自殺対策のための戦略研究

文献情報

文献番号
200935067A
報告書区分
総括
研究課題名
自殺対策のための戦略研究
課題番号
H17-こころ・戦略-030
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
財団法人精神・神経科学振興財団(財団法人精神・神経科学振興財団)
研究分担者(所属機関)
  • 高橋 清久(財団法人 精神・神経科学振興財団)
  • 山田 光彦(国立精神・神経センター精神保健研究所)
  • 稲垣 正俊(国立精神・神経センター精神保健研究所)
  • 大野  裕(慶應義塾大学保健管理センター)
  • 大塚耕太郎(岩手医科大学神経精神科学講座)
  • 岩佐 博人(青森県立精神保健福祉センター)
  • 粟田 主一(東京都健康長寿医療センター研究所)
  • 中村  純(産業医科大学精神医学教室)
  • 本橋  豊(秋田大学医学部社会環境医学講座)
  • 亀井 雄一(国立国際医療センター国府台病院)
  • 鈴木友理子(国立精神・神経センター精神保健研究所)
  • 平安 良雄(横浜市立大学大学院医学研究科精神医学教室)
  • 有賀  徹(昭和大学医学部救急医学講座)
  • 河西 千秋(横浜市立大学医学部精神医学教室)
  • 田中 克明(横浜市立大学付属市民総合医療センター)
  • 酒井 明夫(岩手医科大学神経精神科学講座)
  • 廣常 秀人(国立病院機構大阪医療センター)
  • 宮岡  等(北里大学医学部精神科学)
  • 朝田  隆(筑波大学大学院人間総合科学研究科)
  • 岸本 年史(奈良県立医科大学精神医学教室)
  • 大久保善朗(日本医科大学精神医学教室)
  • 人見 佳枝(近畿大学医学部精神神経科学教室)
  • 堀川 直史(埼玉医科大学総合医療センター神経精神科)
  • 岩熊 昭洋(国立病院機構水戸医療センター)
  • 穐吉條太郎(大分大学医学部附属病院)
  • 杉本 達哉(関西医科大学附属滝井病院)
  • 黒木 規臣(埼玉医科大学)
  • 三村  將(昭和大学病院)
  • 衞藤 暢明(福岡大学医学部 精神医学教室)
  • 岩田 仲生(藤田保健衛生大学医学部精神医学教室)
  • 河野 元嗣(筑波メディカルセンター病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
183,270,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国では1998年に年間自殺者が前年度比130%以上という、他国に類のない激増をみている。さらに、これ以降自殺者数は毎年3万人を超えたまま高止まりの状況が続いており、我が国において自殺者数の減少に向けた対策が急務とされている。そのため、全国各地の先駆的な取り組みの経験を踏まえ、大規模多施設共同研究で効果的な支援方法に関するエビデンスを構築して今後の政策立案に役立てることが必要である。そこで、「こころの健康科学研究事業戦略研究課題」の成果目標と研究内容が策定され、平成17年度から実施されることになった。
研究方法
本研究では、地域社会資源を複合的に用いることにより、医療モデルの枠を超えた自殺防止介入を行う。「複合的自殺対策プログラムの自殺企図予防効果に関する地域介入研究(Nocomit-J)」研究班では、複数地域を対象とした非無作為化比較介入研究を行う。「自殺企図の再発防止に対する複合的ケース・マネージメントの効果:多施設共同による無作為化比較研究(Action-J)」研究班では、救命救急センターに搬送された自殺未遂者を対象とした無作為化比較介入試験を行う。戦略研究担当は、国立精神・神経センターによる平常的かつ専門的な支援を受けられる体制が整えられている。
結果と考察
研究計画書に基づき、平成21年度も研究課題が継続実施された。具体的には,NOCOMIT-Jは研究計画書通り無事に介入期間が終了した。また,ACTION-J は研究計画書通り無事に登録期間が終了となり,最終的に914名の自殺未遂者が研究に登録された。本戦略研究の推進により,地域において利用可能な複合的自殺予防プログラム,自殺企図の再発防止法を確立し,我が国の自殺率の減少を目指した施策に大いに役立つものと期待している。
結論
国民的ニーズが高く確実に解決を図ることが求められている研究課題について、成果目標を設定した大規模な「戦略研究」の必要性が指摘されてきた。そこで、厚生労働科学研究費補助金において、従来の一般公募による研究課題に加えて、研究の成果目標及び研究の方法を定め、選定された機関が実際に研究を行う者や研究に協力する施設等を一般公募する新たな「戦略研究」が平成17年度から創設された。本研究の推進により、自殺防止対策について質の高い実証的根拠を提案することにより、国民の福祉の向上に直接的に寄与できる研究成果を生み出すことが期待できる。

公開日・更新日

公開日
2010-08-31
更新日
-

文献情報

文献番号
200935067B
報告書区分
総合
研究課題名
自殺対策のための戦略研究
課題番号
H17-こころ・戦略-030
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
財団法人精神・神経科学振興財団(財団法人精神・神経科学振興財団)
研究分担者(所属機関)
  • 髙橋 清久(財団法人 精神・神経科学振興財団)
  • 山田 光彦(国立精神・神経センター精神保健研究所)
  • 稲垣 正俊(国立精神・神経センター精神保健研究所)
  • 大野  裕(慶應義塾大学保健管理センター)
  • 大塚耕太郎(岩手医科大学神経精神科学講座)
  • 岩佐 博人(青森県立精神保健福祉センター)
  • 粟田 主一(東京都健康長寿医療センター研究所)
  • 中村  純(産業医科大学精神医学教室)
  • 本橋  豊(秋田大学医学部社会環境医学講座)
  • 亀井 雄一(国立国際医療センター国府台病院)
  • 鈴木友理子(国立精神・神経センター精神保健研究所)
  • 平安 良雄(横浜市立大学大学院医学研究科精神医学教室)
  • 有賀  徹(昭和大学医学部救急医学講座)
  • 河西 千秋(横浜市立大学医学部精神医学教室)
  • 田中 克明(横浜市立大学付属市民総合医療センター)
  • 酒井 明夫(岩手医科大学神経精神科学講座)
  • 廣常 秀人(国立病院機構大阪医療センター)
  • 宮岡  等(北里大学医学部精神科学)
  • 朝田  隆(筑波大学大学院人間総合科学研究科)
  • 岸本 年史(奈良県立医科大学精神医学教室)
  • 大久保善朗(日本医科大学精神医学教室)
  • 人見 佳枝(近畿大学医学部精神神経科学教室)
  • 堀川 直史(埼玉医科大学総合医療センター神経精神科)
  • 岩熊 昭洋(国立病院機構水戸医療センター)
  • 穐吉條太郎(大分大学医学部附属病院)
  • 杉本 達哉(関西医科大学附属滝井病院)
  • 黒木 規臣(埼玉医科大学・臨床精神医学)
  • 三村  將(昭和大学病院・臨床精神医学)
  • 衞藤 暢明(福岡大学医学部 精神医学教室)
  • 岩田 仲生(藤田保健衛生大学医学部精神医学教室)
  • 河野 元嗣(筑波メディカルセンター病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国では1998年に年間自殺者が前年度比130%以上という、他国に類のない激増をみている。さらに、これ以降自殺者数は毎年3万人を超えたまま高止まりの状況が続いており、我が国において自殺者数の減少に向けた対策が急務とされている。そのため、全国各地の先駆的な取り組みの経験を踏まえ、大規模多施設共同研究で効果的な支援方法に関するエビデンスを構築して今後の政策立案に役立てることが必要である。そこで、「こころの健康科学研究事業戦略研究課題」の成果目標と研究内容が策定され、平成17年度から実施されることになった。
研究方法
本研究では、地域社会資源を複合的に用いることにより、医療モデルの枠を超えた自殺防止介入を行う。「複合的自殺対策プログラムの自殺企図予防効果に関する地域介入研究(Nocomit-J)」研究班では、複数地域を対象とした非無作為化比較介入研究を行う。「自殺企図の再発防止に対する複合的ケース・マネージメントの効果:多施設共同による無作為化比較研究(Action-J)」研究班では、救命救急センターに搬送された自殺未遂者を対象とした無作為化比較介入試験を行う。戦略研究担当は、国立精神・神経センターによる平常的かつ専門的な支援を受けられる体制が整えられている。
結果と考察
平成17年度に組織された地域介入研究班と救急介入研究班の2つの研究班により策定された研究計画書に基づき,研究課題が継続実施された。具体的には,NOCOMIT-Jは研究計画書通り無事に介入期間が終了した。また,ACTION-J は研究計画書通り無事に登録期間が終了となり,最終的に914名の自殺未遂者が研究に登録された。本戦略研究の推進により,地域において利用可能な複合的自殺予防プログラム,自殺企図の再発防止法を確立し,我が国の自殺率の減少を目指した施策に大いに役立つものと期待している。
結論
国民的ニーズが高く確実に解決を図ることが求められている研究課題について、成果目標を設定した大規模な「戦略研究」の必要性が指摘されてきた。そこで、厚生労働科学研究費補助金において、従来の一般公募による研究課題に加えて、研究の成果目標及び研究の方法を定め、選定された機関が実際に研究を行う者や研究に協力する施設等を一般公募する新たな「戦略研究」が平成17年度から創設された。本研究の推進により、自殺防止対策について質の高い実証的根拠を提案することにより、国民の福祉の向上に直接的に寄与できる研究成果を生み出すことが期待できる。

公開日・更新日

公開日
2010-08-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2011-03-01
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200935067C

成果

専門的・学術的観点からの成果
2つの大型多施設共同研究「複合的自殺対策プログラムの自殺企図予防効果に関する地域介入研究(NOCOMIT-J)」、「自殺企図の再発防止に対する複合的ケース・マネジメントの効果:多施設共同による無作為化比較研究(ACTION-J)」が、それぞれの研究プロトコルに定めた通りに進捗した。NOCOMIT-Jは研究計画書通り無事に介入期間が終了した。また、ACTION-J は研究計画書通り無事に登録期間が終了となり、最終的に914名の自殺未遂者が研究に登録された。
臨床的観点からの成果
自殺の背景は多岐にわたる複合的なものであり、単一の施策では地域全体の自殺予防に効果がないことが分かっていた。また、過去の自殺企図がその後の自殺既遂の強力な危険因子であるというエビデンスが明らかとなっていた。本研究では、①地域への複合的な介入が本当に地域の自殺予防に効果があるのか、②救命された自殺未遂者を支援することがその後の再自殺予防につながるのか、についての科学的なエビデンスの創出を目指すことができた。
ガイドライン等の開発
NOCOMIT-Jでは、「複合的自殺予防対策プログラム」を、行政、保健医療福祉、職域、地域住民やNPOなどが連携して行った。ACTION-Jでは、救急搬送された自殺未遂者を対象に、救急医療と精神科救急が連携し、心理教育、受療支援、社会資源活用に関するコーディネーター等といった個別性の高いケースマネジメントが実施された。本研究の結果、複合的な自殺対策が実施可能であることが明らかとなったので、その資料を厚生労働省の自殺対策ホームページで公開した。
その他行政的観点からの成果
本研究は、厚生労働省の各担当課と協議しつつ、また、国立精神・神経センターの専門的支援を受け実施された。参加した地域自治体には、医療と福祉、また各種専門職、行政、地域住民との間でネットワークが形成され、それがうまく機能し、自殺対策に限らず、メンタルヘルスの向上という意味からも成果をあげた。このようなネットワークの形成は自殺対策は勿論のこと、うつ病、統合失調症、アルコール依存症、ひきこもり、虐待、その他、現代社会が抱える多くの精神保健の課題を解決する一助となる。
その他のインパクト
本研究は、世界に類をみない大型の国家プロジェクト研究として国際的にも高い注目を浴びている。また、日本でまだ数少ない行政サービスの事業化に直結する大型介入研究であり、ノウハウの蓄積が重要な課題である。「自殺対策のための戦略研究」の実施により、エビデンスに立脚した自殺対策に関する取り組みが大きく進展した。本研究で得られた膨大なデータを詳細に分析することで、地域の自殺予防に寄与する様々な背景要因が明らかになることが期待される。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
223件
その他論文(英文等)
26件
学会発表(国内学会)
278件
学会発表(国際学会等)
45件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
3件
救命救急センターでの自殺企図者等に対する精神保健指定医の関与が診療報酬化された。複合的自殺対策プログラムを各自治体が利用できるよう、厚生労働省ホームページにて公開した。人材育成の基盤を形成した。
その他成果(普及・啓発活動)
3件
複合的自殺予防対策プログラムが自治体や民間団体等が連携し実施された。自殺未遂者を対象に、医学的治療に加え、救急医療と精神科が連携し、ケースマネジメントが実施された。多くの支援者が育成された。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Ono Y, Awata S, Iida H,et al.
A community intervention trial of multimodal suicide prevention program in Japan: a novel multimodal community intervention program to prevent suicide and suicide attempt in Japan, NOCOMIT-J.
BMC Public Health , 9 , 315-322  (2008)
原著論文2
Hirauasu, Y, Kawanishi C, Yonemoto N, et al.
A ramdomized controlled multicenter trial of post-suicide attempt case manage- ment for the prevention of further attempts in Japan (ACTION-J).
BMC Public Health , 9 , 364-374  (2009)

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-