自律神経機能異常を伴い慢性的な疲労を訴える患者に対する客観的な疲労診断法の確立と慢性疲労診断指針の作成

文献情報

文献番号
200935061A
報告書区分
総括
研究課題名
自律神経機能異常を伴い慢性的な疲労を訴える患者に対する客観的な疲労診断法の確立と慢性疲労診断指針の作成
課題番号
H21-こころ・一般-014
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
倉恒 弘彦(関西福祉科学大学 健康福祉学部)
研究分担者(所属機関)
  • 西沢良記(大阪市立大学大学院医学研究科代謝内分泌病態内科学)
  • 近藤一博(東京慈恵会医科大学医学部ウイルス学講座)
  • 伴信太郎(名古屋大学医学部附属病院・総合診療医学講座)
  • 下村登規夫(独立行政法人国立病院機構さいがた病院、神経内科学)
  • 久保千春(九州大学大学院医学研究院心身医学・心身医学)
  • 野島順三(山口大学大学院医学系研究科・生体情報検査学)
  • 渡辺恭良(理化学研究所・理化学研究所・分子イメージング科学研究センター)
  • 酒井一博(財団法人労働科学研究所、労働衛生学)
  • 小泉淳一(横浜国立大学大学院工学研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
18,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現在の疲労診断基準は症状に基づく操作的診断法であり、客観性に欠けるため、医師から信頼されておらず、疲労診療はうまく稼動していない。そこで、客観的な診断法を確立し、疲労診療の手引きとなる慢性疲労診断指針の作成を行う。
研究方法
代表的な慢性疲労診療施設である4施設において疲労の評価に用いられているいくつの評価系について、個々の検査法の感度と特異度を決定し、客観的な疲労評価法を確立する。さらに、客観的な疲労評価系を取り入れた慢性疲労診断指針の作成を目指す。
結果と考察
平成21年度は以下の結果を得た
1. 精神作業疲労の客観的な指標として「反応時間」、「変動係数」、「LF/HF比」が有用であることを見出した。
2. 788人の透析患者調査にて、高い疲労得点を有する患者において心筋梗塞や脳卒中などの心血管イベントのリスクが2倍以上増加していることを確認し、疲労の評価は身体疾患の予後とも深く関わっていることを明らかにした。
3. マウスの疲労モデルを検証することにより、疲労因子(FF)を同定することに成功、FFは、ヒトの末梢血を検体とした検査においても、客観的に疲労を検査できることを見出した。
4. CFS患者には自律神経異常ならびに中枢神経異常が存在していることを示した。
5. 健常人においてもCFS患者と同様に疲労の程度が大きい程、副交感神経機能が低下し、交感神経が優位な状態となることを見出した。
6. 酸化ストレスの正常値を定めるとともに、女性は男性に比して高いこと、加齢により上昇することを確認した。CFS患者では酸化ストレス値が有意に上昇していることを見出した。
7. 倫理委員会の承認を得て、[11C]PK-11195を用いて慢性疲労症候群患者の脳内炎症像を探る研究に着手した。現在、4名の患者の撮像が終了した。
8. 自律神経機能測定とその機能指標計算において、最も合理的な測定方法と計算方法を周波数解析時系列単位の整合、起立試験区域での変動特性値定義について標準化した。
9. 疲労関連・危険因子調査を実施するため、労働科学研究所に調査チームを立ち上げ、先行研究レビュー、疫学調査項目の検討、疫学調査手法の検討、働き方の現状と疲労状態についてヒアリング調査を実施した。
結論
疲労の客観的な評価に向けた検討が進められており、平成22年度末には慢性疲労病態を評価し客観的な診断法を確立する。さらに、客観的な疲労マーカーを用いた慢性疲労診断指針を作成する。

公開日・更新日

公開日
2010-08-31
更新日
-