筋疾患に対するマイオスタチン阻害療法の臨床応用基盤の確立

文献情報

文献番号
200935041A
報告書区分
総括
研究課題名
筋疾患に対するマイオスタチン阻害療法の臨床応用基盤の確立
課題番号
H20-こころ・一般-018
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
砂田 芳秀(川崎医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 土田 邦博(藤田保健衛生大学 総合医科学研究所)
  • 野地 澄晴(徳島大学大学院 ソシオテクノサイエンス研究部)
  • 濃野 勉(川崎医科大学 医学部)
  • 武田 伸一(国立精神・神経センター神経研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
24,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
筋ジストロフィーは進行性の筋萎縮と筋力低下をきたす予後不良の遺伝性疾患で、いまだに有効な治療法は確立されていない。本研究は骨格筋量を負に制御するマイオスタチンを創薬標的分子ととらえ、マイオスタチン阻害による筋ジストロフィー治療薬の開発と臨床応用に向けた基盤を確立することを目的とする。
研究方法
N-末端に細胞膜透過配列を付加した29アミノ酸から構成されるプロドメイン由来阻害ペプチド(Rp-29)を合成してカベオリン3欠損肢帯型筋ジストロフィーモデルマウス骨格筋に局所投与し治療効果を解析した。また、マイオスタチン阻害活性を持つ生体分子ホリスタチンの組換え蛋白分子FS-Nを新たに作製し、ヒト横紋筋肉腫由来のA204細胞を用いたルシフェラーゼ活性法により治療効果を検討した。アテロコラーゲンを担体としてマイオスタチンsiRNAを骨格筋へ導入し、筋張力を測定して治療効果を機能的に解析した。マイオスタチンの作用修飾分子であるfurinを骨格筋特異的にノックアウトしたマウスを作出し表現型を解析した。
結果と考察
マイオスタチンプロドメインの活性阻害領域に相当する29個の合成アミノ酸を肢帯型筋ジストロフィーモデルマウス骨格筋に局所投与し骨格筋量の20%の増加を達成した。ホリスタチン分子のN末端部分がマイオスタチンの阻害活性に重要であることが示された。また、FS-N分子とキメラ型のFSI-I分子のマイオスタチン阻害効果は同程度であった。変異caveolin-3Tgマウスに対するマイオスタチンsiRNA全身投与により、対照群の約3倍の張力増加が見られた。また、その回復した張力は野生型(C3H)マウスの約55%に達することが認められた。furin遺伝子をノックアウトした雄マウス(furin-/-)と対照群(furin+/-)を比べたところ、体重が3割ほど少なく成長速度に遅滞がみとめられた。握力も減少していることがわかった。
結論
独自に開発したマイオスタチン阻害ペプチドの局所投与により、筋ジストロフィーモデルマウスの筋量増大に成功した。またホリスタチン由来組換え蛋白のマイオスタチン阻害作用が確認され、あらたな治療分子として期待される。コラーゲンを担体とするマイオスタチンsiRNA療法の治療効果として筋量増大に加えて筋張力の改善も確認され、臨床応用に向けた更なる研究が期待される。骨格筋におけるfurinのノックアウトマウスの解析により、新たな治療標的分子が見いだされることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2010-08-31
更新日
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