良質な精神保健医療福祉の提供体制構築を目指したモニタリング研究

文献情報

文献番号
202317045A
報告書区分
総括
研究課題名
良質な精神保健医療福祉の提供体制構築を目指したモニタリング研究
課題番号
22GC2004
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
西 大輔(東京大学大学院医学系研究科 精神保健学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 立森 久照(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター神経研究所疾病研究第七部)
  • 高瀬 顕功(大正大学 社会共生学部)
  • 吉田 光爾(東洋大学 福祉社会デザイン学部社会福祉学科)
  • 瀬戸 秀文(福岡県立精神医療センター太宰府病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
34,167,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は精神科と他の診療科との連携、地域の多様な生活支援との連携による良質かつ適切な精神医療の持続的な確保のための要件を明らかにすることである。また、その促進を図るモニタリングの体制と、今後の医療計画および障害福祉計画に資する指標を提案し、各都道府県・市区町村においてデータを用いた計画の推進とモニタリングの推進を支援することを目的とした。
研究方法
A班:医療計画の検討プロセス、指標例の採用・不採用予定、現状の課題等に関する47都道府県の精神保健福祉の主管課を対象とした実態調査を行った。B班:精神医療の提供のモニタリングを目的とした全国調査を令和5年度も実施した。例年通り全国の精神科医療機関、訪問看護ステーション、および都道府県・政令指定都市の精神保健主幹課であった。C班:2013年1月から2022年12月の間に①精神病床入院、②精神科治療薬処方、③精神科専門療法、④精神科診断、⑤精神科管理に関する算定のある患者を特定して、診療行為・医薬品・傷病名情報を観察するため、NDBデータを使用した。D班:ReMHRAD(地域精神保健医療福祉資源分析データベース)を用いて、より洗練された形での「見える」化システムを開発するための、研究開発を行った。E班:前年度までに収集した前向きコホート研究、検察官通報データについてデータの集計、学会発表、論文化作業ならびに報告書作成作業を行った。
結果と考察
A班:医療計画と障害福祉計画の関係性について、ほとんどの都道府県が一体となって、あるいは連携をして策定をしているプロセスが明らかになった。基準病床算定数はすでに策定していると回答したすべての都道府県が厚労省が公表している値を使用すると回答していた。各指標についてはストラクチャ・プロセスは多くの都道府県が調査時点ですでに「未定もしくは未回答」「採用予定なし」の割合が最も高かったものの、アウトカム指標は「採用予定なし」の割合は低かった。独自設定の指標は幅広く様々な指標が挙げられており、地域の課題に合わせた指標を都道府県ごとに設定をしている状況が伺えた。
B班: 本調査は中長期的なモニタリングを目的としている調査であるため,同一項目を定期的に収集していくことに意義がある。その一方で,精神保健医療福祉に関する法律・施策・調査協力機関の現状・社会的なニーズ等を踏まえた調査を実施する必要があるため、それらの検討を行い調査を実施した。その結果,例年通りの回収率を維持しつつ,より正確なデータの把握が達成できたと考える。
C班: 2013年度から2020年度の入退院患者を観察した結果、地域平均生活日数は向上しつつあるものの、90日時点の退院患者割合の変動は小さいことが示された。2021年度における入院受療率は年齢と共に上がり、85歳以上の認知症を有する患者が最も高いことが確認された。第1回緊急事態宣言の前の期間と、後の期間を比較すると、第1回緊急事態宣言の前後で、一部の年齢層において、入院患者数が減少し外来患者数が増加していた。
D班: ReMHRADに①第8次医療計画指標の表示機能、②発達障害に関する社会資源情報の掲載をした。また追加検討として③630調査の退院者転帰情報、④ヒートマップ機能、⑤社会資源マップ冊子の自動生成などに関して、検討した。
E班: 前向きコホート研究では、観察期間1095日で、退院後の研究協力施設への通院継続期間は、平均413.1日±標準誤差22.5日であった。また全494例のうち115例(23.2%)で再入院しており、再入院までの期間は、平均172.6日±標準誤差14.0日であった。検察官通報における事前調査項目の診察要否判断のOdds比が高い項目は、自傷行為あり8.6、他害行為あり7.8、精神科治療歴あり6.8、幻覚妄想・病的言動あり5.7などであった。措置診察での措置要否判断においては、易怒性・被刺激性亢進10.9、幻覚妄想状態4.5、衝動行為3.5、傷害3.2など、Odds比が高かった。
結論
医療計画に関する検討はA班を中心としつつ、我が国の精神保健医療福祉に関するモニタリングや制度に関する検討は他の分担研究にて検討を進めることができた。令和6年度は今年度の成果をもとに、第8次医療計画の中間見直しに向けた議論や、自治体担当者向け研修の実施、更なる公表データの充実と利用しやすい環境構築を引き続き行う予定である。

公開日・更新日

公開日
2024-06-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2024-06-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202317045Z