ワクチンの有効性及び安全性をモニタリングする体制の構築に関する研究

文献情報

文献番号
202318041A
報告書区分
総括
研究課題名
ワクチンの有効性及び安全性をモニタリングする体制の構築に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23HA2017
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 基(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
研究分担者(所属機関)
  • 神谷 元(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
  • 米岡 大輔(ヨネオカ ダイスケ)(国立感染症研究所)
  • 森本 浩之輔(長崎大学 熱帯医学研究所)
  • 五十嵐 中(東京大学 大学院薬学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
147,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班では①定期接種化を見据えた新型コロナワクチンの有効性の経時的評価に係る検討、②予防接種の安全性及び有効性を評価するための基盤の構築に向けた政策研究を行った。新型コロナワクチンの有効性を評価することを目的として、2つの多施設共同研究を実施し、オミクロン株流行時期における新型コロナワクチンの発症予防効果、重症予防効果を明らかにした。
研究方法
1.国立感染症研究所グループ(MOTIVATE研究) 国立感染症研究所と日本ECMOnet が共同で、デルタ流行期〜オミクロン流行初期における呼吸不全を伴うCOVID-19肺炎発症および人工呼吸器を要するCOVID-19肺炎発症に対する予防効果を、症例対照研究を実施して検討した。
2.長崎大学グループ(VERSUS研究) 国内15ヶ所の病院、医院と共同研究チームを構成し、期間中これらの医療機関において、COVID-19の症状を有して受診した患者とCOVID-19の症状を有して入院した患者を登録し、COVID-19の診断のための検査、およびワクチン接種歴をはじめとした医療記録を収集した。発症予防と入院予防の有効性は検査陽性者を症例群、陰性者を対照群とした検査陰性デザインの症例対照研究を用い、重症予防の有効性は検査陽性のもののうち重症例を症例群、非重症例を対照群とした症例対象研究を用い、新型コロナワクチンの臨床的有効性を調査した。
3.新型コロナウイルスの長期症状に対するワクチンの影響 VERSUS研究に参加した1施設において、新型コロナウイルスの症状を有して受診した患者を対象にその後の長期的な症状とQOLについて調査した。検査によりCOVID-19と診断された患者(症例群)の症状の持続期間やQOL(EQ-5D-5L)の低下について、検査陰性だった人(対照群)と比較しワクチン接種の影響を調査した。
4.ワクチン安全性評価システムに関する調査分析
多施設共同研究の実施を通した分析、予防接種法に基づく副反応疑い報告の分析、及び過去の研究班の調査報告書の収集と分析を行った。
5.献血データのワクチン有効性評価への活用可能性に関する調査研究 2023年12月に16歳から69歳の日本人居住者約1万人を対象にWeb調査を実施した。献血経験とCOVID-19診断の関連性を明らかにするため、人口統計学的特性、社会経済的地位、COVID-19ワクチン接種状況、併存疾患を調整したロジスティック回帰分析を用いた。
結果と考察
1.国立感染症研究所グループ デルタ流行期〜オミクロン流行初期(BA.1/BA.2流行期)における呼吸不全を伴うCOVID-19肺炎発症(中等症Ⅱ以上相当)および人工呼吸器を要するCOVID-19肺炎発症(重症相当)に対する予防効果を検討した。ワクチン有効性はともに接種回数に依存して高くなる傾向にあった。さらに、ワクチン有効性はワクチン接種から6か月以上が経過しても持続していることが示された。サンプルサイズの制約から、sparse data bias等モデルによるバイアスの影響もあり得るので解釈に注意が必要である。
2.長崎大学グループ オミクロン株対応2価ワクチン接種者における未接種者と比較した場合の有効性は、発症予防・入院予防のいずれにおいても高かったが、従来型のみを接種した場合と比較した相対的な有効性は、発症予防・入院予防において中程度であった。オミクロン株(XBB.1.5)対応1価ワクチンは発症予防において、オミクロン株対応2価ワクチンも含めた従来のワクチン接種に対し40%程度の追加接種の有効性が見られた。
3.新型コロナウイルスの長期症状に対するワクチンの影響 新型コロナワクチンのブースター接種が一定程度Q O Lの低下を抑えた可能性がある。
4.ワクチン安全性評価システムに関する調査分析
予防接種データベースの運用と利活用に向けて、副反応に相当する疾患の定義、モニタリング手法、予防接種歴との関連性を検証する手法の開発の必要性が明らかとなった。
5.献血データのワクチン有効性評価への活用可能性に関する調査研究 献血者サンプルを用いた血清疫学調査の結果をベースにしてワクチンの有効性を議論すると、その効果量の推定にバイアスが入る可能性がある。このバイアスを適切に補正することは、ワクチンの副反応や有効性を正確に評価するために重要である。
結論
研究結果は厚生科学審議会予防接種ワクチン分科会等の資料として提出され、わが国の新型コロナワクチン戦略に関する議論に活用された。令和8年度より予防接種データベースを活用した安全性と有効性の評価体制の整備が計画されており、それに必要な技術的手法を整備することが求められる。またマルチソース・アプローチの観点から多施設共同研究のプラットフォームを維持することも重要である。

公開日・更新日

公開日
2025-09-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2025-09-04
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202318041C

成果

専門的・学術的観点からの成果
新型コロナワクチンの定期接種化に向けて、特にその重症化予防効果を2つの研究チームが独立して示したことの政策的意義は大きい。成果はVaccine誌、Expert Rev Vaccines誌、BMJ Open誌に掲載され、国際学会的にも評価された。
臨床的観点からの成果
新型コロナウイルス感染症罹患後のQOL低下を新型コロナワクチンが抑制する可能性が示唆された。
ガイドライン等の開発
該当なし。
その他行政的観点からの成果
本研究班の成果である新型コロナワクチンの重症化予防効果が第55回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会の資料として活用され、新型コロナワクチンの定期接種化に向けた議論に貢献した。
その他のインパクト
該当なし。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
3件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
5件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
VERSUS研究公開セミナー開催(令和6年1月20日)

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2025-09-04
更新日
-

収支報告書

文献番号
202318041Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
180,000,000円
(2)補助金確定額
161,524,000円
差引額 [(1)-(2)]
18,476,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 5,194,928円
人件費・謝金 39,049,071円
旅費 3,759,190円
その他 83,293,416円
間接経費 30,228,097円
合計 161,524,702円

備考

備考
収入の「(2)補助金確定額」と支出の「合計」の差702円については、自己負担による。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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