健康づくりの長寿に及ぼす影響に関する研究(コホート研究)

文献情報

文献番号
199700664A
報告書区分
総括
研究課題名
健康づくりの長寿に及ぼす影響に関する研究(コホート研究)
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
久我 正(財団法人愛知県健康づくり振興事業団)
研究分担者(所属機関)
  • 久繁哲徳(徳島大学)
  • 犬塚君雄(愛知県庁)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 長寿科学総合研究事業
研究開始年度
平成7(1995)年度
研究終了予定年度
平成9(1997)年度
研究費
4,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
管内にあいち健康の森をもつ2市町(大府市・東浦町)をモデル地域とし、市町と連携をとりつつ健康づくり実践指導などの介入の検討を行い、同人口規模の2市町(豊明市・幸田町)を対照地域に設定し、全24項目(健康状態、生活習慣、日常行動など)からなるアンケートを同一対象者に平成4年から3年ごとに実施し、アンケート回答の変化から、地域での健康づくり事業が、住民の長寿に及ぼす影響を評価する。
研究方法
アンケート調査の対象者は、2市2町に在住で40歳以上の国民健康保険加入者(平成4年現在30,392名)の内、平成4年と平成7年に実施した2回アンケート調査回答者の結果を基に以下の研究を行った。また、調査開始から平成8年1月まで(3年3ヶ月間)の死亡者について、第1回のアンケート調査の結果を基に、性別・年代ごとに分類し、生存している者とのQOLの違いについてクロス集計を行った。
1. 第3回目のアンケート調査の実施
第1回目のアンケート調査回答者の内、死亡者を除く12,393名を対象にアンケート調査を実施した。アンケートの内容として、過去2回実施した項目のほかに、あいち健康プラザが開設されたことの影響を調査する項目を加え作成した。
2. 生活の質と生命の量に関連する要因
生活の質及び生命の量に関する関連要因の検討を行い、生活の質として多属性効用指標とともに効用値を用い、生命の量については調査期間中の生存と死亡をそれぞれ指標として用いた。なお、関連要因としては、第1回目のアンケート調査で得た生活習慣行動及び保健サービスを用いた。
3. 健康づくり施策の介入による個人のライフスタイルの変化
過去2回実施したアンケート調査の結果を基に、食習慣の項目についての比較検討を行った。また、4市町のアンケート調査実施年度(平成4年度及び平成7年度)における健康づくり関連事業の比較検討を行い、対象者の意識及び行動と健康づくり施策の関連について分析を行った。
結果と考察
調査対象者の死亡状況の把握:各群間における死亡者数の割合は、男女とも老年群が高い傾向にあり、男性で13.2%女性では8.6%であった。運動習慣では、さっさと歩く・階段をよく使う・毎日1度は必ず散歩するの3項目について、高年群・老年群の男女ともに生存者が死亡者よりも高い傾向にあった。食習慣については、男女とも各群間に大きな差は認められなかった。生活に対する満足度は、現在の健康状態に満足している・将来に対する夢や希望があるの2項目について生存者が死亡者よりも高い傾向にあった。また、男性においては、現在の友人づきあいに満足している者の割合も同様に生存者が死亡者よりも高い傾向にあった。
1.第3回目のアンケート調査の実施:対象である4市町の協力により、地域の現状に則した 項目の検討を行い、12,393名(大府市4,508名・東浦町2,659名・豊明市3,579名・幸田町1,647名)にアンケートを送付し、7,851名(回答率63.4%)から回答を得、現在集計処理を行っている。
2.生活の質と生命の量に関連する要因:生活の質の関連要因は重回帰分析を用い、変数選択にはステップワイズ法を用いた結果、生存に影響する要因として20要因が認められ、寄与率は25.9%であった。個別の要因として人口学的特徴である性別・年齢が挙げられた。また、既往歴では心臓病・糖尿病・腎臓病・癌が挙げられた。生活習慣としては運動習慣・食習慣及び飲酒が、保健サービスとしては健康診断の利用状況がそれぞれ関連要因として挙げられた。生命の量の関連要因はロジィスティック分析を用い、変数選択にはステップワイズ法を同様に用いた結果、生存に影響する12要因が認められ、これらの判別率は95%であった。個別の要因として人工学的特徴である性別・年齢が挙げられた。また、既往歴では糖尿病と癌が挙げられた。生活習慣として、運動・栄養が、保健サービスとして健康診断の利用がそれぞれ関連要因として挙げられた。
3.健康づくり施策の介入による個人のライフスタイルの変化:食習慣の7項目を4市町で比較すると、東浦町が7項目中5項目について意識が高まっており、大府市においては2項目に見られ、住民の食に対する意識の向上がうかがわれた。また、第1回及び2回のアンケート調査実施年度の一人当り年間医療費を一般被保険者分の療養諸費等で見ると、この4年間では4市町とも増大している。特に、豊明市及び幸田町では県平均よりも高額になっているが、大府市及び東浦町は低額になっている。同様にアンケート調査実施年度の老人保健医療費及び健康づくり事業費は、4市町ともに増加はしているものの東浦町については、著しい増加が認められた。次に、健康づくり事業の状況は大府市・東浦町・幸田町に参加人数の増加が見られた。老人保健法による保健事業の状況では、すべての項目において東浦町の充実ぶりが認められた。
結論
本研究は、最低でも後10年間は継続的に追跡することを目標としている。現在のところ第1回と第2回(4年間)のアンケート調査の結果から、行政機関や自治体の健康づくり事業の充実により、少なくとも住民のQOLの変化に寄与していると思われる。特に、生活習慣改善を目視した介入指導により、生命の量・生活の質ともに向上させ得ることが示唆されたことで、今後具体的な介入方法として『あいち健康プラザ』が開所され、健康づくり事業支援など行政機関との連携を図り、積極的な健康づくり指導を行うことにより、住民の健康指標にどのような変化をもたらすのか、そして住民のQOLの向上にどのように役立つのかを検討したい。

公開日・更新日

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更新日
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