成人の侵襲性細菌感染症サーベイランスの強化のための研究

文献情報

文献番号
202318011A
報告書区分
総括
研究課題名
成人の侵襲性細菌感染症サーベイランスの強化のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22HA1007
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
明田 幸宏(国立感染症研究所 細菌第一部)
研究分担者(所属機関)
  • 池辺 忠義(国立感染症研究所 細菌第一部)
  • 高橋 英之(国立感染症研究所 細菌第一部)
  • 常 彬(国立感染症研究所 細菌第一部)
  • 林原 絵美子(国立感染症研究所 細菌第二部)
  • 木下 諒(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
  • 大島 謙吾(東北大学病院 総合感染症科)
  • 田邊 嘉也(新潟大学 医歯学総合病院第二内科)
  • 後藤 憲志(久留米大学 感染制御学講座)
  • 笠原 敬(奈良県立医科大学 感染症センター)
  • 阿部 修一(山形県立中央病院 感染症内科・感染対策部)
  • 金城 雄樹(国立感染症研究所 真菌部)
  • 神谷 元(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
  • 土橋 酉紀(国立感染症研究所感染症疫学センター)
  • 有馬 雄三(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
  • 横山 彰仁(高知大学 教育研究部医療学系臨床医学部門)
  • 丸山 貴也(国立病院機構三重病院 臨床研究部)
  • 黒沼 幸治(札幌医科大学医学部呼吸器・アレルギー内科学講座)
  • 仲松 正司(琉球大学病院 感染対策室)
  • 大石 和徳(富山県衛生研究所)
  • 西 順一郎(鹿児島大学病院医学部・歯学部附属病院小児科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
12,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、国内10道県において侵襲性肺炎球菌感染症(IPD), 侵襲性インフルエンザ菌感染症(IHD),侵襲性髄膜炎菌感染症(IMD),劇症型溶血性レンサ球菌感染症(STSS)の患者及び病原体のサーベイランスを実施し、4疾患の発生動向と原因菌の血清型等の関連性を明らかにすることにある。また本研究対象細菌の細菌学的解析をゲノム解析を含めて実施する。
研究方法
対象とする症例は以下の通りである。IPD、IHD、IMD症例では、無菌的検体から原因菌が分離された症例で、臨床的に肺炎、敗血症、髄膜炎等と診断された症例。STSS症例では届出に必要な臨床症状と病原体診断の方法に合致する症例を対象とする。
国内の10道県において、15歳以上のIPD, IHD, STSS症例を登録する。IMDについては、全国47都道府県の全年齢の症例を対象とする。該当症例から分離された無菌的検体由来の菌株を収集後、感染研での細菌学的解析、遺伝学的解析、ゲノム解析に供する。症例情報について、登録症例の年齢、性別、併存症、予防接種歴等、病型、重症度、転機等の患者情報、原因菌の性状等を記録する。
結果と考察
10 道県のIPD 237 症例が報告され、そのうちの235 症例から分離された菌株において、血清型 3 型の分離率が最も高く、13.6% であった。また、血清型 15A、23A、35B の分離率もそれぞれ 11.1%、10.6%、9.4% と高かった。PCV13、PCV15、PCV20、PPSV23)に含まれる血清型の分離率は、28.9%、32.3%、46.0%、45.1% であった。病型別集計では経年変化を認めず、最多の病型は肺炎であり約6割を占めた。重症病型である髄膜炎は1~2割を占めた。新たな肺炎球菌ワクチンの導入に伴い、継続してIPDの発生動向、患者特性、血清型分布等を注視していくことが重要である。
IHD症例においては、分離された79株を解析したが、すべての株がnon-typable Haemophilus influenzae (NTHi)であった。β -lactamase 産生菌株は16 株(20.3%)であった。薬剤感受性は測定を行った65株のうち、β -lactamase 産生菌株14株を含む38株(57.1%)がアンピシリン耐性(低感受性含む)を示した。全国における15歳以上のIHDの届出数は、COVID-19流行後にIHDの新規発生数が大きく減少したことを示唆する傾向がみられたが、COVID-19の5類定点把握疾患移行後に新規届出数は増加し、緊急事態宣言前より多い傾向であった。研究班で収集された症例数も同様の傾向であった。
IMD症例も2023年度は増加傾向にあり、その起炎菌株の回収数も大幅に増加し、本年度は18症例のIMD起炎菌株(IMD株)もしくは臨床検体を回収し、解析した。血清学的解析の結果はY ;8株(44%)、B ;8株(44%)、W ;1株(6%)、Unknown;1株(6%)であった。2017年から開始されたIMD強化サーベイランスの約7年を経過した結果をまとめたところ、実際に国のサーベイランスに報告された症例のうち約8割の症例の詳細な情報が収集され外国からの報告と比較し、国内のIMDの疫学は小児や10代の症例が少なく、一方高齢者の占める割合は高いという特徴が認められた。
STSSでは10道県から113株を収集した。そのうちA群レンサ球菌によるものが42株、G群レンサ球菌によるものが51株、B群レンサ球菌によるものが20株であった。A群レンサ球菌のemm遺伝子型においては、最も多い型はemm1型で13株, 次いでemm12型が10株、emm89型が7株であった。G群レンサ球菌のemm遺伝子型においては、最も多い型はstG6792で13株, 次いでstG485が10株、stG652型が9株であった。またB群レンサ球菌の血清型においては、最も多い型はIb型とV型で6株ずつ、次いでIa型とIII型が4株ずつであった。
結論
コロナ禍において報告数の減少がみられた侵襲性細菌感染症もコロナ収束とともに増加へ転じている様子が確認された。コロナ禍前後における侵襲性細菌感染症の変化についてより詳細を解析し実態を明らかにすることが可能となりつつある。菌株のゲノム解析や数理モデル解析も実施されており、ワクチン有効性や新規ワクチンの導入を見据え、当該細菌感染症の感染対策、公衆衛生対策に資するエビデンスの取得をさらに進めることが重要である。

公開日・更新日

公開日
2025-08-05
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2025-08-05
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収支報告書

文献番号
202318011Z