HTLV-Iの生体内感染拡大機序の解明とその制御によるHAM治療法の開発

文献情報

文献番号
200935043A
報告書区分
総括
研究課題名
HTLV-Iの生体内感染拡大機序の解明とその制御によるHAM治療法の開発
課題番号
H20-こころ・一般-020
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
出雲 周二(鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科 難治ウイルス病態制御研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 白木 洋(横浜薬科大学 健康薬学科)
  • 星野 洪郎(群馬大学大学院 医学系研究科)
  • 中村 龍文(長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科.)
  • 久保田龍二(鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科)
  • 梅原 藤雄(鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科)
  • 齊藤 峰輝(琉球大学大学院 医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
12,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HAMはHTLV-1の慢性感染がひきおこす難治性神経疾患で、国内に約1500名の患者が慢性進行性の痙性対麻痺、膀胱直腸障害に苦しんでおり、根治療法の確立は急務である。ウイルス量の増大はHAM発症および症状増悪の最大のリスクで、治療や発症予防には感染者体内のHTLV-1感染細胞を減少させることが重要である。本研究では、感染レセプター分子群と感染細胞特異的分子群を同定し、感染者個体内でウイルス感染が拡大する機序を明らかにする。同時にHAMの発症にかかわるHTLV-1遺伝子発現と生体の免疫応答の特徴を解析し、発症機序を解明することにより、病態に則した治療法の開発をめざす。
研究方法
本研究の柱として、1)マイクロアレー、レクチンアレーなどの網羅的解析法をもちいたウイルスシナプス形成に関与する分子の同定、2)感染に関与するウイルス分子の解析、3)感染細胞でのウイルス産生放出機構の解析、4)HAM発症機序の解析、の研究テーマを設定し分担研究をおこなった。
結果と考察
ウイルスが感染している末梢血CD4陽性T細胞を分離し、HAM、無症候性キャリア、HTLV-1陰性対照の各4例でDNAマイクロアレー解析し、HAMのみで発現が亢進する遺伝子群を177個抽出した。細胞間感染拡大に関連する遺伝子として細胞膜蛋白8遺伝子、細胞最外側に位置し細胞増殖やシグナル伝達に関与する糖鎖や糖鎖修飾に関与する6遺伝子がリストアップされた。糖鎖関連遺伝子が特異的に発現していることを受けて、糖鎖関連遺伝子、細胞表面の糖鎖構造の網羅的解析を開始した。細胞間感染実験系の解析から、感染を促進する細胞性因子としてインテグリン/リガンドシグナルと細胞内骨格の再構成の間に介在するp38MAPKが同定され、HTLV-1の膜蛋白を持つ高力価のGFP組換えVSVシュードタイプウイルスをもちいた感染実験系の解析により、感染促進分子としてヘパラン硫酸プロテオグリカンのコア蛋白質であるシンデカン1とシンデカン2を見いだした。HTLV-1特異的細胞傷害性T細胞が高度に集積していること、OX40が脊髄の病変局所浸潤細胞に強発現していることを明らかにした。
結論
生体内でのHTLV-1感染拡大に関与し、治療の標的となりうる分子が複数みいだされた。特に細胞表面の糖鎖構造の特異性が感染効率に関与している可能性が高く、候補の絞り込みをすすめる。

公開日・更新日

公開日
2010-08-31
更新日
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