見えづらさを来す様々な疾患の障害認定・支援の方法等の確立に向けた研究

文献情報

文献番号
202317043A
報告書区分
総括
研究課題名
見えづらさを来す様々な疾患の障害認定・支援の方法等の確立に向けた研究
課題番号
22GC2001
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
村上 晶(順天堂大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 原 直人(国際医療福祉大学 保健医療学部 視機能療法学科)
  • 秋山 久尚(聖マリアンナ医科大学 脳神経内科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
10,424,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
視覚障害の認定基準(平成30年7月改訂)の検証と、現行の認定法では視覚障害の適切な評価が難しいと指摘されている症状や状態(羞明、眼瞼痙攣、片眼失明者等)を有する者への障害認定と生活支援のあり方について総合的に検討する。
テーマ1現行の視覚障害の認定基準の検証と課題の検討
①改訂認定基準のもとでの、特定の病態における障害の判定方法や、運用上の課題について整理と課題解決法の探索
②視機能障害に起因する著しい日常生活動作(ADL)障害があるが認定に至らない眼疾患や眼症状(片眼失明等)を有する対象者の調査と支援法の検討
テーマ2眼球使用困難症候群」の病態解明・客観的診断方法の確立に向けた研究
「眼球使用困難症候群」(眼球の機能は十分あるのに、その機能の使用を著しく困難にする羞明、眼痛、混乱視、開瞼失行などのさまざまな要因を有する病態の総称)を継続的に有する方々が存在する。発症機序や原因は不明で、全くあるいは殆ど開瞼持続が出来ない、もしくは僅かな光の入力により身体の重度な症状が出現するため、視力測定のような検査自体が不能な場合が多い。視力や視野など視機能検査が可能である場合には正常範囲となり視覚障害者には至らない結果が選られる。日常・社会生活においては、測定された保有視機能を持続的に有効利用ができない。このため障害の重症度について定量性のある手法はなく、他覚的検討も不可能で記述的アプローチしかなかった。現行法で認められている障害等級に照らして、妥当な判定手段、判定基準を作成する。
研究方法
1.視覚障害認定基準研究
 データベース検索をおこない日本の視覚障害による身体障害者等級判定に関する文献検索およびFVS関連論文の文献検索は2022年の報告書と同様の方法で2022年以降に発表されたものとした。
2.障害認定に至らない眼疾患調査
順天堂医院初診患者における片眼のみの失明者受診状況調査(片眼失明者受診状況調査)のため、2021年から2022年の順天堂医院に初診患者の視力検査のから、片眼ごとの失明者の抽出をおこない、臨床的特徴とその視機能の予後について検討をおこなった
3.眼球使用困難症の検査法の確立にむけた研究
羞明を訴える患者において、視覚誘発電位の潜時と振幅、色刺激瞳孔対光反射各パラメータとの相関を解析し、脳波と瞳孔対抗反応が、羞明の強度を日常生活に照らし合わせて質問票との相関を解析して、他覚的評価方法となるかを検討した。
羞明を来す代表的疾患である片頭痛の治療において抗CGRP関連抗体薬が導入されており、それらの有効性についての臨床経過観察を通常診療のなかでおこなった。
眼球使用困難症候群」の病態解明・客観的診断方法の確立に向けた研究のためのプロトコールの妥当性について再検討がおこなわれた。


結果と考察
1.視覚障害認定基準において原因疾患として緑内障の割合がほぼ倍増となった。重症例が短期間のうちに急増したとは考え難く,視野基準改正による可能性を示唆する報告があった。原因疾患によりGPとHFAの視野等級が多くなる例が示され,特に緑内障に比べて,網膜色素変性,視神経疾患はHFAでより軽症に判定される傾向が明らかになった。
2.初年度から継続解析をおこなっている3次医療機関(順天堂医院)における調査では、片眼のみの失明者は眼科初診患者の2%をしめていた。
3.眼球使用困難症の検査法において、視覚誘発電位の潜時と振幅、色刺激瞳孔対光反射各パラメータとの相関を解析しこれらの検査が羞明の有用な他覚的評価法となりうることを確認された。
4.眼球使用困難症候群と共通した症状である羞明を来す片頭痛の治療において抗CGRP関連抗体薬が導入され有効性が観察されており、眼球使用困難症候群の治療研究に応用できる可能性が示唆された.
5.患者の負担の少ない眼球使用困難症候群研究プロトコールを設定し、多施設共同研究の実施計画が完了した

結論
1.視覚障害現認定基準においては,視野障害の等級評価は,疾患によりGPとHFAの結果が大きく異なる場合があることが明らかになった。FVSとEsterman両眼開放視野の方法を組み合わせた日本独自のFVSの自動視野計プログラムの開発が期待される。
2.3次医療機関の眼科初診患者の少なくとも2%は片眼の失明のみの視機能障害者であり、適切な対応が求められてい
3.眼球使用困難症研究の多施設研究が開始可能になり、関連する疾患をふくめた検討において、羞明の病態生理の解明の足がかりができた。

公開日・更新日

公開日
2024-06-19
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-06-19
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202317043Z