文献情報
文献番号
202319013A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV感染血友病に対する悪性腫瘍スクリーニング法と非侵襲的治療法の確立のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22HB1003
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
渡辺 恒二(国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センター)
研究分担者(所属機関)
- 大野 達也(群馬大学)
- 永田 尚義(東京医科大学 消化器内視鏡学)
- 下村 昭彦(国立国際医療研究センター病院 乳腺・腫瘍内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
27,687,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
血友病HIV患者に発生する悪性腫瘍の早期発見、および、最適な治療法を提供する。そのためのデータを創出する。
研究方法
分担1(渡辺)先行研究で確立した血友病HIV患者56名に対する癌スクリーニングを実施する。1クールの検査で、甲状腺・前立腺を含んだ胸腹部造影CT、上部消化管内視鏡検査、便潜血、腫瘍マーカーの測定を行う。3年間に2クールの検査を行い、罹患率と年次推移を解析する。
分担2(大野) 重粒子線治療は、群馬大学重粒子線医学センターに設置された医用重粒子加速器および照射装置を用いて炭素イオン線照射を行う。
分担3(永田)血友病HIV患者の内視鏡的処置 (生検、粘膜切除術切除、粘膜下層剥離術など) の安全性・有効性に関わるデータを構築し、非血友病のHIV患者、非HIV患者とのデータを比較解析することで血友病患者での安全性・有効性の特徴を明らかにする。
分担4(下村)血友病HIV患者に発生する NADM に対する最適な治療選択を創出するため、血友病を含むHIV患者の NADM の治療成績と予後を包括的に解析する。血友病HIV患者で NADM が診断された場合の非侵襲的治療の実施に必要なデータを供出する。
分担2(大野) 重粒子線治療は、群馬大学重粒子線医学センターに設置された医用重粒子加速器および照射装置を用いて炭素イオン線照射を行う。
分担3(永田)血友病HIV患者の内視鏡的処置 (生検、粘膜切除術切除、粘膜下層剥離術など) の安全性・有効性に関わるデータを構築し、非血友病のHIV患者、非HIV患者とのデータを比較解析することで血友病患者での安全性・有効性の特徴を明らかにする。
分担4(下村)血友病HIV患者に発生する NADM に対する最適な治療選択を創出するため、血友病を含むHIV患者の NADM の治療成績と予後を包括的に解析する。血友病HIV患者で NADM が診断された場合の非侵襲的治療の実施に必要なデータを供出する。
結果と考察
分担1(渡辺):73名の登録を完了し、2回のスクリーニング検査を実施する予定で、前研究班から蓄積されたデータと併せ、蓄積された88名の被験者データから、血友病 HIV 感染者での新規 NADM 発症リスクは、5年間で 10% 前後と推定され、非常に高頻度であることが示された。『血友病 HIV/HCV 感染者に対する癌スクリーニングの手引き』を作成し、エイズ治療・研究開発センター・救済医療室のホームページに公開するとともに、QRコードにて全国の医療施設からアクセスできるようにした。長期 HIV 感染が発癌に与える影響を評価する目的で、潜伏感染ウイルス量と NADM 発症有無の相関を解析する予定で、既に60件以上の潜伏感染ウイルス量の測定が終了している。
分担2(大野):2024年3月までに6例7病変が登録された。1例を除き、手術、TACE、動注、X線治療、もしくはラジオ波といった前治療を受けていた。最終観察時点で、重粒子線照射部位は全例で制御されていた。治療後3か月以内の早期有害反応は、Grade1の皮膚炎が1例に認められたのみで、晩期有害反応についてもGrade2以上の反応は認められなかった。再発形式に関しては、6例中4例で肝内他部位の再発が認められた。他癌死1例と原病死1例以外は生存中である。以上から、血友病/HIV/HCV重感染患者における肝臓癌に対する重粒子線治療は安全で局所効果も良好と考えられる。
分担3(永田):日本で初めて血友病患者の内視鏡処置に伴う偶発症の詳細を明らかにした。血友病患者が受診した内視鏡と臨床情報を詳細に収集し、患者背景、処置内容、偶発症を調べた。内視鏡処置に伴う出血率は一般集団と比較しても低率であり血友病患者の内視鏡処置の安全性が担保できることが示唆された。また、上部・下部内視鏡処置に伴う重篤な偶発症は1例も認めなかった。出血に対する治療は内視鏡止血術と血友病製剤の補充でコントロール可能であり、IVRや外科治療が必要であった者はいなかった。
分担4(下村):2011年から2022年までに国立国際医療研究センターでがんと診断されたHIV患者の臨床情報を収集した。237例ががんと診断され、225例が男性であった。102例(43.1%)がエイズ関連悪性腫瘍(ADM)と診断され、135例(56.9%)が非エイズ関連悪性腫瘍(NADM)であった。ADMで多かったがん種は非ホジキンリンパ腫(53.9%)、カポジ肉腫(43.1%)、子宮頚がん(3%)であり、NADMで多かったがん種は結腸直腸がん(14.1%)、肛門管がん(11.1%)であった。予後はADM, NADM で差異が無かったが、NADM で長期生存率が低い可能性が示唆された。また、NADM 患者に対する標準抗癌剤治療中の新たな日和見感染発症は1例のみで、HIV 感染を有する患者であっても、抗HIV薬内服で免疫状態が安定していれば、標準抗癌剤治療を安全に行えることが明確となった。本結果を論文として公表した。
分担2(大野):2024年3月までに6例7病変が登録された。1例を除き、手術、TACE、動注、X線治療、もしくはラジオ波といった前治療を受けていた。最終観察時点で、重粒子線照射部位は全例で制御されていた。治療後3か月以内の早期有害反応は、Grade1の皮膚炎が1例に認められたのみで、晩期有害反応についてもGrade2以上の反応は認められなかった。再発形式に関しては、6例中4例で肝内他部位の再発が認められた。他癌死1例と原病死1例以外は生存中である。以上から、血友病/HIV/HCV重感染患者における肝臓癌に対する重粒子線治療は安全で局所効果も良好と考えられる。
分担3(永田):日本で初めて血友病患者の内視鏡処置に伴う偶発症の詳細を明らかにした。血友病患者が受診した内視鏡と臨床情報を詳細に収集し、患者背景、処置内容、偶発症を調べた。内視鏡処置に伴う出血率は一般集団と比較しても低率であり血友病患者の内視鏡処置の安全性が担保できることが示唆された。また、上部・下部内視鏡処置に伴う重篤な偶発症は1例も認めなかった。出血に対する治療は内視鏡止血術と血友病製剤の補充でコントロール可能であり、IVRや外科治療が必要であった者はいなかった。
分担4(下村):2011年から2022年までに国立国際医療研究センターでがんと診断されたHIV患者の臨床情報を収集した。237例ががんと診断され、225例が男性であった。102例(43.1%)がエイズ関連悪性腫瘍(ADM)と診断され、135例(56.9%)が非エイズ関連悪性腫瘍(NADM)であった。ADMで多かったがん種は非ホジキンリンパ腫(53.9%)、カポジ肉腫(43.1%)、子宮頚がん(3%)であり、NADMで多かったがん種は結腸直腸がん(14.1%)、肛門管がん(11.1%)であった。予後はADM, NADM で差異が無かったが、NADM で長期生存率が低い可能性が示唆された。また、NADM 患者に対する標準抗癌剤治療中の新たな日和見感染発症は1例のみで、HIV 感染を有する患者であっても、抗HIV薬内服で免疫状態が安定していれば、標準抗癌剤治療を安全に行えることが明確となった。本結果を論文として公表した。
結論
血友病HIV患者に発症する非エイズ関連悪性腫瘍 (NADM) の早期発見と非侵襲的治療法の研究と診療体制整備のため、癌スクリーニング検査を継続するとともに、全国の診療施設で参照可能な癌スクリーニングの手引の発行、群馬大学における摘出不能肝細胞癌に対する重粒子線治療の大阪地区や九州地区での実施拡充などにより、これまでの研究成果を全国へ展開する。新たに、血友病患者における内視鏡治療や抗がん剤治療の安全性や有効性について検証を実施しており、研究期間中に解析結果を報告する予定である。
公開日・更新日
公開日
2025-05-01
更新日
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