iTestingチャネルによるHIV検査体制の構築と確立のための研究

文献情報

文献番号
202319011A
報告書区分
総括
研究課題名
iTestingチャネルによるHIV検査体制の構築と確立のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22HB1001
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
今橋 真弓(柳澤 真弓)(独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター 臨床研究センター 感染・免疫研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 椎野 禎一郎(国際医療研究センター 臨床研究センター・データサイエンス部)
  • 金子 典代(公立大学法人 名古屋市立大学 大学院看護学研究科 国際保健看護学)
  • 野口 靖之(愛知医科大学 医学部 産婦人科学教室)
  • 吉田 理加(愛知県立大学 外国語学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
13,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HIV検査提供が公衆衛生上の緊急事態においても維持され、アクセスしやすい多様なHIV検査体制の構築と評価が求められている。本研究の目的は、現行のHIV検査体制に加え、受検者と医療従事者にとって利用可能な検査の導入を進めるための基礎資料(マニュアル)を作成することである。
研究方法
研究対象地域
本研究の取り組みの結果(陽性受検者の受診)が名古屋医療センターで把握できる愛知県・名古屋市を対象地域とした。

分子疫学調査:研究分担者 椎野禎一郎
2022年に東海地方の医療機関に来院した新規HIV感染者から採取されたウイルスのpol領域336症例分を解析し、伝播クラスタ(dTC)の同定と解析を行った。

検査・アンケートの実施:研究分担者 金子典代・研究代表者 今橋真弓
受検者への質問紙調査データ(N=589)を解析し、ゲイバイセクシュアル男性群(GBM)とnon-GBM、および生涯でHIV検査を受けたことがある群とない群の比較を行った。

アウトリーチ活動:研究分担者 吉田理加
HIV検査の重要性を説明する啓発資材の作成と設置、検査の広報、アンケートの作成・解析、多言語対応したiTestingウェブサイトの作成、各コミュニティでの啓発活動を行った。

iTesting@Clinic体制構築に向けた取り組み:研究分担者 野口靖之
iTesting@Clinic運用に向けた事前調査として、総合病院やプライベートクリニックにアンケートを依頼し、対面またはZOOMを用いて調査を行った。
結果と考察
結果と考察
分子疫学調査:椎野
2022年の新規感染者では、CRF01_AEの検出数が減少していた。過去3年間、サブタイプBの孤立例が13%程度を維持しており、HIV流行や検査動機に質的変化がある可能性が示唆された。コロナ禍における検査遅れの影響が観察された。

検査の実施:金子・今橋
iTesting@Nagoyaは名古屋市と協力し、6/25・9/3・12/10の計3回で934人が受検した。各検査陽性率はHIV 0.75%、TP抗体 11.0%、RPR 3.7%、HBs抗原 0.32%、HCV抗体 0.21%であった。当日キャンセル率は10%・13%・9.8%であった。iTesting@Aichi&NMCは724件の検査を行い、HIV陽性率1.1%、RPR 3.5%、TP抗体 5.8%であった。

受検者アンケート解析:金子
iTestingを初めて受検した者は、名古屋市のHIV検査情報サイト(34.7%)、出会い系アプリ広告(22.5%)、地下鉄広告(15.6%)から情報を得ていた。MSM(N=329)とnon-MSM(N=170)の比較では、MSMの方が若く、名古屋市以外からの受検者割合が高く、HIV検査経験が多く、性感染症の既往が有意に高かった。外国籍受検者の予約をスムーズに行うための仕組み改善が必要である。

アウトリーチ活動:吉田
多言語ウェブサイトとHIV検査の重要性を説明する多言語スライドを作成し、昨年度の4言語に加え中国語とインドネシア語を追加した。啓発動画も6言語に対応し、広報カードを愛知県内の自治体や国際交流協会に配布した。HIVなどの性感染症はタブー視されているため、情報拡散協力者に配慮が必要である。

クリニックでの検査体制構築:野口
検査実施前の説明について、3施設ともにWEBのiTesting説明文程度なら可能との意見があった。希望者の質問対応については医療センターでの一括対応が望まれた。レディースクリニックでは初診料が得られず、採血量と検体管理料金を含めて10000円程度の経費が必要との意見があった。土曜午前診と平日夕診の実施は1施設が検体回収できれば可能であった。針刺し事故時の対応ができないことに不安があり、匿名検査の課題とされた。
結論
2022年に東海地方の医療機関に来院した新規HIV感染者からpol領域の塩基配列を採取し、SPHNCSを用いてdTCの同定を行った。コロナ禍以前に伝播していた系統が、コロナ禍中は検出できず、2022年に再度検出されたdTCがあり、一部のキーポピュレーションにおける検査の遅れが示唆された。iTestingだけで年間1658件の検査を提供でき、MSMとnon-MSMの受検者の背景比較も行った。多言語広報の推進と啓発動画の作成を行い、iTesting@Clinicの導入について具体的な問題点が明らかになり、対応策が必要とされた。

公開日・更新日

公開日
2025-05-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2025-05-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202319011Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
17,550,000円
(2)補助金確定額
15,206,000円
差引額 [(1)-(2)]
2,344,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 5,309,649円
人件費・謝金 1,540,794円
旅費 1,190,380円
その他 3,655,822円
間接経費 3,510,000円
合計 15,206,645円

備考

備考
千円未満切り捨てのため

公開日・更新日

公開日
2025-05-01
更新日
-