技術革新を視野に入れた補装具費支給制度のあり方のための研究

文献情報

文献番号
202317049A
報告書区分
総括
研究課題名
技術革新を視野に入れた補装具費支給制度のあり方のための研究
課題番号
23GC2004
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
浅見 豊子(佐賀大学医学部附属病院 リハビリテーション科)
研究分担者(所属機関)
  • 藤原 清香(東京大学医学部附属病院 リハビリテーション部)
  • 西嶋 一智(宮城県リハビリテーション支援センター)
  • 横井 剛(横浜市総合リハビリテーションセンター 医療部)
  • 福島 邦博(医療法人さくら会)
  • 中村 隆(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所義肢装具技術研究部)
  • 丸山 貴之(国立障害者リハビリテーションセンター 学院(研究所併任))
  • 山田 明子(国立障害者リハビリテーションセンター リハビリテーション部 ロービジョン訓練)
  • 須田 裕紀(新潟医療福祉大学 リハビリテーション学部 義肢装具自立支援学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
12,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
基本工作法は、細かな変更以外は約40年間変更されていない。本研究の目的は、令和6年4月及び令和9年4月の障害福祉サービス報酬改定に向けて、「補装具の種目、購入等に要する費用の額の算定等に関する基準」(以下、支給基準)を設定することである。
研究方法
1.運動器系補装具
・支給判定:更生相談所への「セカンドオピニオン」の必要性のヒアリング
・支給基準の価格検討:
<義肢>現状と乖離する因子の検証
<装具>採型方法の実費用と作業時間の検討
<車椅子>価格を本体価格、機能による加算価格、付属品に分類し、令和6年4月の改定案を作成し、関係者へのヒアリング、アンケートを施行
・基本工作法における新技術に関する調査:3Dデジタル技術の運用に関する実態調査と分析
・借受制度の運用と課題に関する調査:制度、事業者・利用者の問題点、実態調査、運用試用評価
2.視覚系補装具
・支給基準の価格検討
・視覚系補装具支給実態調査
・視覚系補装具に関する情報発信の調査
3.聴覚系補装具の実態調査
4.重度障害者用意思伝達装置の実態調査
結果と考察
結果
1.運動器系補装具
・支給判定:「医師の意見」に従った判定傾向があり、セカンドオピニオンへの意見は多様だった。
・支給基準の価格検討:
<義肢>採型区分や形式により利益率が大きく異なった。
<装具>印象材の採型方法の作業時間と材料代を検討した。
<車椅子>3分類にし、基本工作法に関する作業の項目と内容をまとめた。
・基本工作法における新技術に関する調査:
<3D技術の導入の状況>導入済み・予定・検討を含めると63%であった。
<分野別の3D導入状況>足底装具・インソール分野、体幹装具分野、下肢装具分野の順であった。
<3D技術の導入の特徴>「データ保管と管理」「再製作が容易」等の利点と「採算性、事業所の形態との相性」「採型の精度や適合性」等の欠点があった。
・借受制度の運用と課題に関する調査:課題と有効性及び経済的な効果試算を明らかにした。
2.視覚系補装具
・支給基準の価格検討:価格変動に種類差があった。
・視覚系補装具支給実態調査:価格上昇がみられた。
・視覚系補装具に関する情報発信:情報提供のニーズは高かった。
3.聴覚系補装具
市場全体で価格上昇があった。支援法補聴器は販売の10%程度で、差額自己負担がその3分の1であった。
4.重度障害者用意思伝達装置
基本構造についての検討が必要で、価格変動の大きい項目があった。

考察
1.運動器系補装具
・支給判定:既存の仕組みとセカンドオピニオンの運用方法について整理が必要である。
・支給基準の価格検討:
<義肢>義足等の価格適正化は、事業者と義肢装具士への寄与につながる。
<装具>印象とギプス材の材料代、製作加工費の作業人件費、採型時間の差にみあった費用設定が必要である。
<車椅子>構成が明確になった。今後は、制度理解の促進が重要である。
・基本工作法における新技術に関する調査:
<3D技術の導入の状況>導入は拡大傾向にあった。
<足底装具・インソール分野>従来製法と3D製法の比較やエビデンス検証が必要である。
<体幹装具分野>公的制度が必要である。現状は体幹装具に活用されていた。
<下肢装具分野>従来製法と3D技術の使い分けが予想された。
・借受制度の運用と課題に関する調査:活用できるシステム整備が必要である。
2.視覚系補装具
・支給基準の価格:修理基準、度数分類、適正な評価、定義の見直し、価格の適正化等が必要である。
・視覚系補装具支給実態調査:アセスメント方法等の検討や関係者への情報提供の場が必要である。
・視覚系補装具に関する情報発信:関係者の情報共有の場が必要である。
3.聴覚系補装具
差額自己負担調査や原価率及び適切な装用プロセスの明示化が必要である。
4.重度障害者用意思伝達装置
居宅での適合や設定などの費用も考慮すべきである。
結論
1.運動器系補装具
・支給判定:セカンドオピニオン提供の場は、更生相談所の対応を拡げる可能性がある。
・支給基準の価格検討:
<義肢>義肢の価格再考が必要である。
<装具>印象材等の新たな採型区分が必要である。
<車椅子>構成する基本仕様価格、機構の選択に関わる価格、付属品に関わる価格に分類できた。
・基本工作法における新技術に関する調査:3D技術の活用の方法や導入状況等が明らかになった。
・借受制度の運用と課題に関する調査:完成用部品購入金額が抑えられる可能性があった。
2.視覚系補装具
・支給基準の価格検討:価格の上昇がみられた。
・視覚系補装具支給実態調査:活用状況や制度上の情報共有に課題があった。
・視覚系補装具に関する情報発信:情報提供の必要性が示唆された。
3.聴覚系補装具
補聴器販売の質的・量的に拡充が必要であった。市場価格と制度内補聴器の乖離があった。
4.重度障害者用意思伝達装置
基準価格と実情との大きな乖離の可能性があった。

公開日・更新日

公開日
2024-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2024-06-03
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収支報告書

文献番号
202317049Z