気分障害の神経病理学に基づく分類を目指した脳病態の解明

文献情報

文献番号
200935049A
報告書区分
総括
研究課題名
気分障害の神経病理学に基づく分類を目指した脳病態の解明
課題番号
H21-こころ・一般-002
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 忠史(独立行政法人理化学研究所 精神疾患動態研究チーム)
研究分担者(所属機関)
  • 神庭重信(九州大学 医学部)
  • 山下英尚(広島大学 医学部)
  • 村山繁雄(東京都健康長寿医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
16,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
気分障害診療の改善のためには、神経病理学所見に基づいた分類が必要である。気分障害における、遺伝要因によるミトコンドリア機能障害、ストレスによる免疫学的変化、加齢に伴う脳血管障害・異常蛋白蓄積などの脳病態について、臨床研究、動物モデル、死後脳研究で明らかにする。
研究方法
ミトコンドリアDNA(mtDNA)合成酵素の変異をもつ双極性障害モデルマウスを用い、mtDNA変異の蓄積部位を探索する方法を開発し、変異蓄積部位を探索する。c-fos免疫染色によりストレス関連脳部位を探索する。免疫学的うつ病モデル動物を用いて脳病態を検討する。疫学研究でうつ病と危険因子の関係を調べる。脳血管障害とうつ病の関連を検討する。死後脳で遺伝子発現解析を行い、気分障害の脳病態を検討する。高齢者ブレインバンクの登録症例でうつ病の調査を行い、新たな剖検例で神経病理学的検索を行う。
結果と考察
双極性障害モデルマウスでは、視床室傍核、下辺縁皮質などに変異蓄積を認めた。凍結視床切片で視床室傍核を同定する方法を検討した。強制水泳試験後のマウスでは、辺縁/下辺縁皮質の賦活が特徴的であった。LPS投与による免疫学的うつ病モデルを検討した。抗うつ薬は活性化ミクログリア由来のNOや炎症性サイトカイン産生を抑制した。地域住民3025名の疫学研究では、メタボリック症候群を持つ男性におけるうつ病の頻度(7.3%)は非メタボリック症候群(2.8%)より高かった。50歳以上初発のうつ病患者172例では、寛解を継続した割合が血管性うつ病群では(5%)非血管性うつ病群(36%)より低く、認知症に進展した割合が高かった。高齢者ブレインバンクでは、1年で2名のうつ病の剖検例があり、神経原線維変化優位型の老年性変化、アルツハイマー型のびまん性Lewy小体病の所見であった。気分障害の既往のある剖検例では、前頭側頭型認知症、アルツハイマー病、脳虚血性変化、大脳皮質基底核変性症などの神経病理所見が見られた。今回見られた病理学的所見は気分障害に特異的ではないが、本研究で示された脳部位に注目して検索を進め、うつ病の病態の検討を進める予定である。
結論
本研究の結果、気分障害には視床室傍核や下辺縁皮質などが関与し、メタボリック症候群、血管性変化、神経変性などによる病理学的変化がその背景となっている可能性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2010-08-31
更新日
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