文献情報
文献番号
200935023A
報告書区分
総括
研究課題名
プリオン病における免疫反応の解明とそれに基づく診断・治療法の開発
課題番号
H19-こころ・一般-024
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
片峰 茂(長崎大学)
研究分担者(所属機関)
- 西田 教行(長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科)
- 調 漸(長崎大学病院 へき地病院再生支援・教育機構)
- 坂口 末廣(徳島大学 疾患酵素学研究センター 神経変性疾患研究部門)
- 杉村 和久(鹿児島大学 工学部 化学生命工学科)
- 橋口 周平(鹿児島大学 工学部 化学生命工学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
26,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究では自然免疫を含む免疫反応の意義を解明し、免疫応答を利用したプリオン病診断、予防・治療法の確立を目指した。
研究方法
自然免疫:プリオン感染マウスモデル、培養感染細胞における宿主自然免疫関連因子の発現様式を解析した。IRF3遺伝子欠損マウスを用いてプリオン感染におけるIRF3の役割を解析した。
抗体療法とワクチン:ヒトPrPのβ-PrPファイバーに結合するscFv抗体ファージ及びFab抗体ファージを単離し、抗プリオン効果を調べた。抗プリオン抗体Sh3.9 発現レンチウイルスベクターをミクログリア細胞株 (Ra2) に遺伝子導入後、マウス脳内に移植し感染実験を行った。サイトカイン(IL-12またはTGFβ)とPrPを同時に発現するDNAワクチンを作製し、マウスでの抗体産生誘導能を調べた。
髄液中サイトカイン測定:クロイツフェルト・ヤコブ病患者の髄液検査については長崎大学附属病院倫理委員会の承認を経て、インフォームドコンセントを取り実施した。クロイツフェルト・ヤコブ病患者(41例)、アルツハイマー型認知症等(53例)、正常コントロール(18例)の髄液を用いて、髄液内のINF-α、β、γ等についてELISA法にて定量した。IL-1β、IL-6、TNF-αについては血清中の濃度も同時に測定した。
抗体療法とワクチン:ヒトPrPのβ-PrPファイバーに結合するscFv抗体ファージ及びFab抗体ファージを単離し、抗プリオン効果を調べた。抗プリオン抗体Sh3.9 発現レンチウイルスベクターをミクログリア細胞株 (Ra2) に遺伝子導入後、マウス脳内に移植し感染実験を行った。サイトカイン(IL-12またはTGFβ)とPrPを同時に発現するDNAワクチンを作製し、マウスでの抗体産生誘導能を調べた。
髄液中サイトカイン測定:クロイツフェルト・ヤコブ病患者の髄液検査については長崎大学附属病院倫理委員会の承認を経て、インフォームドコンセントを取り実施した。クロイツフェルト・ヤコブ病患者(41例)、アルツハイマー型認知症等(53例)、正常コントロール(18例)の髄液を用いて、髄液内のINF-α、β、γ等についてELISA法にて定量した。IL-1β、IL-6、TNF-αについては血清中の濃度も同時に測定した。
結果と考察
プリオン感染はTLR3,RIG-Iといったウイルス由来dsRNAセンサー分子に認識され、IRF3-IFN-Iの活性化を引き起こした。IRF3欠損マウスを用いた感染実験では、ファージ抗体のうち異常型特異的抗体PRB7単鎖抗体が持続感染細胞の異常型プリオン蛋白を減少させ、Sh3.9scFv産生 microglia細胞を脳内移植後チャンドラー株感染を行ったところ生存期間の延長が見られた。クロイツフェルト・ヤコブ病患者脊髄液におけるサイトカイン等の発現を他と比較検討した結果、IL8、IL10が有意に上昇していることを見いだした。
結論
プリオン感染、増殖における自然免疫系の抑制作用を明らかにした。宿主自然免疫とくにウイルス由来のRNAを認識する機構がプリオン感染にも応答していることは世界初の知見であり、驚きに値する。抗プリオン活性を持つ異常型PrP特異的ヒト型抗体を得た。マイクログリアを用いたPrP抗体デリバリーの発症予防可能性が見出された。IL-12-PrP―DNAワクチンは抗体産生誘導をし、予防効果が期待された。
公開日・更新日
公開日
2010-06-15
更新日
-