文献情報
文献番号
202318009A
報告書区分
総括
研究課題名
我が国の狂犬病清浄性の検証及び関係機関の連携強化のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22HA1005
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
前田 健(国立感染症研究所 獣医科学部)
研究分担者(所属機関)
- 井上 智(国立感染症研究所 獣医科学部)
- 伊藤 直人(岐阜大学応用生物科学部)
- 西園 晃(大分大学医学部感染分子病態制御講座)
- 西浦 博(国立大学法人北海道大学 大学院医学研究科 社会医学講座衛生学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
4,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
狂犬病予防法が1950年に施行されて、犬の登録義務、ワクチン接種義務、動物検疫により、1957年の猫での発生を最後に国内における動物での発生はない。一方、人では1954年の最後の国内発生以降、東南アジアからの帰国者あるいは来日外国人で、1970年1名、2006年2名、2020年1名発生している。国内動物検疫では2005年に「動物の輸入届出制度」が実施され、狂犬病感染動物の侵入防止に向けた対策が強化されている。我が国は狂犬病予防法ならびに関係者の努力の成果として、世界でも稀な狂犬病清浄国となっている。しかし、1950年に制定された狂犬病予防法に関しては、現状に合致しない問題点も存在している。また、2022年からはマイクロチップ(MC)の装着義務化なども施行され、販売業者にはMCの装着義務、それ以外には装着努力義務が課された。MCが装着されていない犬と装着された犬が共存するようになり、犬の飼養環境も大きく変化している。
動物の狂犬病を最初に診断する可能性が高い獣医師並びに獣医療関係者への狂犬病に対する意識改革のための方策と発生時対応、野生動物での検査体制と狂犬病発生時の対策、狂犬病患者を診断する可能性が高い医師・看護師への意識改革のための方策と発生時対応、狂犬病ワクチン接種に関わるリスク分析など検討が必要な課題がある。
我が国を世界でも稀な狂犬病の清浄国へと導いた狂犬病予防法であるが、清浄化後でも必要な対策及び現在の犬の飼養状況を踏まえた対策が必要である。狂犬病予防に関わる多くの関係者との連携を強化し、意見交換を行い、現状に即した感染症対策を提言することを目標とする。
動物の狂犬病を最初に診断する可能性が高い獣医師並びに獣医療関係者への狂犬病に対する意識改革のための方策と発生時対応、野生動物での検査体制と狂犬病発生時の対策、狂犬病患者を診断する可能性が高い医師・看護師への意識改革のための方策と発生時対応、狂犬病ワクチン接種に関わるリスク分析など検討が必要な課題がある。
我が国を世界でも稀な狂犬病の清浄国へと導いた狂犬病予防法であるが、清浄化後でも必要な対策及び現在の犬の飼養状況を踏まえた対策が必要である。狂犬病予防に関わる多くの関係者との連携を強化し、意見交換を行い、現状に即した感染症対策を提言することを目標とする。
研究方法
研究代表者および研究分担者が以下の研究課題を実施.
・「統括と関係機関との意見交換および調整」(研究代表者 前田健)
・「狂犬病を含むリッサウイルスの診断・予防に関する研究」(研究代表者 前田 健)
・「野生動物における狂犬病の調査とその対応策の検討」(研究分担者 伊藤直人)
・「狂犬病のリスク評価とそれを用いた提言」(研究分担者 西浦博)
・「人(邦人)における狂犬病対策の課題とその対応策の検討」(研究分担者 西園晃)
・「狂犬病に対する獣医師及び関係者の意識改革のための対応策」(研究分担者 井上智)
・「統括と関係機関との意見交換および調整」(研究代表者 前田健)
・「狂犬病を含むリッサウイルスの診断・予防に関する研究」(研究代表者 前田 健)
・「野生動物における狂犬病の調査とその対応策の検討」(研究分担者 伊藤直人)
・「狂犬病のリスク評価とそれを用いた提言」(研究分担者 西浦博)
・「人(邦人)における狂犬病対策の課題とその対応策の検討」(研究分担者 西園晃)
・「狂犬病に対する獣医師及び関係者の意識改革のための対応策」(研究分担者 井上智)
結果と考察
1)狂犬病を含むリッサウイルスに対する診断法、予防法における問題点を解析し、その対応策について検討した。国内の狂犬病対策における問題点の抽出とその解決を目指して,関係各位と意見交換した.得られた要望や課題に関しては,研究班としての意見を取りまとめた.
2)野生動物の有害駆除個体、交通事故個体等の死体を対象に狂犬病検査を行い、陰性を確認した上で、関連する課題を抽出した。また、野生動物の検査結果を毎年報告している自治体関係者への聞き取り調査を実施し、検査体制の実態を明らかにした。
3) 2年目となる令和5年度には、犬の個体群における免疫保持割合の定量化に成功し、未来の予防接種施策毎に予想される免疫保持割合の変化の予測を可能とした。そして、都道府県ごとの免疫保持犬の割合の定量化とそれに影響を与える影響因子を明らかにした。また、東南アジア諸国を対象とした狂犬病のリスクマッピングを実施し、州レベルでのリスクの可視化を実施した。分析そのものの妥当性については疫学を専門にする立場から分析し、その結果を研究班会議で提供した。定期的に開催した研究班会議では分析結果について他の研究班員と共有し、これまでの研究では不足している点や諸外国の研究結果についての検討を要する点について議論を重ねた。
4)「医療者向け狂犬病感染予防ガイドライン」のための医療従事者向け狂犬病患者対応マニュアルを完成し、公開した。
5)本研究では、狂犬病予防に係る関係者(自治体・獣医師・大学機関等)の意識改革に効果的な啓発法とこれに使用するための教材等資料を収集してパッケージに取りまとめた。
2)野生動物の有害駆除個体、交通事故個体等の死体を対象に狂犬病検査を行い、陰性を確認した上で、関連する課題を抽出した。また、野生動物の検査結果を毎年報告している自治体関係者への聞き取り調査を実施し、検査体制の実態を明らかにした。
3) 2年目となる令和5年度には、犬の個体群における免疫保持割合の定量化に成功し、未来の予防接種施策毎に予想される免疫保持割合の変化の予測を可能とした。そして、都道府県ごとの免疫保持犬の割合の定量化とそれに影響を与える影響因子を明らかにした。また、東南アジア諸国を対象とした狂犬病のリスクマッピングを実施し、州レベルでのリスクの可視化を実施した。分析そのものの妥当性については疫学を専門にする立場から分析し、その結果を研究班会議で提供した。定期的に開催した研究班会議では分析結果について他の研究班員と共有し、これまでの研究では不足している点や諸外国の研究結果についての検討を要する点について議論を重ねた。
4)「医療者向け狂犬病感染予防ガイドライン」のための医療従事者向け狂犬病患者対応マニュアルを完成し、公開した。
5)本研究では、狂犬病予防に係る関係者(自治体・獣医師・大学機関等)の意識改革に効果的な啓発法とこれに使用するための教材等資料を収集してパッケージに取りまとめた。
結論
国内の狂犬病対策を推進することを目的として,1)狂犬病を含むリッサウイルスに対する診断法、予防法における問題点を解析し、その対応策について検討した。2)狂犬病対策にかかわる関係者との意見交換を行い,課題を検討した.3)野生動物での狂犬病調査の課題を検討した。4)狂犬病発生時の人での対応策を検討した。5)狂犬病に関わるステークスホルダーへの教育について検討した。6)犬におけるワクチン接種のシナリオ別の集団免疫保有率を評価した。
公開日・更新日
公開日
2025-01-20
更新日
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