HIV感染症および血友病におけるチーム医療の構築と医療水準の向上を目指した研究

文献情報

文献番号
202319025A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV感染症および血友病におけるチーム医療の構築と医療水準の向上を目指した研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
21HB2003
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
渡邊 大(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター 臨床研究センターエイズ先端医療研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 四本 美保子(根岸 美保子)(東京医科大学 臨床検査医学分野)
  • 矢田 弘史(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター(臨床研究センター) 血友病科)
  • 武山 雅博(大阪医療センター 血友病科)
  • 野上 恵嗣(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部小児科学講座)
  • 松本 剛史(三重大学医学部附属病院 輸血・細胞治療部)
  • 木村 宏之(名古屋大学医学部附属病院精神科)
  • 安尾 利彦(独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センター 精神科・神経科)
  • 矢倉 裕輝(独立行政法人国立病院機構 大阪医療センター 薬剤部)
  • 東 政美(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター 看護部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
28,500,000円
研究者交替、所属機関変更
研究分担者交替 矢田 弘史(令和5年4月1日~5年9月30日) →武山 雅博(令和5年10月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
HIV感染者、血友病患者ともに治療環境の向上によりライフスタイルの変化や高齢化がみられ、そのために包括的なチーム医療が極めて重要になってきている。このようにHIV感染症および血友病にはそれぞれの課題が残されており、ことに非加熱血液凝固因子製剤によるHIV感染血友病等患者の医療の質の改善に対しては、HIV感染症と血友病の両者の医療水準の向上が必要になってくる。本研究ではガイドライン・HIV診療のチーム医療・精神と心理・血友病・地域医療連携に6つの柱に注目して、チーム医療の構築と医療水準の向上を目指す。
研究方法
HIV感染症については4つの分担研究で、血友病については3つの分担研究で、HIV感染症+血友病については1つの分担研究を計画した。
結果と考察
それぞれの分担研究で研究体制の整備を完了させ、データ収集および解析を実施した。抗HIV療法のガイドラインに関する研究では、改訂委員全員ですべての原稿を見直し、最新情報を加えた抗HIV治療ガイドラインの改訂版を2023年4月に発行した。広くガイドラインを活用してもらうために、スマートフォン・タブレット端末での閲覧に適したページを研究班HP内に掲載し、閲覧利便性を充実させた。血友病研究の受診動向に関しては、先天性血友病AまたはB患者304人に対する調査を実施した。関節症罹患率(13.6~73.8%)や頭蓋内出血罹患率(9.4~17.1%)は施設間の違いを認めたものの、ブロック拠点病院間の治療水準には差を認めなかった。包括的凝固機能については、新規抗体製剤治療下の血友病A患者14例をROTEMにより検討し、軽症血友病A患者相当であることが示された。血友病患者における関節の理学療法のセルフマネージメントに関する調査を行い、定期的にリハビリを継続して行っている患者で高評価のコメントがあった。一方で関節症を伴うがリハビリ経験のない患者でネガティブな印象を持っている患者も存在した。すべての患者にリハビリテーションを経験させ、セルフトレーニングの有用性を教育することが必要と考えられた。HIV領域のコンサルテーション・リエゾン精神医学診療体制の調査開発に関する研究では、HIV診療チームと精神医療チームの連携体制を阻害する要因に関して、拠点病院勤務の心理士31名、総合病院勤務の心理士46名から収集を行い、両群を比較した。「外部の精神科医療機関との情報共有の難しさ」(p< 0.001)などの要因が特定でき、今後の改善に向けた提言や啓発を行った。受診中断の心理的要因および心理面に対するコロナ禍の影響に関する研究では、6ヵ月以上にわたる受診中断経験がある群(中断群)と、中断者と諸条件をマッチングさせた継続群を各13名抽出しP-Fスタディを実施した。中断群は標準と比べて1SD以上自責I-Aと無罰Mが高く、無責逡巡M’が低かった。ストレスに直面した際に、自分が悪いという思考に囚われて問題解決等に向かえず、ストレス状態から抜け出しにくいことが受診中断と関連している可能性が示唆された。抗HIV薬に関わる代謝酵素と薬物トランスポーターの遺伝子多型に関する研究では、220例の薬物トランスポーター・薬物代謝酵素の遺伝子多型を決定した。ビクテグラビルを内服中の52例では自覚症状(食欲亢進、不眠、頭痛、異夢、眠気)の有無(有り19例・無し33例)とABCG2の遺伝子変異(421C>A)の保有に関連性を認めた(58% vs 16%; p<0.01)。チーム医療マニュアルについては各職種から作成委員の編成し、各項目および内容のアップデートおよび長期療養に関わる項目の追加を行った。地域医療連携に関する研究では、一般医療機関1件、介護福祉施設5件、障害者自立支援センター1件で研修会の開催を実施した。HIV地域医療支援室としての活動実績の総件数1703件のうちHIV感染血友病患者への支援は83件であった。その内容は、加齢に伴う療養環境の変更、併存疾患に伴う地域医療機関との連携調整、心理・社会的不安を持ちながらの療養に伴う対応相談などであった。
結論
各分担研究において、ガイドラインやそれを補佐する資材の改訂を行い、研究成果についても報告を行なった。チーム医療の構築と医療水準の向上には、各職種のレベルの向上に加え、地域医療を支える医療機関を含めた連携が必要性と思われた。

公開日・更新日

公開日
2025-05-13
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2025-05-13
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202319025B
報告書区分
総合
研究課題名
HIV感染症および血友病におけるチーム医療の構築と医療水準の向上を目指した研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
21HB2003
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
渡邊 大(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター 臨床研究センターエイズ先端医療研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 四本 美保子(根岸 美保子)(東京医科大学 臨床検査医学分野)
  • 矢田 弘史(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター(臨床研究センター) 血友病科)
  • 武山 雅博(大阪医療センター 血友病科)
  • 野上 恵嗣(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部小児科学講座)
  • 松本 剛史(三重大学医学部附属病院 輸血・細胞治療部)
  • 木村 宏之(名古屋大学医学部附属病院精神科)
  • 安尾 利彦(独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センター 精神科・神経科)
  • 矢倉 裕輝(独立行政法人国立病院機構 大阪医療センター 薬剤部)
  • 東 政美(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター 看護部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究者交替、所属機関変更
研究分担者交替 矢田 弘史(令和5年4月1日~5年9月30日) →武山 雅博(令和5年10月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
HIV感染者、血友病患者ともに治療環境の向上によりライフスタイルの変化や高齢化がみられ、そのために包括的なチーム医療が極めて重要になってきている。このようにHIV感染症および血友病にはそれぞれの課題が残されており、ことに非加熱血液凝固因子製剤によるHIV感染血友病等患者の医療の質の改善に対しては、HIV感染症と血友病の両者の医療水準の向上が必要になってくる。本研究ではガイドライン・HIV診療のチーム医療・精神と心理・血友病・地域医療連携に6つの柱に注目して、チーム医療の構築と医療水準の向上を目指す。
研究方法
2021年度から2023年度にわたり、HIV感染症については4つの分担研究で、血友病については3つの分担研究で、HIV感染症+血友病については1つの分担研究で研究を実施した。
結果と考察
抗HIV療法のガイドラインに関する研究では、最新情報を加えた抗HIV治療ガイドラインの改訂版を各年度の3月に発行した。新薬の発売に伴い途中改訂を2回実施した。スマートフォン・タブレット端末での閲覧に適したページを研究班HP内に掲載し、閲覧利便性を充実させた。血友病研究の受診動向に関しては、先天性血友病A・B患者304人に対して調査した。関節症罹患率(13.6~73.8%)や頭蓋内出血罹患率(9.4~17.1%)は施設間の違いを認めたが、施設間の治療水準には差を認めなかった。包括的凝固機能については、新規抗体製剤治療下の血友病A患者14例をROTEMにより検討し、軽症血友病A患者相当であることが示された。血友病患者における関節の理学療法のセルフマネージメントに関する調査を行い、定期的にリハビリを継続して行っている患者で高評価のコメントがあった。一方で関節症を伴うがリハビリ経験のない患者でネガティブな印象を持っている患者も存在した。すべての患者にリハビリテーションを経験させ、セルフトレーニングの有用性を教育することが必要と考えられた。HIV領域のコンサルテーション・リエゾン精神医学診療体制の調査開発に関する研究では、HIV診療チームと精神医療チームの連携体制を阻害する要因に関して、拠点病院勤務の心理士31名、総合病院勤務の心理士46名から収集を行い、両群を比較した。「外部の精神科医療機関との情報共有の難しさ」(p< 0.001)などの要因が特定でき、今後の改善に向けた提言や啓発を行った。受診中断の心理的要因および心理面に対するコロナ禍の影響に関する研究では、2つの研究を実施した。6ヵ月以上にわたる受診中断経験がある群(中断群)と、中断者と諸条件をマッチングさせた継続群を各13名抽出しP-Fスタディを実施した。中断群は標準と比べて1SD以上自責I-Aと無罰Mが高く、無責逡巡M’が低かった。ストレスに直面した際に、自分が悪いという思考に囚われて問題解決等に向かえず、ストレス状態から抜け出しにくいことが受診中断と関連している可能性が示唆された。心理面へのコロナ禍の影響に関する研究では、HIV陽性者300名を対象に調査票を配布し、記入漏れのない184名(61.3%)を分析対象とした。ワクチン未接種群は既接種群に比べてHADSの不安障害尺度の得点が高かった。抗HIV薬に関わる代謝酵素と薬物トランスポーターの遺伝子多型に関する研究では、220例での遺伝子多型を決定した。ビクテグラビルを内服中の症例では、OCT2 808G>T多型を保有した症例でビクテグラビル内服後の血清クレアチン上昇が高かった(p=0.03)。また、ABCG2の遺伝子変異を有していた症例で、自覚症状(食思不振、不眠、頭痛、異夢、眠気)を多く認めた(p<0.01)。Q&A集については、2022年度に承認・販売が開始された持効性水懸筋注製剤を中心に改訂を行った。HIV感染症外来チーム医療マニュアルについては、医師、看護師、薬剤師、心理士、ソーシャルワーカーがコアメンバーとなり、それぞれの担当項目についてアップデートを行った。長期療養に関わる項目を新たに追加した。地域医療連携研究では、HIV感染血友病患者及びHIV陽性者への活動実績は、令和3年~令和5年で総件数7,367件、うちHIV感染血友病患者は336件であった。支援内容は、加齢に伴う療養環境の変更、併存疾患に伴う地域医療機関との連携調整、心理・社会的不安を持ちながらの療養に伴う対応相談が主であった。地域支援者への情報資材として、「在宅医療を支えるみんなに知ってほしいこと」の改訂を行った。
結論
各分担研究において、ガイドラインやそれを補佐する資材の改訂を行い、研究成果についても報告を行った。チーム医療の構築と医療水準の向上には、各職種のレベルの向上に加え、地域医療を支える医療機関を含めた連携が必要性と思われた。

公開日・更新日

公開日
2025-05-13
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2025-05-13
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202319025C

成果

専門的・学術的観点からの成果
抗HIV療法のガイドラインに関する研究では、最新情報を加えた抗HIV治療ガイドラインの改訂版を各年度の3月に発行した。最新のエビデンスを踏まえた記載を行い、専門的意義は高い。血友病研究における包括的凝固機能検査では、新規抗体製剤治療下の血友病A症例の凝固能は軽症血友病A患者相当であることが示された。ビクテグラビル内服中の症例で、OCT2遺伝子多型が腎機能検査値と、ABCG2遺伝子多型が自覚症状に関連したことを示した。
臨床的観点からの成果
抗HIV療法のガイドラインに関する研究では、臨床に活用できるようスマートフォン・タブレット端末での閲覧に適したページを研究班HP内に掲載し、閲覧利便性を充実させた。血友病研究では最新の受診動向を明らかにし、研究参加施設間の治療水準に差がないこと、関節診療の重要性を示した。HIV領域のコンサルテーション・リエゾン精神医学診療体制の調査開発に関する研究ではHIV診療チームと精神医療チームの連携体制を阻害する要因を示し、啓発を行なった。
ガイドライン等の開発
抗HIV療法のガイドラインに関する研究では、最新エビデンスを加えた抗HIV治療ガイドラインの改訂版を各年度の3月に発行した。さらに、新薬の発売に伴い途中改訂を2回実施した。印刷物の配布やホームページによる公開により各拠点病院に普及され、活用された。さらに、臨床の場で活用できる「抗HIV薬 Q&A Ver.12.0」「在宅医療を支えるみんなに知ってほしいこと」「HIV診療における外来チーム医療マニュアル改訂第4版」の開発を行なった。
その他行政的観点からの成果
加齢や合併症などによって介護が必要となるHIV感染者が増加している現状を知らせ、地域でのHIV陽性者の受け入れについて、大阪府等の地方行政の協力を得てHIV/エイズ研修会を開催した。血友病患者の受診動向や関節の理学療法のセルフマネージメントに関する調査、HIV領域のコンサルテーション・リエゾン精神医学診療体制の調査の結果も地域医療連携に重要な情報を提示した。
その他のインパクト
HIV領域のコンサルテーション・リエゾン精神医学診療体制の調査開発に関する研究成果については、患者参加型の学術集会(日本エイズ学会)のシンポジウムで発表を行った。研究成果の一部はホームページに集約されて公開されている(https://hiv-guidelines.jp/index.htm、https://osaka-hiv.jp/index.htm)。

発表件数

原著論文(和文)
6件
原著論文(英文等)
29件
その他論文(和文)
4件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
108件
学会発表(国際学会等)
8件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
3件
ガイドライン作成3件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
ホームページ1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kushida H, Watanabe D, Yagura H et al.
Evaluation of plasma doravirine concentrations in patients with HIV-1 undergoing hemodialysis.
J Infect Chemother , 29 (5) , 558-561  (2023)
10.1016/j.jiac.2023.02.003

公開日・更新日

公開日
2025-05-13
更新日
2025-06-11

収支報告書

文献番号
202319025Z