文献情報
文献番号
202318043A
報告書区分
総括
研究課題名
Mpoxに対する予防・治療法等に資する研究
課題番号
23HA2019
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
氏家 無限(国立研究開発法人国立国際医療研究センター 国際感染症センタートラベルクリニック)
研究分担者(所属機関)
- 水島 大輔(国立研究開発法人国立国際医療研究センター病院 エイズ治療・研究開発センター)
- 木内 英(東京医科大学 臨床検査医学分野)
- 倭 正也(地方独立行政法人りんくう総合医療センター 感染症センター)
- 大曲 貴夫(国立研究開発法人 国立国際医療研究センター 国際感染症センター)
- 齋藤 翔(国立国際医療研究センター 国際感染症センター)
- 福島 一彰(がん・感染症センター都立駒込病院 感染症科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
334,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
世界的なエムポックスの流行に対応するため、乾燥細胞培養痘そうワクチンLC16「KMB」(以下LC16とする)の実臨床におけるエムポックス発症予防効果、安全性の検討、およびHIV感染者における免疫原性について検討する。我が国においては承認されたエムポックス治療薬はないが、欧州においてはTecovirimatがエムポックスの治療薬として承認されている。我が国ではTecovirimat入院症例に対する非ランダム化試験は実施されているが、外来症例に対する臨床研究は実施されていない。アメリカ国立アレルギー・感染症研究所(以下NIAIDとする)を主幹として実施されているエムポックスにおけるTecovirimatの国際共同臨床試験(STOMP試験)に参画し、外来管理可能な軽症のエムポックス症例に対するTecovirimat使用の臨床的有効性と安全性を評価する。
研究方法
LC16によるエムポックス発症予防効果を評価するランダム化比較試験(以下LC16e試験とする)ならびに、エムポックスの軽症症例に対するTecovirimatの安全性と有効性に関するランダム化プラセボ対照二重盲検比較試験(以下STOMP試験とする)を実施した。
LC16e試験は、多施設共同非盲検化ランダム化比較試験であり、東京都内8施設においてエムポックス感染のハイリスク者をリクルート、早期接種群または後期接種群に1:1に無作為に割り付けた。HIV感染者においてもCD4陽性細胞数200/μl以上かつ抗HIV薬を内服し定期的に医療機関にてフォローされていることを条件に組み入れた。HIV感染者においてはエムポックスウイルスおよびワクシニアウイルスに対する中和抗体を測定、免疫原性を評価した。
STOMP試験は、NIAIDを主幹研究機関とした国際共同治験として実施され、国内では医師主導治験として実施した。参加者は、Tecovirimatまたはプラセボのいずれかを投与するために2:1でランダム化される(Arm A/B)。登録後、治験薬の投与は14日間で、参加者は皮膚と粘膜病変を毎日自己監視する。参加者は57日目に診察を受け、感染の再発の可能性を評価される。
LC16e試験は、多施設共同非盲検化ランダム化比較試験であり、東京都内8施設においてエムポックス感染のハイリスク者をリクルート、早期接種群または後期接種群に1:1に無作為に割り付けた。HIV感染者においてもCD4陽性細胞数200/μl以上かつ抗HIV薬を内服し定期的に医療機関にてフォローされていることを条件に組み入れた。HIV感染者においてはエムポックスウイルスおよびワクシニアウイルスに対する中和抗体を測定、免疫原性を評価した。
STOMP試験は、NIAIDを主幹研究機関とした国際共同治験として実施され、国内では医師主導治験として実施した。参加者は、Tecovirimatまたはプラセボのいずれかを投与するために2:1でランダム化される(Arm A/B)。登録後、治験薬の投与は14日間で、参加者は皮膚と粘膜病変を毎日自己監視する。参加者は57日目に診察を受け、感染の再発の可能性を評価される。
結果と考察
LC16e試験では合計1,135例の被験者がリクルートされ、前期接種群に570例、後期接種群に565例が割り付けられた。実際にLC16が接種されたのはそれぞれ530例、476例。重点的な観察期間では両群ともエムポックスの発症はなく、LC16の有効性は算出不能だった。研究との因果関係があると評価された有害事象は、HIV感染者で96.6%、非感染者で98.0%。死亡に至る有害事象の発現はHIV感染者・非感染者とも観察されず、重篤な有害事象はHIV感染者で0.6%、非感染者で0.5%、Grade3以上の有害事象はHIV感染者で15.9%、非感染者で22.6%。HIV感染者における中和抗体価評価のための採血を27例で実施した。中和抗体価は今後測定予定。
STOMP試験研究の事務局の立ち上げを行い、2023年5月に倫理委員会の承認を得て、同月に治験届を提出。さらにNIAIDのモニターによるsite initiation visitへの対応を行い症例登録を開始、2024年1月に1例目の登録を行い、最終的に2例の症例登録を行った。現在も症例登録を継続中。
LC16e試験は重点的な観察期間内でのエムポックスの発症がなかったためLC16の有効性を評価できなかったが、有害事象は接種部位の皮膚局所反応、全身反応、重篤な有害事象いずれもHIVの有無による有意な差は観察されず、本研究の組み入れ対象となったHIV感染者におけるLC16接種の安全性が確認された。
STOMP試験により、日本国内におけるエムポックス患者に対するTecovirimatの有効性・安全性を評価するためのランダム化比較試験の実施が可能となった。結果は試験終了後に公開される予定だが、新興再興感染症に対するMCM(Medical Countermeasures)の薬事承認へのプロセスとして重要な位置づけであると考えられる。
新興再興感染症の世界的な流行時は国内の他施設との連携、国外機関との共同治験の実施が重要であることが示唆され、今後の我が国の新興再興感染症対策の一助となりうる。
STOMP試験研究の事務局の立ち上げを行い、2023年5月に倫理委員会の承認を得て、同月に治験届を提出。さらにNIAIDのモニターによるsite initiation visitへの対応を行い症例登録を開始、2024年1月に1例目の登録を行い、最終的に2例の症例登録を行った。現在も症例登録を継続中。
LC16e試験は重点的な観察期間内でのエムポックスの発症がなかったためLC16の有効性を評価できなかったが、有害事象は接種部位の皮膚局所反応、全身反応、重篤な有害事象いずれもHIVの有無による有意な差は観察されず、本研究の組み入れ対象となったHIV感染者におけるLC16接種の安全性が確認された。
STOMP試験により、日本国内におけるエムポックス患者に対するTecovirimatの有効性・安全性を評価するためのランダム化比較試験の実施が可能となった。結果は試験終了後に公開される予定だが、新興再興感染症に対するMCM(Medical Countermeasures)の薬事承認へのプロセスとして重要な位置づけであると考えられる。
新興再興感染症の世界的な流行時は国内の他施設との連携、国外機関との共同治験の実施が重要であることが示唆され、今後の我が国の新興再興感染症対策の一助となりうる。
結論
LC16e試験では、LC16のエムポックス発症予防効果について検証できなかった。しかし、抗HIV薬によりよくコントロールされたHIV感染者において、LC16の使用は安全性上特段の懸念は認めなかった。
STOMP試験は継続中であるため、解析結果は未定である。
本研究を通して、新興再興感染症の世界的な流行時の我が国の対応として、国内の関連機関との連携や国外機関との共同研究が重要であることが明らかになった。
STOMP試験は継続中であるため、解析結果は未定である。
本研究を通して、新興再興感染症の世界的な流行時の我が国の対応として、国内の関連機関との連携や国外機関との共同研究が重要であることが明らかになった。
公開日・更新日
公開日
2024-08-13
更新日
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