし、医療制度の異なるわが国においては、これらの知見や確立した介入法はこれまでに無い。本研究から、うつ病患者が急増した近年のわが国のかかりつけ医機能を有する一般内科外来におけるうつ病有病率、医師のうつ病認識率、治療導入率に関する知見として重要な結果が得られた。今後の効果的な介入法の開発に必要な情報となる。
臨床的観点からの成果
かかりつけ医機能を有する一般内科外来においてうつ病の頻度は高いにもかかわらず、多くのうつ病患者はうつ病と認識されておらず、不眠とのみ診断、治療がなされていることが分かった。不眠症を抱える患者において適切にうつ病を評価し、適切な治療に導入する必要性が示された。そのためにも、内科外来においてうつ病をスクリーニング・モニタリングする必要性が示された。
ガイドライン等の開発
かかりつけ医機能を有する一般病院の内科等におけるうつ病有病率や医師のうつ病認識率に関する情報はこれまでになく、ガイドラインを作成するための情報が限られていた。本研究から得られた情報、特に内科外来におけるうつ病有病率と医師のうつ病認識率、また、不眠、うつ病に対する処方実態は、今後、ガイドライン等を作成するうえで重要な知見となる。
その他行政的観点からの成果
自殺総合対策大綱に謳われているように、かかりつけ医によるうつ病の発見と治療導入は、地域全体のうつ病患者・自殺ハイリスク者に適切な支援を提供するために重要な活動である。本研究から得られた一般病院内科外来におけるうつ病有病率と医師のうつ病認識率に関する情報は、今後、行政としてかかりつけ医によるうつ病の発見と治療導入を促進するために必須の情報である。
その他のインパクト
本研究結果は、精神科だけでなく、内科やその他の診療科において重要な意味を持つ情報である。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
18件
その他論文(和文)
51件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
59件
学会発表(国際学会等)
23件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Ohtsuki T, Inagaki M, Oikawa Y, et al.
Multiple barriers against successful care provision for depressed patients in general internal medicine in a Japanese rural hospital: a cross-sectional study
BMC Psychiatry , 10 (1)  (2010)

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-