炎症性Th17細胞を標的とする免疫性神経疾患の画期的診断・予防・治療法開発に関する研究

文献情報

文献番号
200935065A
報告書区分
総括
研究課題名
炎症性Th17細胞を標的とする免疫性神経疾患の画期的診断・予防・治療法開発に関する研究
課題番号
H21-こころ・一般-018
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
山村 隆(国立精神・神経医療研究センター 神経研究所免疫研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 三宅 幸子(国立精神・神経医療研究センター 神経研究所免疫研究部)
  • 大木 伸司(国立精神・神経医療研究センター 神経研究所免疫研究部)
  • 荒浪 利昌(国立精神・神経医療研究センター 神経研究所免疫研究部)
  • 佐藤 準一(明治薬科大学薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
24,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
強い炎症誘導能を有するTh17細胞が発見され、免疫・アレルギー疾患研究が大きく様変わりしている。Th17細胞は炎症性サイトカインIL-17を産生し組織破壊的炎症を惹起する。本研究では、免疫性神経疾患におけるTh17細胞の役割を明確にし、同細胞を標的とする診断・予防・治療法を開発することを目的とする。特に多発性硬化症(MS)患者末梢血T細胞で発現の亢進している核内受容体NR4A2の病態への関与、腸内細菌とTh17細胞の関連などに中心的に取り組んだ。
研究方法
EAE実験はB6マウスにMOG35-55ペプチド感作によって誘導し、EAEを発症したマウスの中枢神経浸潤T細胞を用いて、IL-17産生とNR4A2発現の密接な関係を証明した。アテロコラーゲン処理したNR4A2 siRNAを用いて、EAEおよびEAUの治療実験(ブドウ膜炎)を行い、NR4A2阻害の治療効果を確認した。Th17細胞のマーカー分子であるRORγtおよびIL-17のレポーターマウスを導入し、抗生物質投与による腸内細菌の変化がTh17細胞数の変化に及ぼす影響を詳細に解析する実験系を確立した。
結果と考察
NR4A2がTh17細胞のIL-17およびIL-21の産生に必須であることを示し、さらにNR4A2のsiRNA生体内投与によって、MSの動物モデルEAEの発症が抑制されることを示した。これらの結果は同分子が重要な治療薬開発の標的になることを示している。そこで我々はコンピュータ分子モデル解析によりNR4A2のアンタゴニストを同定し、それらの中にIL-17産生抑制活性を有するものを複数同定した、これらの分子をリード化合物として、新たな低分子治療物質を同定する研究に取りかかった。また、EAE、EAU、STZ誘導糖尿病、IL-23誘導皮膚炎モデルを用いて、末梢血NR4A2発現と病態の関係を解析した結果、NR4A2はTh17細胞の関わる炎症病態モデルの末梢血T細胞で発現が亢進することが明らかになり、新たなバイオマーカーとして利用できる可能性が示唆された。NR4A2のconditional knockoutマウスを確立し、次年度の研究体制を整えた。
結論
NR4A2はTh17細胞の介在する多発性硬化症などの自己免疫疾患の重要な治療標的であり、今後同分子の活性を抑制する薬剤が開発できる可能性がある。

公開日・更新日

公開日
2010-08-31
更新日
-