自殺のハイリスク者の実態解明及び自殺予防に関する研究

文献情報

文献番号
200935054A
報告書区分
総括
研究課題名
自殺のハイリスク者の実態解明及び自殺予防に関する研究
課題番号
H21-こころ・一般-007
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
伊藤 弘人(国立精神・神経センター 精神保健研究所 社会精神保健部)
研究分担者(所属機関)
  • 三宅 康史(昭和大学医学部救急医学)
  • 河西 千秋(横浜市立大学医学部)
  • 松本 俊彦(国立精神・神経センター 自殺予防総合対策センター・精神保健計画部・薬物依存研究部)
  • 川野 健治(国立精神・神経センター 自殺予防総合対策センター・精神保健計画部)
  • 野田 光彦(国立国際医療センター 糖尿病・代謝症候群診療部)
  • 佐伯 俊成(広島大学病院医系総合診療科)
  • 横山 広行(国立循環器病センター 心臓血管内科 緊急治療科)
  • 水野 杏一(日本医科大学 内科学 循環器・肝臓・老年・総合病態部門)
  • 内村 直尚(久留米大学医学部 精神神経科学教室)
  • 山崎 力(東京大学大学院医学系研究科 臨床疫学システム講座)
  • 鈴木 伸一(早稲田大学人間科学学術院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
17,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班の目的は、自殺のハイリスク者として、救命救急センターへ搬送された自傷患者、高度救命救急センターに搬送された統合失調症患者、薬物・アルコール依存者、自死遺族、糖尿病患者及び循環器疾患患者をモデル的に取り上げ、その実態を明らかにするとともに、可能な自殺予防法を提案することである。
研究方法
本研究班では、まず(1) 救急医療スタッフに向けた効果的な自殺未遂者への対応に関する研修モデルの開発、(2) 統合失調症患者と薬物・アルコール依存者の実態調査に基づく自殺予防のための支援のあり方の検討、(3) 1,800名を対象とした質問紙調査に基づく自死遺族支援の課題の抽出、(4) 総合診療科の外来通院患者におけるうつ病スクリーニング結果の分析と精神疾患の既往歴の聴取を実施した。次に(5) 自殺ハイリスクである身体疾患として循環器疾患患者と糖尿病を取り上げ、4人の研究分担者により研究計画書の作成及びデータの収集を行った。
結果と考察
(1) 救急医療スタッフへの研修モデルを開発し、厚生労働省主催・日本臨床救急医学会共催の自殺未遂者ケア研修の寄与した。(2) 気分障害患者と比較すると統合失調症患者の再企図までの時間が長いものの、飛び降りを手段とする割合が高く、全身麻酔下での手術割合が高く、身体後遺症を有する場合が多かった。薬物・アルコール依存者は、抱えている問題の多様性、依存症自体または依存症からの回復の過程における重要他者とのつながりの喪失体験が、自殺の危険因子となる可能性が明らかになった。(3) 自死遺族支援に関する質問紙調査により一般市民は自死遺族支援の重要性を認識しており、その背景に「当事者の経験や気持ちへの理解」の認識があることが明らかになった。(4) 総合診療科の外来通院患者の11.3%に中等症以上のうつ状態(自記式調査では27.0%)が認められ、また精神疾患の既往歴の聴取の重要性が示された。さらに(5) 循環器疾患と糖尿病の領域において、4人の研究分担者により研究計画書の作成及びデータの収集が開始された。
結論
自殺対策は総合的に取り組むことが重要であるため、本研究により、自殺ハイリスク者と考えられる統合失調症、薬物・アルコール依存症者や自死遺族の実態の一端が明らかになった。また、救急医療、一般病院総合診療科、糖尿病・代謝内科、循環器科における自殺念慮者を中心とする精神疾患の実態および対策につながる研究が開始された。本研究成果は、これまで十分には検討されていなかったこれらの自殺ハイリスク者への支援の糸口を示している。

公開日・更新日

公開日
2010-08-31
更新日
-