ブロック拠点病院のない自治体における中核拠点病院の機能評価と体制整備のための研究~オール四国の体制の整備~

文献情報

文献番号
202319007A
報告書区分
総括
研究課題名
ブロック拠点病院のない自治体における中核拠点病院の機能評価と体制整備のための研究~オール四国の体制の整備~
研究課題名(英字)
-
課題番号
21HB1007
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
高田 清式(国立大学法人 愛媛大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 武内 世生(高知大学 医学部附属病院 総合診療部)
  • 尾崎 修治(徳島県立中央病院 血液内科)
  • 末盛 浩一郎(愛媛大学大学院医学系研究科)
  • 今滝 修(香川大学 医学部)
  • 井門 敬子(南松山病院 薬剤部)
  • 若松 綾(愛媛大学医学部附属病院 看護部)
  • 中村 美保(高知大学医学部附属病院)
  • 小野 恵子(愛媛大学医学部附属病院 総合診療サポートセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
6,924,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
四国地区は近年HIV・エイズ患者の増加が著しく、かつ高齢化率が32.2~35.9%であり、長期療養が必要な例が多く、施設への紹介・受け入れが難渋している。この背景のもと、各県の研究分担者と連携して四国内の病院・施設との連携整備、さらには県・市の保健行政との連携も踏まえ、ブロック拠点病院が存在しない四国地区全体の診療体制の充実を図りたい。
研究方法
【研究1】拠点病院を中心とした教育講演、意見交換、研修教材の作製
意見交換を図るために各ネットワーク会議や講演会を開催し、意見交換を行う。研修教材も作成する。
【研究2】四国の高齢者施設におけるHIV感染症等に関する研修会と実態調査
高齢者施設から現場の福祉・介護担当者に参加いただき研修会を開催する(知識啓蒙とHIV感染者を支援する自覚を促す目的)。
【研究3】福祉療養施設への出張研修、意見交換
 介護・受け入れを推進するため療養型病院や福祉施設へ直接出張講義を行う。医師・看護師・薬剤師・MSW等のHIV診療チームとして出張講義をし、HIV感染者の福祉・介護に関し調査する。
【研究4】地域で実践的なポケット版小冊子の作製
積極的に円滑な介護をしてもらう目的で、実用的なHIVに関するポケット小冊子を作製する。
【研究5】在宅介護職の実地研修
HIV患者の介護を円滑にしてもらうため、在宅介護職の各看護師に実地研修を行う。
結果と考察
【研究1】
愛媛県の行政の協力を得てHIV診療ネットワーク会議(県全域の各拠点病院が参加)を令和6年2月22日に会議(対面・Web)を行い、HIV感染者の現況報告、各拠点病院のアンケート集計、当院のHIV診療の現況などの話題提供・意見交換を行った。高知県では「県HIV感染症研修会」を、令和6年1月20日に開催した(高知県の受け入れの現況報告、「HIV陽性者の在宅支援について」のパネルディスカッション)。また、四国内の意見交換目的で、令和6年2月11日に四国地区エイズ診療中核拠点病院HIV担当看護師連絡会をWEB会議にて行い4県8名の看護師(他に医師2名)が参加し、各病院の実情や行政との連携に関して討議した。同日午後に四国地区エイズ診療中核拠点病院HIV診療医師研修会を開催し各地区から計3例(免疫再構築症候群、乾癬との合併例、HIV関連神経障害例等)を提示し、照屋勝治先生(国立国際医療研究センター)にも参加・コメントしてもらい、四国の医師・看護師11名参加のもと合同で症例の討議を行った。「在宅介護に役立つ薬の情報~抗HIV薬の基礎知識~」を作製し県内の各介護施設および全国の中核拠点病院に配布した。
【研究2】
令和5年12月14日に、中学・高校・大学の保健指導関係者、新聞・放送関係者に対して、「愛媛におけるHIV感染の現況~AIDS患者の治療の進歩、高齢化に向けて~」の講演を行った。なお開催した内容は印刷し(補足する目的で)配布し最先端のHIV感染症の話題・知識の啓蒙を行った。
【研究3】
 いきなりエイズ患者例の受診もあった四国中央病院での医療体制の充実を目的に、当院から医師、看護師、薬剤師、社会福祉士が出張し令和5年5月31日に開催した。なお、高知県は介護事業所(訪問看護と介護施設併設)および将来の透析の受け入れを見据え透析施設の出張研修も行った。
【研究4】
 愛媛および四国での実用的な(最新の愛媛や四国の現況や針刺し事故時の感染予防内服薬を配備している病院名など具体的に刷り入れた)HIVに関するポケット冊子(携帯できるように18x10cm大で三つ折り)を作製し県内および四国の主なHIV診療施設に配布した(安心して介護ができるように、針刺し事故後の感染確率や高齢化が進み全国で50歳以上のHIV感染者が35%を占めているグラフも紹介し、高齢化対応の四国地方での必要性を強調)。
【研究5】
 愛媛県内の在宅介護職の看護師3名に令和6年1月22日に当院のHIV患者の実地研修(外来、病棟)と講義・討議を行った。(3回計画したが新型コロナウイルス蔓延にて1回のみ実施)。また、高知県では今年度も訪問看護師2施設5名の実地研修を行った(その後1施設でHIV患者を実際に受け入れ得た)。
結論
今年度もブロック拠点病院がない地域において、HIV診療体制整備のために高齢介護施設の介護・福祉担当者への講演・資料配布、受け入れ先への出張講義、ポケット版小冊子の配布等を行い、介護のための知識・経験を共有できた。高齢化社会に向かい介護・療養が必要なHIV感染・エイズの増加に対応するため、診療体制の整備は、特にブロック拠点病院が身近に存在しない四国においては拠点病院間のみならず介護・福祉施設との福祉連携の充実が不可欠であり、さらに研究を継続し地方のモデルという点でも向上に努めたい。

公開日・更新日

公開日
2025-04-18
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2025-04-18
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202319007B
報告書区分
総合
研究課題名
ブロック拠点病院のない自治体における中核拠点病院の機能評価と体制整備のための研究~オール四国の体制の整備~
研究課題名(英字)
-
課題番号
21HB1007
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
高田 清式(国立大学法人 愛媛大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 武内 世生(高知大学 医学部附属病院 総合診療部)
  • 尾崎 修治(徳島県立中央病院 血液内科)
  • 末盛 浩一郎(愛媛大学大学院医学系研究科)
  • 窪田 良次(香川大学 医学部 地域包括医療学講座)
  • 今滝 修(香川大学 医学部)
  • 井門 敬子(南松山病院 薬剤部)
  • 若松 綾(愛媛大学医学部附属病院 看護部)
  • 中村 美保(高知大学医学部附属病院)
  • 小野 恵子(愛媛大学医学部附属病院 総合診療サポートセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
四国地区は近年HIV・エイズ患者の増加が著しく、かつ高齢化率が32.2~35.9%であり、長期療養が必要な例が多く、施設への紹介・受け入れが難渋している。3年間の研究を通じ、各県の研究分担者と連携して四国内の病院・施設との連携整備、さらには県・市の保健行政との連携も踏まえ、ブロック拠点病院が存在しない四国地区全体の診療体制の充実を図りたい。
研究方法
【研究1】拠点病院を中心とした教育講演、意見交換、研修教材の作製
意見交換を図るために各ネットワーク会議や講演会を開催し、意見交換を行う。研修教材も作成する。
【研究2】四国の高齢者施設におけるHIV感染症等に関する研修会と実態調査
高齢者施設から現場の福祉・介護担当者に参加いただき研修会を開催する(知識啓蒙とHIV感染者を支援する自覚を促す目的)。
【研究3】福祉療養施設への出張研修、意見交換
 介護・受け入れを推進するため療養型病院や福祉施設へ直接出張講義を行う(医師・看護師・薬剤師・MSW等のHIV診療チームとして出張)。
【研究4】地域で実践的なポケット版小冊子の作製
円滑な介護をしてもらう目的で、実用的なHIVに関するポケット小冊子を作製する。
【研究5】在宅介護職の実地研修
HIV患者の介護を円滑にしてもらうため、在宅介護職の各看護師に実地研修を行う。
結果と考察
【研究1】
 行政の協力を得てHIV診療ネットワーク会議(県全域の各拠点病院が参加)を毎年(対面・Web)行い、県の現況報告、各拠点病院のアンケート集計、当院のHIV診療の現況などの話題提供・意見交換を行った。高知県でも「県HIV感染症研修会」を毎年開催した(受け入れの現況報告、「HIV感染症の治療薬について」講演、「HIV陽性者の在宅支援について」のパネルディスカッション等)。また、四国内の意見交換目的で、年1回毎年四国地区エイズ診療中核拠点病院HIV担当看護師連絡会をWEB会議にて行い4県10名前後の看護師(他医師2、3名)が参加し討議した。同日午後に四国地区エイズ診療中核拠点病院HIV診療医師研修会を開催し各地区から毎年3例程度(非結核性抗酸菌感染例、HIV-2感染例、AIDSと癌の合併外国人例、免疫再構築症候群、乾癬との合併例、HIV関連神経障害例等)を提示し、照屋勝治先生(国立国際医療研究センター)にも参加・コメントしてもらい、四国の医師・看護師10数名参加のもと合同で症例討議を行った。「在宅介護に役立つ薬の情報~抗HIV薬の基礎知識~」を作製し県内の各介護施設および全国の中核拠点病院に配布した。
【研究2】
介護保険サービス従事者を対象に松山保健所とエイズ対策セミナー「介護保険サービスに役立つ感染症の話題」を令和5年2月10日に開催し、令和5年12月14日に学校の保健指導関係者、新聞・放送関係者に対して、「愛媛におけるHIV感染の現況~AIDS患者の治療の進歩、高齢化に向けて~」の講演を行った。内容は印刷(補足目的で)配布し最新のHIV感染症知識の啓蒙を行った。
【研究3】
 新型コロナウイルス蔓延の中3年目は実施でき、いきなりエイズ患者例の受診もあった四国中央病院での医療体制の充実を目的に当院から医師、看護師、薬剤師、社会福祉士が出張し令和5年5月31日に開催した。なお令和5年度に高知県も介護事業所(訪問看護と介護施設併設)および将来の透析の受け入れを見据え透析施設の出張研修も行った。
【研究4】
 愛媛および四国での実用的な(最新の四国の現況や針刺し事故時の予防内服薬を配備している病院名など具体的な)HIVに関するポケット冊子(携帯できるように18x10cm大で三つ折り)を作製し県内および四国の主なHIV診療施設に配布した(安心して介護ができるように、針刺し事故後の感染確率や高齢化が進み全国で50歳以上のHIV感染者が35%のグラフも紹介し、高齢化対応の四国地方での必要性を強調)。
【研究5】
 愛媛県内の在宅介護職の看護師に令和4年度2名、令和5年度3名に当院のHIV患者の実地研修(外来、病棟)と講義・討議を行った。高知県でも令和4年度3名、令和5年度5名の在宅介護職看護師の実地研修を行った(その後1施設でHIV患者を実際に受け入れ)。
結論
この3年間でブロック拠点病院がない地域において、HIV診療体制整備のために高齢介護施設の介護・福祉担当者への講演・資料配布、受け入れ先への出張講義、ポケット版小冊子の配布等を行い、介護のための知識・経験を共有できた。高齢化社会に向かい介護・療養が必要なHIV感染・エイズの増加に対応するため、診療体制の整備は、特にブロック拠点病院が身近に存在しない四国においては拠点病院間のみならず介護・福祉施設との福祉連携の充実が不可欠であり、さらに地方のモデルという点でも向上に努めたい。

公開日・更新日

公開日
2025-04-18
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2025-04-18
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202319007C

成果

専門的・学術的観点からの成果
ブロック拠点病院がない地域において、HIV診療体制整備のために研究期間中、病院・施設との連携整備、さらには県・市の保健行政とも連携し、オール四国を念頭に診療体制の充実を図ってきた。研究経過・成果に関し、日本エイズ学会等での毎年数件の学会発表および、日本エイズ学会雑誌に4編研究論文が掲載され、HIV診療及び介護福祉連携のモデル地域の立場で研究成果を全国に発信できた。また日本エイズ学会や日本感染症学会でシンポジストとして、HIV感染者のワクチン接種や四国の感染状況などの成果も広く発信できた。
臨床的観点からの成果
地方においてHIV診療体制の整備が拠点病院間のみならず介護・福祉施設との福祉連携の充実が図れた。具体的には、(1)診療経験の乏しい拠点病院や介護施設の診療体制の充実が図れ、円滑な受け入れ体制が推進できた。(2) 地方の福祉連携のモデルの観点から、研究成果を学会や講演を通じて公表し、全国的な診療体制の向上が期待できた。(3)四国全体の診療体制の連携が図れた。(4)医療対策に関して行政との連携が綿密になり、またNGOと効果的な連携も促進された。(5)HIV診療チーム体制の充実が促進できた。
ガイドライン等の開発
特になし。
その他行政的観点からの成果
特になし。但し、行政との連携の点で、県(健康増進課)の協力のもと県内の高齢者施設から現場の福祉・介護担当者に募集し、各施設(計数十名)参加で、HIV感染症等に関する研修会を開催した(計3回、新型コロナウイルス感染症下の令和4年度は、HIV診療・介護に必要な感染症の知識を冊子にして各介護施設に配布した)。令和4年度はWeb利用で松山保健所主催でエイズ対策セミナー「介護保険サービスに役立つ感染症の話題」を行った。歯科医師会での講演を契機に『愛媛県HIV歯科診療ネットワークの手引き』の作成に至った。
その他のインパクト
愛媛新聞掲載:松山市エイズ対策セミナー「介護保険サービスに役立つ感染症の話題」令和5年2月10日、於:松山市保健所

発表件数

原著論文(和文)
5件
原著論文(英文等)
4件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
20件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件
愛媛県歯科医師会教育講演会「HIVを中心とした歯科における感染症」、松山市保健所主催 エイズ対策セミナー「介護保険サービスに役立つ感染症の話題」

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2025-04-18
更新日
-

収支報告書

文献番号
202319007Z