文献情報
文献番号
202317042A
報告書区分
総括
研究課題名
「筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群」(ME/CFS)の実態調査および客観的診断法の確立に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22GC2101
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
阿部 康二(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター 病院)
研究分担者(所属機関)
- 佐藤 和貴郎(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター病院 神経内科)
- 高尾 昌樹(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 病院臨床検査部)
- 矢部 一郎(北海道大学大学院医学研究院)
- 太田 康之(山形大学 医学部)
- 磯部 紀子(黒木 紀子)(九州大学 大学院医学研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
4,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)は、多くは感染症様症状を経て発症し、強い倦怠感に加え多様な神経機能異常(睡眠や認知、疼痛/感覚過敏、自律神経障害等)や「労作後の消耗」を特徴とし、WHOで神経系疾患(ICD-11 8E49)と分類されているものの、客観的診断基準が確立していないため、診療・研究・治療開発が立ち遅れている。しかし近年、発症機序に関連する生物学的変化を評価するバイオマーカーの研究が世界で急速に進んでいる。例えば Scheibenbogen らによる、ME/CFS 患者40%程度で抗自律神経受容体抗体(β2およびβ1 adrenergic receptor に対する自己抗体)が検出されるという報告については、NCNPのAMED研究によって日本人患者でも同様の結果が確認された(Fujii et al. J Neuroimaging 2020)。その他NCNPでは、B細胞受容体レパトア解析によるIg遺伝子使用偏倚(Sato W et al. Brain, Behaviour, Immunity 2021)や頭部MRI拡散テンソル画像異常(Kimura et al. Neuroimaging, 2019)を見出している。しかし単施設の研究結果であり、ガイドラインや診断基準策定に必要なエビデンスは不十分である。
本研究の目的は、日本神経学会のネットワークを活用し、本邦におけるME/CFS患者の実態調査体制を構築し、実態調査を行うことである。国際的に用いられているカナダ基準や倉恒らによる慢性疲労症候群(CFS)臨床診断基準を元に、全国の患者の実態を明らかにする。そのうえでNCNPにて得られたバイオマーカー候補について、多施設での検証を進める。得られた情報は、将来の診断基準、ガイドライン策定に活用される。
本研究の目的は、日本神経学会のネットワークを活用し、本邦におけるME/CFS患者の実態調査体制を構築し、実態調査を行うことである。国際的に用いられているカナダ基準や倉恒らによる慢性疲労症候群(CFS)臨床診断基準を元に、全国の患者の実態を明らかにする。そのうえでNCNPにて得られたバイオマーカー候補について、多施設での検証を進める。得られた情報は、将来の診断基準、ガイドライン策定に活用される。
研究方法
NCNP病院は現在、200例以上の ME/CFS 症例について診療を実施しており、病院の放射線診療部や免疫研究部と連携し、病態解明・バイオマーカー研究を行っている。本研究では、日本神経学会のネットワークを生かし、全国のME/CFS患者の実態調査を行うとともに、NCNPで得られたバイオマーカー候補を多施設で検証する。また、NCNP病院ではコロナ後遺症外来を設置し、コロナ罹患後の遷延する症状をもつ患者の診療を行っているが、その一部はME/CFSを発症している。このことから、コロナ罹患後症状を呈する患者に関する調査研究も行う。
実態調査の方法については、過去の調査事業(平成26年度 日常生活困難度調査事業)を参考にするが、参加施設の特性を生かし、より発展的に多彩な脳機能異常に関する評価も検討する。全国の神経内科領域の中核病院が参加することにより、神経難病の調査研究の経験・方法が活用される。研究班員の構成は、神経免疫学の専門家に加え、実臨床での経験や地域中核施設としての実績に基づき選定され、研究目的のために拡充される可能性がある。
(倫理面への配慮)
患者実態調査に当たっては、NCNP 倫理審査委
員会で承認された方法で実施する。またバイオマーカー解析についても同様にNCNP倫理審査委員会の承認を得て、患者から文書による同意を得て実施する。
実態調査の方法については、過去の調査事業(平成26年度 日常生活困難度調査事業)を参考にするが、参加施設の特性を生かし、より発展的に多彩な脳機能異常に関する評価も検討する。全国の神経内科領域の中核病院が参加することにより、神経難病の調査研究の経験・方法が活用される。研究班員の構成は、神経免疫学の専門家に加え、実臨床での経験や地域中核施設としての実績に基づき選定され、研究目的のために拡充される可能性がある。
(倫理面への配慮)
患者実態調査に当たっては、NCNP 倫理審査委
員会で承認された方法で実施する。またバイオマーカー解析についても同様にNCNP倫理審査委員会の承認を得て、患者から文書による同意を得て実施する。
結果と考察
日本神経学会所属の神経内科専門医に対し、一次、二次調査を実施した。実施のための倫理審査の承認手続き、調査票の作成を行った。2023年1月初めに倫理承認を受け、同月全国の神経内科専門医6627名に患者診療の有無を問う一次調査を開始(郵送)し、1657名(回収率25.0%)から回答を得た。その結果57名の医師(3.4%)がME/CFSの患者診療を実施していることが判明した。2023年度、二次調査のための倫理承認を得て、協力可能と回答した45名の医師を対象に二次調査を実施した。その結果、41%にあたる19施設から回答が得られ、33名のME/CFS患者に関する詳細な臨床情報が得られた。年齢・性別・発症の契機・重症度などについては既報告と概ね一致する結果であった。また、二つの診断基準の両者を満たす症例は49%に留まった。
脳神経内科医が診療しているME/CFSに関する実態調査は世界的にも類例がなく、貴重な情報である。一方で、診療医が一部に限られているという実態が明らかとなった
脳神経内科医が診療しているME/CFSに関する実態調査は世界的にも類例がなく、貴重な情報である。一方で、診療医が一部に限られているという実態が明らかとなった
結論
神経内科専門医を対象とした実態調査により33名のME/CFS患者に関する詳細な臨床情報が得られた。
公開日・更新日
公開日
2025-07-03
更新日
-