Duchenne型筋ジストロフィーのエクソンスキッピング誘導治療

文献情報

文献番号
200935018A
報告書区分
総括
研究課題名
Duchenne型筋ジストロフィーのエクソンスキッピング誘導治療
課題番号
H19-こころ・一般-019
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
松尾 雅文(神戸大学 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 竹島 泰弘(神戸大学 医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)はジストロフィン欠損を呈する最も頻度の高いかつ重篤な遺伝性筋疾患である。しかし、未だ有効な治療法は確立されていない。
本研究はアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いたエクソンスキッピング誘導治療をさらに多くの患者に応用できる様にするため、ジストロフィン遺伝子の欠失のホットスポット領域内にあるエクソンを対象として、そのスキッピングを誘導するアンチセンスオリゴヌクレオチドの確立をはかった。
研究方法
ジストロフィン遺伝子の欠失のホットスポットにあるエクソンの欠失を有するDMD患者から培養筋細胞株を樹立し、これに先に同定したRNA/ENAキメラを導入した。導入筋細胞におけるエクソンスキッピングの確認ならびにジストロフィン発現を解析した。さらに、RNA/ENAキメラのGMPグレードで合成の可能性あるいはスプライシング促進配列を標的とする新規治療法の開発について検討した。
結果と考察
エクソン45のスキッピングを誘導するアンチセンスオリゴヌクレオチドのRNA/ENAキメラを導入した患者細胞においてエクソンスキッピングが誘導が可能となり、ジストロフィンの発現も確認された。RNA/ENAキメラのGMPレベルで合成することが可能となり、エクソンスキッピング誘導治療の治験はRNA/ENAキメラ供給面から可能となった。また、ある特定の化学物質がスプライシングを制御していることが明らかにし、DMDの新しい治療法となることが大きく期待される。
結論
DMDのエクソンスキッピング誘導治療が多数の症例で可能となる方法の確立が大きく前進し、近々臨床的治験が開始できる体制が出来上がった。また、スプライシングを制御する低分子化合物の探索も可能となり、DMD治療の確立へ新しい世界を切り開くことに成功した。

公開日・更新日

公開日
2010-06-15
更新日
-

文献情報

文献番号
200935018B
報告書区分
総合
研究課題名
Duchenne型筋ジストロフィーのエクソンスキッピング誘導治療
課題番号
H19-こころ・一般-019
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
松尾 雅文(神戸大学 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 竹島 泰弘(神戸大学 医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)はジストロフィン欠損を呈する最も頻度の高いかつ重篤な遺伝性筋疾患である。しかし、未だ有効な治療法は確立されていない。
本研究はジストロフィン遺伝子の欠失のホットスポット領域内にあるエクソンを対象として、そのスキッピングを誘導するアンチセンスオリゴヌクレオチドの確立と臨床への応用を検討した。
研究方法
エクソン45のスキッピング誘導の治療対象となるエクソンの欠失を有するDMD患者から培養筋細胞株を樹立し、これに先に同定したRNA/ENAキメラを導入した。導入筋細胞におけるエクソンスキッピングの確認ならびにジストロフィン発現を検討した。さらに、GMPグレードでのRNA/ENAキメラ合成の可能性・治療効果を判定するためのバイオマーカーとしての血清クレアチンキナーゼ・あるいは低分子化合物によるエクソンスキッピング誘導などについて検討した。
結果と考察
エクソン45のスキッピングを誘導するアンチセンスオリゴヌクレオチドのRNA/ENAキメラを導入した患者細胞においてエクソンスキッピングが誘導が可能となり、ジストロフィンの発現も確認された。キメラを用いた治療の有効性が患者培養筋細胞で確認された。一方、このエクソンスキッピング誘導の効果は症例により反応性に個人差があることが判明した。
RNA/ENAキメラのGMPレベルで合成が可能となった。またDMD患者の血清CKは6歳を過ぎて急激に低下するフェーズと、10歳を過ぎて比較的低いレベルを維持するフェーズもあることが判明した。今後、DMDの治療開始の際にはこの様なフェーズの変化も効果判定に有用と考えられた。さらに、ある特定の化学物質がスプライシングを制御していることが明らかになり、これが患者由来筋細胞でその効果を発揮することが確認された。これは、DMDの新しい治療法となることが大きく期待される。
結論
DMDのエクソンスキッピング誘導治療が多数の症例で可能となる方法の確立が大きく前進し、近々臨床的治験が開始できる体制が出来上がった。また、スプライシングを制御する低分子化合物の探索も可能となり、DMD治療の確立へ新しい世界を切り開くことに成功した。

公開日・更新日

公開日
2010-06-15
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200935018C

成果

専門的・学術的観点からの成果
エクソンのスキッピングを誘導するアンチセンスオリゴヌクレオチドのRNA/ENAキメラを導入した患者細胞においてエクソンスキッピングが誘導が可能となり、ジストロフィンの発現も確認された。キメラを用いた治療の有効性が患者培養筋細胞で確認された。一方、このエクソンスキッピング誘導の効果は症例により反応性に個人差があることが判明した。さらに、ある化学物質が患者由来筋細胞でエクソンスキッピング誘導効果を発揮することが確認された。これは、DMDの新しい治療法となることが大きく期待される。
臨床的観点からの成果
DMDのエクソンスキッピング誘導治療が多数の症例で可能となる方法が確立に方向へ大きく前進し、近々臨床的治験が開始できる体制が出来上がった。また、スプライシングを制御する低分子化合物の探索も可能となり、DMD治療の確立へ新しい世界を切り開くことに成功した。多くの患者に将来への希望がもたれる状況となった。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
今まで治療法がないとされてきたDuchenne型筋ジストロフィーの治療法の確立に道を開いた。今後、治療法が実用化されるとこれまでDMD患者に注がれてきた医療費の大幅な削減になる。さらにDMDの小児慢性特定疾患事業への組み込みが必要と示された。
その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
10件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Habara Y, Matsuo M, et al.
A Strong Exonic Splicing Enhancer in Dystrophin Exon 19 achieve proper splicing without an upstream polypyrimidine tract.
J Biochem. , 143 (3) , 303-310  (2008)
原著論文2
Zhang Z, Matsuo M, et al.
Tandem duplications of two separate fragments of the dystrophin gene in a patient with Duchenne muscular dystrophy.
J Hum Genet. , 53 (3) , 215-219  (2008)
原著論文3
Nisiyama A, Matsuo M, et al.
Dystrophin nonsense mutations can generate alternative rescue transcrips in lymphocytes.
Ann Hum Genet. , 72 , 717-724  (2008)
原著論文4
Habara Y, Matsuo M, et al.
In vitro splicing analysis showed that availability of a cryptic splice site is not a determinant for alternative splicing patterns caused by +1G-->A mutations in introns of the dystrophin gene.
J Med Genet. , 46 (8) , 542-547  (2008)
原著論文5
Okizuka Y, Matsuo M, et al.
Small mutations detected by multiplex ligation-dependent probe amplification of the dystrophin gene.
Genetic Testing. , 13 (3) , 427-431  (2009)
原著論文6
Awano H, Matsuo M, et al.
Insertion of the IL1RAPL1 gene into the duplication junction of the dystrophin gene.
J Hum Genet. , 54 (8) , 466-473  (2009)

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
-