小児領域を含む薬剤耐性感染症対策に係る地域間連携の標準モデルの策定・推進に資する研究

文献情報

文献番号
202318013A
報告書区分
総括
研究課題名
小児領域を含む薬剤耐性感染症対策に係る地域間連携の標準モデルの策定・推進に資する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23HA1002
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
宮入 烈(国立大学法人浜松医科大学 医学部 小児科学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 大久保 祐輔(国立研究開発法人国立成育医療研究センター  社会医学研究部)
  • 笠井 正志(兵庫県立こども病院)
  • 岩元 典子(木下 典子)(国立研究開発法人 国立国際医療研究センター 国際感染症センター)
  • 堀越 裕歩(東京都立小児総合医療センター 感染症科)
  • 伊藤 真人(国立大学法人金沢大学医薬保健研究域医学系)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
6,160,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
薬剤耐性菌による感染症は世界的な対応が必要な喫緊の課題である。2016年の「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン」において地域におけるAMR 対策推進が掲げられたが、未だに「標準モデル」は存在しないことが問題となっている。本検討では標準モデルに必要となる要素について検討し、地域モデルにおける実践を通してこれを検証することを主たる目的とする。
研究方法
下記の検討を通して目的を達成する。
(1) 地域を対象とした既存の国内の取り組みを精査し、必要とされる組織体制の要件を抽出する。本年度は既報のレビューを行う。
(2) データベースを用いた研究により、AMR対策に関する新たなエビデンスを創出する。レセプトデータを用いて、抗菌薬処方等に影響する因子について検討する。具体的には抗菌薬処方と薬剤耐性菌の関係性、抗菌薬適正使用以外の介入手段を検討する。抗菌薬処方量との関係が明確でないMRSAに関する伝播様式の検討をゲノム解析で検討する。
(3) 急病センターを中心とした地域のAMR対策モデルを推進し発展させる。
兵庫モデルにおいてそれぞ継続可能なモデルとして考案し、これを長期間にわたって継続している。同取り組みを静岡に取り入れる。
(4) 地域の一次診療を中心としたネットワークの好事例を検討する。
府中モデル、静岡モデルにおいてOASCISを導入したモニタリンツをフィードバックの検証をおこなう。
(5) 小児を中心に、耳鼻咽喉科、内科、他科との連携を図るため、小児耳鼻咽喉科学会との共同事業で教育啓発に努める。
結果と考察
(1) 標準モデルの基盤となる組織体制について過去の検討を検証した結果、都道府県を実施主体として、感染対策加算要件となっている地域連携の枠組み、新型コロナウイルス感染症のネットワークを生かして、抗菌薬のモニタリング、相互支援を中心とした具体的な介入手法が考案され、個々に成果を上げていることを確認した。
(2) 小児の新型コロナウイルス感染症やRSウイルス感染症に対する抗菌薬の使用実態を調査した。その結果、いずれの感染症においても抗菌薬の使用割合は経時的に減少していることを確認した。さらに、公開データ(JANISなど)を用いて、抗菌薬の処方実態と耐性菌の分布を分析したところ、地域差があることが確認された。
(3) 令和5年度は神戸こども初期急病センターにおける抗菌薬処方動向のモニタリングを継続した。過去2年間と比較して2023年は抗菌薬処方率が増加し2-3%程度を推移した一方で、アモキシシリンの適正処方率は増加した。2023年は過去2年間と比較してA群溶連菌感染症患者の流行をうけアモキシリンの処方件数が増加していた。全国の休日夜間急患センターへの展開を行う上で、AMR臨床リファレンスセンターによる診療所における抗菌薬適正使用支援システム (OASCIS)を浜松市の休日夜間急患センターに導入し効率よく情報を抽出できることを確認した。
(4) 東京、静岡のモデル地区において、OASCISを利用した一次診療のネットワークの構築が始まった。導入におけるハードルとして、診療所におけるモチベーションや匿秘性への懸念などが挙げられ、解消すべき課題と考えられた。
(5) 小児耳鼻咽喉科学会と連携し、学会シンポジウムを企画することで、双方の理解が進んだ。多科連携によるAMR対策活動の重要性が示唆された。
結論
薬剤耐性感染症対策に係る地域間連携の標準モデルの策定・推進については、都道府県を実施主体として、既存の感染管理ネットワークや急病センターを核に、1~3次医療機関が連携し、サーベイランスツールを活用した多診療科からなるネットワークの構築が必要と考えられた。

公開日・更新日

公開日
2025-06-23
更新日
-

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公開日・更新日

公開日
2025-06-23
更新日
-

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収支報告書

文献番号
202318013Z