診療所及び高齢者施設を対象とする効率的・効果的な薬剤耐性菌制御手法の確立のための研究

文献情報

文献番号
202318006A
報告書区分
総括
研究課題名
診療所及び高齢者施設を対象とする効率的・効果的な薬剤耐性菌制御手法の確立のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22HA1002
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
大毛 宏喜(国立大学法人広島大学 病院 感染症科)
研究分担者(所属機関)
  • 菅井 基行(国立感染症研究所 薬剤耐性研究センター)
  • 八木 哲也(国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学 大学院医学系研究科)
  • 矢原 耕史(国立感染症研究所 薬剤耐性研究センター)
  • 飯沼 由嗣(金沢医科大学 臨床感染症学講座)
  • 村木 優一(三重大学医学部附属病院 薬剤部)
  • 清祐 麻紀子(九州大学病院 検査部)
  • 森 美菜子(広島大学病院 感染制御部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
10,150,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 感染防止対策加算を算定していない比較的小規模な医療機関や,高齢者施設に対する感染対策の推進を目的とする.この領域は人材,財源,物的資源が限られている.今後根拠のある施策を立案するため,現実的で有効性が期待できる政策提言が必要である.
研究方法
 疫学研究者,基礎研究者,臨床医,薬剤師,臨床検査技師,看護師,の多職種で校正された研究班とした.高齢者施設における薬剤耐性菌マニュアルを作成する上では,既存のマニュアルやガイドとの整合性を図ること,介護職など医療知識が必ずしも十分でない職種にとっても理解・活用しやすいものとすることを目指している.また財源が限られている中で,現実的な対策も必要である.最終的に高齢者施設における感染対策に何らかの財源が必要な際に,その根拠となる基礎的データの構築も目指す.
 診療所における抗菌薬適正使用では,医師の処方に踏み込むために,「現状で何が問題なのか」という処方医の疑問に答えうる根拠を明確にする.各種データベースの分析と薬剤耐性状況との相関関係を証明できる分析結果を目指す.
結果と考察
 高齢者施設における薬剤耐性菌マニュアルは,類似のガイドが厚生局より過去に発出されている.本研究班におけるマニュアルでは,ウイルスなどは含まず,薬剤耐性菌に特化したものとすることとした.平時の感染対策に加え,薬剤耐性菌のアウトブレイクが疑われた際の保健所や関連医療機関との連携,施設内における指揮系統と対応といった有事対策も盛り込むこととした.ただし医療機関と同様なレベルの感染対策を求めることは現実的でなく,どこまでを許容するかが作成上の課題となる.例えば医療機関では常識である各種医療材料のディスポ化は,高齢者施設では洗浄・再使用が日常的に行われている.マニュアルの作成上,このような課題をクリアする必要があると考えている.
 診療所での経口抗菌薬を中心とした抗菌薬適正使用では,キノロン系薬と第三世代セファロスポリン系薬の使用量が,病院と比較して10倍以上であることが明らかになった.データベースの分析により,このような経口抗菌薬の過剰な使用が明らかになっている.また抗菌薬含有外用薬や点眼薬の処方量は,特に高齢者において多く,適切とは言い難い状況と考える.これらの使用が薬剤耐性菌保菌にどの程度関与しているかを証明するのは,これまで容易でなかった.今回本研究班では,病院と診療所の両者で大腸菌菌血症患者から分離された菌の薬剤感受性を比較した結果,診療所ではキノロン系薬と第三世代セファロスポリン系薬への耐性菌保菌率が,診療所では5%高率であることを明らかにした.この結果は我が国で初めて経口抗菌薬処方と薬剤耐性菌保菌との関係を示唆しうる研究成果である.
結論
 高齢者施設における感染対策マニュアルの作成は,これまで光が当たりにくかった領域での感染対策レベル向上に資すると同時に,問題点を浮き彫りにしてどのような施策が必要かを明らかにすると考えている.また診療所における抗菌薬適正使用は,現状のままでは何が悪いのかという処方医の疑問に明確な回答を提示し,我が国の適正使用推進に貢献できる研究としたい.

公開日・更新日

公開日
2025-06-23
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2025-06-23
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202318006Z