文献情報
文献番号
200935068A
報告書区分
総括
研究課題名
候補遺伝子DISC1の機能解析による統合失調症の病態理解と治療戦略の構築
課題番号
H19-こころ・若手-025
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
久保 健一郎(慶應義塾大学医学部 解剖学教室)
研究分担者(所属機関)
- 田中 大介(慶應義塾大学医学部 解剖学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
3,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
統合失調症候補遺伝子の一つ、Disrupted-In-Schizophrenia 1 (DISC1)は、精神疾患多発家系の遺伝学的研究で発見された。本研究では、発生段階マウス胎児脳への時期・部位特異的遺伝子導入を用い、脳の発生・発達過程におけるDISC1の機能異常によって生じる分子病態・神経病態を解明し、それに対する治療戦略を構築することを目的とした。
研究方法
DISC1およびその結合分子の生体脳内での機能を解析するため、子宮内胎児電気穿孔法を用いた大脳皮質前頭前野、海馬皮質、大脳皮質抑制性神経細胞への部位特異的な遺伝子導入法を確立した。また、DISC1やその結合分子に対するノックダウンベクターを作成し、時期・部位特異的な遺伝子導入を行った。遺伝子導入されたマウス脳組織を生後に解析し、どのような神経組織構築の異常が生じているのかを解析した。また、その機能異常が成熟後に与える影響の解析を行った。加えて、薬剤誘発性統合失調症動物モデルを用いて、細胞補充療法を用いた発症予防法の有効性を検証した。
結果と考察
特に大脳皮質前頭前野における発生期での機能異常が、成熟後に及ぼす影響について解析した。その結果、発生中マウス胎児脳前頭皮質における錐体細胞特異的なDISC1に対するノックダウンは、成熟後の中脳皮質ドパミン経路の成熟の異常と思春期以後の行動異常に結びつくことが判明した。また薬物誘発性モデルにおける統合失調症様行動異常を予防する新たな方法として、細胞補充療法が有効である可能性が示唆された。これは、今後の治療法・再発予防法の開発を考える上で重要な所見であると考えている。
結論
本研究の結果、DISC1の機能異常が神経細胞の発生・発達に障害を及ぼし、成熟後の統合失調症発症をもたらす可能性が示唆された。また発症・再発を予防する独自の新たなアプローチを検証した。
公開日・更新日
公開日
2010-06-15
更新日
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