文献情報
文献番号
202319006A
報告書区分
総括
研究課題名
拠点病院集中型のHIV診療から、地域分散型のHIV患者の医療・介護体制の構築
研究課題名(英字)
-
課題番号
21HB1006
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
猪狩 英俊(国立大学法人千葉大学 医学部附属病院・感染制御部)
研究分担者(所属機関)
- 谷口 俊文(国立大学法人千葉大学 医学部附属病院・感染制御部)
- 坂本 洋右(千葉大学 医学部)
- 鈴木 貴明(山梨大学 医学部附属病院薬剤部)
- 塚田 弘樹(東京慈恵会医科大学附属柏病院)
- 矢幅 美鈴(千葉大学医学部付属病院 感染制御部)
- 葛田 衣重(千葉大学医学部附属病院 感染制御部)
- 鈴木 明子(御子神 明子)(城西国際大学 看護学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
10,385,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
抗ウイルス療法の進歩は、HIV感染症患者の長期生存をもたらした。この結果、HIV感染症患者に提供する医療は多様化し、生活習慣病等の併存疾患に対する医療もその一つである。その延長には、介護・看取りがある。
この課題に対して、エイズ予防指針では、地域連携を重視している。厚生労働省は、長期療養体制構築事業の手引きを策定した。
本研究では、拠点病院集中型から地域分散型の診療体制への転換を提案し、HIV感染症患者の長期療養体制を構築するための課題を検討する。
この課題に対して、エイズ予防指針では、地域連携を重視している。厚生労働省は、長期療養体制構築事業の手引きを策定した。
本研究では、拠点病院集中型から地域分散型の診療体制への転換を提案し、HIV感染症患者の長期療養体制を構築するための課題を検討する。
研究方法
長期療養体制構築会議として、「千葉県HIV拠点病院会議」(千葉県委託事業)を位置づける。「後天性免疫不全症候群に関する長期療養体制構築事業の手引き(原案)Ver.1.1」(厚生労働省)に基づき、長期療養の課題抽出を行う。
この結果、①自立支援医療の課題、②医療従事者への啓発活動、③利用可能な医療リソースの可視化、④HIV感染症患者の意思決定支援を重点項目とした。
患者動向分析には、千葉県の行政データを利用する。また、千葉県と千葉市に依頼し、県内都市部のHIV感染症患者の年齢分布と受診行動を経年的に調査した。
千葉県透析医会と協働して、ネットワークを構築し、円滑な透析導入と啓発活動を行う。
地域連携を検討するため、感染対策向上加算を算定する医療機関を対象にアンケートを行う。
HIV感染症患者の歯科口腔の衛生状態と歯科医療機関での感染対策を調査する。
HIV感染症患者が地域の保険薬局を選択した時に対応できるシステム構築する。
HIV感染症患者の長期療養に必要な地域看護力の向上を図る。
都内からの逆紹介対応モデルとして、東葛地区のHIV診療体制を強化する。
HIV感染症患者の長期療養体制に必要な福祉サービスネットワークを構築する。
HIV感染症患者の臨床心理的支援の課題を調査し、意思決定支援に資するものとする。
高齢者施設のおけるHIV感染症患者の受入拒否の背景にある、組織的課題を分析する。
この結果、①自立支援医療の課題、②医療従事者への啓発活動、③利用可能な医療リソースの可視化、④HIV感染症患者の意思決定支援を重点項目とした。
患者動向分析には、千葉県の行政データを利用する。また、千葉県と千葉市に依頼し、県内都市部のHIV感染症患者の年齢分布と受診行動を経年的に調査した。
千葉県透析医会と協働して、ネットワークを構築し、円滑な透析導入と啓発活動を行う。
地域連携を検討するため、感染対策向上加算を算定する医療機関を対象にアンケートを行う。
HIV感染症患者の歯科口腔の衛生状態と歯科医療機関での感染対策を調査する。
HIV感染症患者が地域の保険薬局を選択した時に対応できるシステム構築する。
HIV感染症患者の長期療養に必要な地域看護力の向上を図る。
都内からの逆紹介対応モデルとして、東葛地区のHIV診療体制を強化する。
HIV感染症患者の長期療養体制に必要な福祉サービスネットワークを構築する。
HIV感染症患者の臨床心理的支援の課題を調査し、意思決定支援に資するものとする。
高齢者施設のおけるHIV感染症患者の受入拒否の背景にある、組織的課題を分析する。
結果と考察
自立支援医療機関の複数指定を千葉県に要請した。しかし、自立支援(免疫機能障害)の施設基準を満たすことが困難で、実現していない。
教育啓発機会は、偏見差別を取り除くために継続して実施する必要がある。
利用可能な社会資源の可視化を目的に、透析と福祉サービスのネットワークを設立した。
長期療養の意思決定支援は不十分で、心理士の役割が期待される。
HIV感染症患者の動向分析
千葉県のHIV感染症患者は1522人(2022年3月)、65歳以上は14.7%であった。いずれも増加傾向にある。
東京隣接自治体では、半数以上が都内医療機関へ受診していた。しかし、高齢者では地元回帰が確認された。今後は、地域での受入を検討する必要がある。千葉市の高齢化は顕著であるが、地域完結型の受診行動であり、長期療養体制のモデルになる。
血液透析ネットワーク
千葉県透析医会と協働して、2021年3月に千葉県HIV透析ネットワークを設立した。現在の参加透析施設は20であり、併せて、透析施設の教育啓発活動を展開した。
地域連携
感染対策向上加算1・2を算定している医療機関は、HIV感染症患者の受入実績もあり、地域連携の有力候補である。外来患者の受入実績は、加算1と2の病院はそれぞれ80.6%、62.3%であった。入院患者では、56.0%と26.4%であった。
歯科診療調査
HIV感染症患者の口腔衛生と歯科診療に対する意識調査をした。HIV感染患者は口腔衛生管理の必要性を自覚している人が多い。しかし、受診の機会が制約され、口腔状態が悪く処置歯数が少ない。
保険薬局の役割
病院薬剤師と保険薬局間で、双方向の情報提供が重要であり、一部実現している。薬局での服薬指導ポイントガイドを作成した。千葉大学のHPよりダウンロード可能である。
長期療養に必要な地域看護力の向上
居宅サービスを提供する事業者を対象に、HIV感染症患者の受入についての意見交換会を開催した。
地域のエイズ拠点病院での診療体制の構築
慈恵柏病院では、都内に通院する患者を地域で受け入れるための診療体制を強化した。
医療ソーシャルワーカーの役割
2023年3月に千葉県HIV福祉サービスネットワークを拠点病院の地域連携の実績を基に設立した。訪問看護ステーションなど20施設が登録している。千葉県版制度の手引きを2023年12月に改定した。
臨床心理的支援
HIV感染症患者は、援助要請が難しく、必要な支援が不足していた。
高齢者施設の患者受入拒否対策
受入拒否の背景には、教育啓発活動が不十分で、誤った情報や無知が背景にある。
教育啓発機会は、偏見差別を取り除くために継続して実施する必要がある。
利用可能な社会資源の可視化を目的に、透析と福祉サービスのネットワークを設立した。
長期療養の意思決定支援は不十分で、心理士の役割が期待される。
HIV感染症患者の動向分析
千葉県のHIV感染症患者は1522人(2022年3月)、65歳以上は14.7%であった。いずれも増加傾向にある。
東京隣接自治体では、半数以上が都内医療機関へ受診していた。しかし、高齢者では地元回帰が確認された。今後は、地域での受入を検討する必要がある。千葉市の高齢化は顕著であるが、地域完結型の受診行動であり、長期療養体制のモデルになる。
血液透析ネットワーク
千葉県透析医会と協働して、2021年3月に千葉県HIV透析ネットワークを設立した。現在の参加透析施設は20であり、併せて、透析施設の教育啓発活動を展開した。
地域連携
感染対策向上加算1・2を算定している医療機関は、HIV感染症患者の受入実績もあり、地域連携の有力候補である。外来患者の受入実績は、加算1と2の病院はそれぞれ80.6%、62.3%であった。入院患者では、56.0%と26.4%であった。
歯科診療調査
HIV感染症患者の口腔衛生と歯科診療に対する意識調査をした。HIV感染患者は口腔衛生管理の必要性を自覚している人が多い。しかし、受診の機会が制約され、口腔状態が悪く処置歯数が少ない。
保険薬局の役割
病院薬剤師と保険薬局間で、双方向の情報提供が重要であり、一部実現している。薬局での服薬指導ポイントガイドを作成した。千葉大学のHPよりダウンロード可能である。
長期療養に必要な地域看護力の向上
居宅サービスを提供する事業者を対象に、HIV感染症患者の受入についての意見交換会を開催した。
地域のエイズ拠点病院での診療体制の構築
慈恵柏病院では、都内に通院する患者を地域で受け入れるための診療体制を強化した。
医療ソーシャルワーカーの役割
2023年3月に千葉県HIV福祉サービスネットワークを拠点病院の地域連携の実績を基に設立した。訪問看護ステーションなど20施設が登録している。千葉県版制度の手引きを2023年12月に改定した。
臨床心理的支援
HIV感染症患者は、援助要請が難しく、必要な支援が不足していた。
高齢者施設の患者受入拒否対策
受入拒否の背景には、教育啓発活動が不十分で、誤った情報や無知が背景にある。
結論
拠点病院集中型から地域分散型の医療体制にシフトするには、①自立支援医療の課題、②医療従事者への啓発活動、③利用可能な医療・介護・福祉リソースの可視化へ絞り込み、④HIV感染症患者の意思決定支援することを重点項目とし取り組んでいくことが重要である。
公開日・更新日
公開日
2025-04-18
更新日
-