医療観察法における医療の質の向上に関する研究

文献情報

文献番号
200935057A
報告書区分
総括
研究課題名
医療観察法における医療の質の向上に関する研究
課題番号
H21-こころ・一般-010
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
中島 豊爾(地方独立行政法人 岡山県精神科医療センター 管理部・医療部)
研究分担者(所属機関)
  • 村上 優(国立病院機構 琉球病院)
  • 平林 直次(国立療養所多磨全生園(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター病院))
  • 来住 由樹(地方独立行政法人 岡山県精神科医療センター )
  • 武井 満(群馬県立精神医療センター)
  • 松原 三郎(医療法人財団 松原愛育会 松原病院)
  • 岩成 秀夫(神奈川県立精神医療センター)
  • 平田 豊明(地方独立行政法人 静岡県立病院機構 静岡県立こころの医療センター)
  • 宮本 真巳(東京医科歯科大学大学院 保健衛生学研究科)
  • 五十嵐 禎人(千葉大学社会精神保健教育研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
36,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国の司法精神医療を発展させるためには、医療観察法(以下「法」と略)の適正かつ円滑な運用が不可欠である。このために、本研究は実証的検討を重ね、その成果を持って実際の法運用の適正化をはかり、また、対象にとってもその他の精神医療の利用者にとっても納得のできる法制度となるべく寄与するものである。
研究方法
分担研究の目的に応じて、法運用に関わる機関及び関係者に対してアンケート調査、聞き取り調査、実地検証、ピアレビュー調査等を適宜実施した。
結果と考察
本年度は3年間の研究の初年度であるが、いくつかの重要な知見を提供することができた。医療観察法の施行後、初期の法運用における一時の混乱は終息し、指定入院医療機関の圧倒的不足の状況も法施行後4年目に入りほぼ解消してきた。このように医療観察法の運用はほぼ安定的軌道に乗ったといえよう。
しかし、運用の実際を見ると、指定入院医療機関および指定通院医療機関の量的不足や地域偏在は、なお解決されていない。全国の都道府県に少なくとも小規格併設型の指定病床を設置するなど、一層の努力が要請されている。地域処遇についても、保健所に専任の精神保健福祉相談員を設置するなどの行政的、財政的支援がさらに必要とされている。一方で、処遇終了者も増えてくるなど、今のところ対象行為の再発事例は少ないとはいえ、医療観察法運用による対象者の転帰や予後に関する調査研究の重要性が一段と増している。
また、対象者を疾患別にみたとき、広汎性発達障害とパーソナリティ障害については、今後も関係者の議論と意見の集約を行わなければならない。
なお、医療観察法の運用が一般精神科医療に与えた目覚しい影響として、精神科医療も多職種によるチーム医療として機能しはじめたことが特筆される。
結論
医療観察法の施行後5年が経過し、国会・国民に対して運用状況を正しく伝えなければならないが、法の見直しについては、今なお運用状況の検証期間があまりに短く、少なくともあと5年の間、十分な転帰・予後等についての検証がなされなければならないと考える。関係各位の賢明なる判断を期待するものである。

公開日・更新日

公開日
2010-08-31
更新日
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研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2011-03-01
更新日
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