オリンピック・パラリンピック・万博等の外国人の流入を伴うイベントの開催に伴う性感染症のまん延を防ぐための介入方法の確立と国際協力に関する研究

文献情報

文献番号
202319009A
報告書区分
総括
研究課題名
オリンピック・パラリンピック・万博等の外国人の流入を伴うイベントの開催に伴う性感染症のまん延を防ぐための介入方法の確立と国際協力に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
21HB1009
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
田沼 順子(国立研究開発法人国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センター)
研究分担者(所属機関)
  • Stuart Gilmour(スチュアート ギルモー)(聖路加国際大学公衆衛生大学院)
  • 村松 崇(東京医科大学病院臨床検査医学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
8,373,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、オリンピックや万博といった国際イベント開催を契機とした性感染症のまん延を防ぎつつ、かつエイズ流行終結に向けた国際連携の取り組みを推進することを目的に計画された。
研究方法
2023年度は、1.領域横断的な性感染症対策に関する研究、2.UNAIDS 95-95-95推計法の日本における最適化に関する研究、3.エイズ関連政策の国際比較に関する研究、の3つの課題に取り組んだ。課題1では、UNAIDS世界エイズ調査の報告項目のうち、日本から報告すべき項目を抽出する。またSpectrum以外の手法を用いた推計値に関する文献をシステマティックレビューにより調べた。課題2では、Spectrum®を用いて日本のHIVケアカスケード推計する際の手順をまとめ、最も適した設定を見出すための感度分析を行った。課題3では、海外のエイズ政策について情報収集と日本で行うべき政策の提言することを目的に、日本と海外の専門家や市民団体の代表者らによる国際円卓会議を開催し論点を記述的にまとめたほか、文献レビューを行った。
結果と考察
課題1.領域横断的な性感染症対策に関する研究
UNAIDS世界エイズ調査の報告項目のうち、日本から報告すべき項目を抽出した。また、学術文献・公的機関の報告書・レセプトデータ等の公的情報源から、日本のデータを収集した。また、Spectrum以外の手法を用いた推計値に関する文献をシステマティックレビューにより調べ、6つの文献を抽出した。
課題2.UNAIDS 95-95-95推計法の日本における最適化に関する研究
Spectrum®を用いて日本の95-95-95を推計する際の手順をまとめ、最も適した設定を見出すための感度分析を行っ手手順書にまとめた。2022年末時点での日本の第1と第2の95達成率は、それぞれ98%と95%であった。Spectrum活用にあたっては、欠損値の補完方法、特にART実施者数や死亡者数の推計に課題があることが明らかとなった。
課題3.エイズ関連政策の国際比較に関する研究
Fast Track Cities Initiativesという国際的なエイズ対策の都市のネットワークを通じ、海外の専門家と連携関係を構築し、2023年7月14日と2023年12月2日の2回、日本エイズ学会と国際エイズケア提供者協会との共催で国際Workshopを開催した。今年度はHIV郵送検査とエイズ政策の立案・実装過程における市民参画のあり方について論点を整理し報告書を作成した。エイズ流行終結に向け、利用者の目線にたってHIV検査提供体制や予防の多様化を行い、複合的な施策をとることが不可欠であることが改めて示された。
結論
本研究は、ケアカスケード(95-95-95)といったHIV政策において極めて重要な政策指標の評価法開発に貢献した。Spectrumの活用について検討したが、欠損しているパラメーターの補完方法や、Spectrum以外の推計方法について、今後も検討を重ねる必要があると考えられた。また、Fast Track Cities Initiativesのネットワークを通じ、効率よく各国の政策や実装モデルについて情報収集できた。国境を越えて拡大する感染症の対策は、国際協調および国際連携なしには成立せず、エイズもまた同様である。引き継きこのような国際的な取り組みが必要である。

公開日・更新日

公開日
2025-05-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2025-05-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202319009B
報告書区分
総合
研究課題名
オリンピック・パラリンピック・万博等の外国人の流入を伴うイベントの開催に伴う性感染症のまん延を防ぐための介入方法の確立と国際協力に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
21HB1009
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
田沼 順子(国立研究開発法人国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センター)
研究分担者(所属機関)
  • Stuart Gilmour(スチュアート ギルモー)(聖路加国際大学公衆衛生大学院)
  • 村松 崇(東京医科大学病院臨床検査医学科)
  • 杉浦 康夫(国立国際医療研究センター 国際診療部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、国際的イベントや訪日外国人に対するHIV・性感染症対策のあり方を検討し、国内のセクシャル・ヘルス関連施策の整備・強化に貢献するとともに、構築したネットワークを通じて2030年までのHIV流行制圧に向けて必要なエビデンスを収集し、政策提言を行うことを目的とする。
研究方法
研究期間中、ニーズや政策に応じて分担課題を調整した。それら分担課題は、他国のエイズ政策やその実装におけるベストプラクティスモデルを調査し政策提言を行う<政策提言課題>と、国際的な基準によるエイズ政策の評価に関する<政策評価課題>、訪日外国人の対応を行う<訪日外国人対応課題>の3つに分類される。
政策提言課題は、国際的イベントと性感染症対策に関する研究(2021年度, 田沼)、領域横断的な性感染症対策に関する研究(2022-2023年度, 田沼)、エイズ関連政策の国際比較に関する研究(2023年度, 村松)が含まれる。政策評価課としては、HIV関連政策立案に資する国際協力とエビデンス構築に関する研究(2021年度, ギルモー)、エイズ対策に関する政策評価に関する研究(2022年度, ギルモー)、UNAIDS 95-95-95推計法の日本における最適化に関する研究(2023年度, ギルモー)が含まれる。また、訪日外国人対応課題として、訪日外国人へのセクシャル・ヘルス関連情報の提供に関する研究(2021-2022年度, 杉浦)を行った。
結果と考察
<政策提言課題>
・2021-2023年にかけて、国連合同エイズ計画、グローバルファンド、英国やオーストラリアの国際NPOといった国際団体などの有識者らを招いた国際的な円卓会議を計5回開催し、特に郵送検査やエイズ対策への市民参画に関する提言を含む報告書を作成し公表した。
・世界エイズ調査の報告指針に基づき、公的情報源から日本の各種指標を収集した。市民・当事者の政策立案への参画に関する項目においては、市民・当事者団体に対しアンケート調査を行った。また、後述のSpectrum以外の手法を用いた95-95-95指標に関する推計値に関する6文献をシステマティックレビューにより抽出した。
・複合的予防策の実装度と将来のHIV感染者動向について数理モデル研究を行った。
<政策評価課題>
・HIV罹患率や95-95-95指標に関する疫学推計について、UNAIDSが開発したSpectrumというソフトウエアを用い、日本での推計手順をまとめ、最も適した設定を見出すための感度分析を行った。2022年末時点での日本の第1と第2の95達成率は、それぞれ98%と95%であった。
<訪日外国人対応課題>
・多言語のセクシャルヘルス情報発信サイトであるTokyo Sexual Health の開発を行いアクセスを解析した。同サイトは、東京2020公認プログラムとしての認証を受けた。
結論
本研究は、ケアカスケード(95-95-95)といったHIV政策において極めて重要な政策指標の評価法開発に貢献した。Spectrumの活用について検討したが、欠損しているパラメーターの補完方法や、Spectrum以外の推計方法について、今後も検討を重ねる必要があると考えられた。また、Fast Track Cities Initiativesのネットワークを通じ、効率よく各国の政策や実装モデルについて情報収集できた。国境を越えて拡大する感染症の対策は、国際協調および国際連携なしには成立せず、エイズもまた同様である。引き継きこのような国際的な取り組みが必要である。

公開日・更新日

公開日
2025-05-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2025-05-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202319009C

成果

専門的・学術的観点からの成果
国連合同エイズ計画の報告指針に基づき、学術文献・公的機関の報告書等の公的情報源から日本の各種指標を収集し、更に日本におけるHIV罹患率(SDGs3.3.1)および95-95-95推計法を考案して、世界エイズ調査日本からの報告案を作成した。日本のエイズ政策のインパクトを国際的な基準に沿って評価することに貢献したほか、UNAIDS・WHO・欧州エイズ学会らと国際的な会議を開催し、日本人研究者と国際団体との連携関係構築に貢献した。
臨床的観点からの成果
本研究は、公衆衛生学的視点でエイズ政策を評価することを目的とし、臨床研究ではない。しかし、本研究で見いだされる死亡率や罹患率といった基礎的なデータは、早期発見の重要性や曝露前予防の推奨に有益である。結果的に、当事者・患者と医療者間の医療上の意思決定支援に貢献できた。
ガイドライン等の開発
Spectrum®を用いて日本のHIVケアカスケード推計について、HIV感染者の死亡率など、欠損しているパラメーターの補完方法を考案し、最も適した設定を見出すための感度分析を行った。2022年末時点での日本の第1と第2の95達成率は、それぞれ98%と95%であった。これらの結果をUNAIDSの世界エイズ調査の事務局らと頻繁に協議し、そのデータの適格性について詳細な検討を行った。2024年度以降、その手順を最終化し、手引きとしてまとめる予定である。
その他行政的観点からの成果
Spectrum®を用いて日本のHIVケアカスケードを推計し、またSpectrum以外の手法を用いた推計値につきシステマティックレビューを行った。これらの結果は2023年3月22日の厚生労働省エイズ動向委員会の参考資料に用いられ、今後も同委員会の資料として活用される予定である。訪日外国人対応として多言語の性感染症情報発信サイトTokyo Sexual Healthを開発し、2021年の東京オリンピック・パラリンピックの公認プログラムに認定された。
その他のインパクト
ケアカスケード(95-95-95)といったHIV政策において極めて重要な政策指標の評価法開発に貢献したほか、国際的なWorkshopやシンポジウム開催を通じて、UNAIDS、WHO、グローバルファンドなどの国際団体や、海外の研究者と日本人研究者との交流の機会を創出した。このような本研究活動が、日本エイズ学会と欧州エイズ学会との人材育成に関する覚書締結につながった。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
23件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
2件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
エイズ動向委員会での議論1件、東京2020公認プログラム1件
その他成果(普及・啓発活動)
6件
多言語性感染症・HIV情報発信ホームページ1件、国際シンポジウム 5件(UNAIDSとの合同開催4件、欧州エイズ会議との合同開催1件)

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Wang Y, Tanuma J, Li J et al.
Elimination of HIV transmission in Japanese MSM with combination interventions
Lancet Reg Health West Pac , 23 , 100467-  (2022)
doi: 10.1016/j.lanwpc.2022.100467.

公開日・更新日

公開日
2025-05-01
更新日
-

収支報告書

文献番号
202319009Z