日本におけるHIV感染症の動向把握に関する研究

文献情報

文献番号
202319018A
報告書区分
総括
研究課題名
日本におけるHIV感染症の動向把握に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23HB1002
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
松岡 佐織(国立感染症研究所 エイズ研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • Stuart Gilmour(スチュアート ギルモー)(聖路加国際大学公衆衛生大学院)
  • 長島 真美(東京都健康安全研究センター 微生物部)
  • 塩野 徳史(大阪青山大学 健康科学部 看護学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
14,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HIV感染拡大抑制に向け、精度の高いHIV発生動向の把握が重要である。我々は先行研究(厚生労働科学研究費補助金エイズ対策政策研究事業)において新規HIV診断者にしめる早期診断者割合の把握に向けた地域別血清学的調査を実施する連携体制を構築し、この早期診断率を指標に我が国において診断率が95%に達していないことを示した。この報告はバイオマーカーを指標とした国内初のHIV感染者数の推定値である。その一方で、血清学的地域が実施不可能な地域の推定値に課題が残っている。本研究ではこの高い独創性を維持・活用し、血清学的調査を基盤とした早期診断率の把握、日本国内HIV感染者数の推計、およびHIV診断体制におけるCOVID-19流行の影響の評価等、詳細な日本国内の発生動向を把握する。
研究方法
1. 地域別早期診断率の推定
 大都市圏における早期診断率の推計に向け、東京都、大阪府、福岡県を対象として保健所等の無料匿名検査にてHIV陽性が判明した残余検体を用いて血清学的手法にて早期診断者を同定し、暦年の新規診断者に占める早期診断者割合を評価した。
2. 大都市圏以外の地域における早期診断率の把握に向けた新規指標の開発
 2000年以降に日本国内で実施されたHIV疫学調査、質問調査に関して、すでに学術誌、学術集会、研究報告書等に報告され公開されている情報を対象として、先行レヴューを実施した。またこれまで充分な疫学データがない日本に居住する外国人のHIV検査受検行動および予防行動に関してより詳細な情報を収集するため受検行動、性感染症既往歴、PrePの経験歴等について質問紙調査を実施した。
3. 国内疫学指標を活用可能にするHIV感染者数推計に向けた新規モデルの開発
 欧州疾病対策予防センター(ECDC)のCD4-depletionモデルなど、すでに公開されている国際標準モデルを比較検討し、日本国内HIV感染者数推定に用いることの妥当性、本研究で開発を進める日本国内疫学データを基にした指標をHIV感染者推計に活用する場合の課題を整理した。
結果と考察
大都市圏の血清学コホートの実施体制は、令和5年度に新たに北九州市が協力機関のとして加わった。北九州市の動向分析に関しては現在検体収集、血清学分析を進めている。2020年以降、大都市圏において新規診断者にしめる感染約6か月以内の早期診断者割合はいずれの地域においても一旦低下したものの、以後回復傾向を示した(暫定)。一方、回復するまでの期間、検査あたりの陽性数に関しては地域差があることが示唆された。早期診断率の変動が、診断の早期化・遅延であるのか、新規HIV感染発生数(Incidence)の上昇であるのかは、診断時CD4数等の関連分析を進めることが必須である。現在情報収集を進めている。
 日本に居住する外国人を対象とした質問紙調査から、HIV検査受検経験があったのは40.3%、うち日本国内での受検経験は63.8(全体の25.7%)であった。また過去1年間に受検歴が有ったのは全体の20.3%であった。先行研究のMSM等の結果と比較すると受検率は上回っているものの、回答者の日本語能力に依存している可能性が高く、実際の数値より高い割合であったと考えられる。
結論
日本国内疫学データを指標とした国内HIV感染者数・未診断数の推定、および詳細な動向解析にむけ、令和5年度は地域別血清学的コホートの実施、先行レビュー、質問紙調査の実施により国際指標の開発を推進した。次年度以降、収集したデータの関連分析、新規数理モデルの構築を進めることを計画している。

公開日・更新日

公開日
2025-05-13
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2025-05-13
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202319018Z